住まいのプロが提案「イエコト」/住まいなでしこ ~女性目線のすまいのヒント~

自然の素材は覚悟がいる

わが家の床は無垢の杉、壁は和紙。自然の素材は心地いいな、と実感しているが、いろいろ手間もかかるわけで。

岩間 光佐子

執筆者:岩間 光佐子

住まいの設備ガイド


わが家の設計をお願いした建築家のKさんは、
自然素材を用いて居心地のよい空間を作り出すことに
定評のある方だ。

その空間づくりに魅かれて依頼したので、
使用する素材については、特に要望は出さなかった。
構造的にも、空間的にも、予算的にも、
適した素材を選んでくれるはずだし、
全体のバランスの中での、専門家の選択を信頼していたからだ。

完成したわが家の床は無垢の杉、壁は和紙。
一年暮らしてみて、四季を過ごしてみて、
やっぱり自然の素材は心地いいな、と実感している。

ただ、分かっていたけど、自然の素材は手がかかる。
「自然素材ならではの特徴を楽しむことができる、
大らかさのような気持ちが必要かもしれません」
というようなことを、いつも原稿に書いているワタシだけど、
そうそう大らかな気分になれない時もある。

性格をあらわす?床の傷

イメージ

杉の床材は、やさしい風合いだが傷もつきやすい。窓枠にもヤニが……

たとえば、杉の床。夏場でもベトベトしないし、素足で歩くと本当に気持ちいい。柔らかく弾力性もあるので、足腰への負担は少ないし。でも、柔らかいということは、傷つきやすいというわけで。

まだ、一年しか経っていないのに、リビングには、テレビのリモコンなどを落した傷が数知れず、ダイニングには椅子をギーギー引いてしまった跡が残り……。普通に生活していてつく傷はしかたがない、というか、それも味かな、なんて思ってはいるけれど、ガサツな私の性格が如実にあらわれてしまっているのもどうかと。

「軽いへこみキズは、傷の上に濡れ雑巾をあてておくと戻りますよ」と言われていたので、ボロ布を湿らせ、床に置いてみる。そんなに大きな傷でなければ、本当に復活する。これは、ホント、無垢材のいいところだ。木は生きているんだな、と実感する。なので、かなりの頻度で床にボロ布が数ヶ所置かれているのがわが家の日常で、突然のお客様がくると、落ち穂拾いのように布を集めることになるのだ。

「布の上からスチームアイロンでスチームをかけるとよりよく戻ります。深い傷は目の細かいサンドペーパーをかけて補修してください」と言われているが、それは、年末まで……。

自然のヤニって……

無垢材はヤニもでる。「松材はヤニが出ることがありますから」と、引き渡しの時に言われたのだが、正直、あまり気に留めていなかった。いままで、木材のヤニなんて、見たことなかったし。しばらくして、玄関ドアや窓枠にポツポツと水滴のようにヤニがでてきた。ヒマにまかせて爪で引っかいたりすると、白くなったり、べとついたりと、これは予想外だった。

シンナーや市販のペイント薄め液で拭き取ると、きれいに取れるらしいのだが、普段の掃除ではどうしても後回しになり、いまでもポツポツ。やっぱり、生きているんだな、と感心しつつ、できるだけ、見ないふり~、をしているのが現実だ。

和紙の壁紙と虫退治

壁に用いた和紙は白色。光が穏やかにまわって、陰影がキレイだし、目にもやさしい気がする。ただ、汚い手で触るとあたり前だけど、汚れてしまう。ビニールクロスのように拭くことができないから、少しの汚れは、消しゴムを使ったり、カッターでうす~く剥がしてごまかしている。

笑ってしまうのが、虫とか蜘蛛がでてきても、叩いて退治できなくなったこと。少なくとも壁にとまっている虫は、かなりの確率で逃げることができる。和紙が汚れるよりも、逃げられた方がまし、というのがわが家の新しいオキテなのだ。


床にしろ壁にしろ、自然の素材は日々の手入れが必要だし、数年経ったら塗料の塗り直しや不具合の修理など、自分で手を加えていかなければならない。それなりに手間もかかるけれど、そういうモノに囲まれた暮らしがしたい、と思って依頼したわけだし。いつも「おおらかな気持ち」ではいられないかもしれないけれど、だんだん、つきあい方が分かってきたような気もしている。

素材や商品にもよるが、多くの自然素材と呼ばれるものは、ある程度の手間がかかるものだ。メリットデメリットを理解した上で、取り入れないと、もしかしたら後悔することもあるかもしれない。傷がついたり掃除が大変なのは絶対無理、なのであれば、傷がつきにくかったりメンテナンスが楽な素材を選んだ方がいいと思う。快適な暮らしをするために建てたわが家がストレスの原因になっては悲しすぎる。それぞれの価値観や暮らしに対する優先順位、家族構成やライフスタイルに合わせて用いる素材を選ぶべきだろう。ただ、どんな素材を選ぶとしても、やはり、家は手をかけることで長持ちするものだ。住まいは建てて終わり、の製品ではないのだから。


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