住まいのプロが提案「イエコト」/住まいなでしこ ~女性目線のすまいのヒント~

気がつけば、空き家が

わが家のまわりにも、数軒の空き家が見受けられる。空き家を維持するのは大変なのはわかるのだが……。

岩間 光佐子

執筆者:岩間 光佐子

住まいの設備ガイド


空き家が問題になっている。
古くからの住宅地である、わが家のまわりにも、
数軒の空き家が見受けられる。
相続などの問題があるのか、住む人もなくそのまま、
というケースも多いようだ。

時々、建物に風を入れに来たり、
庭木などの手入れする姿をみかけるお宅もあるが、
雨戸が締め切られたまま、
庭の植木や雑草が茂ってしまっている家もある。

人が住まない家は、傷みがはやい

手入れをしないと、塀を乗り越えて、雑草が生い茂ってしまうことも(イメージ)

手入れをしないと、塀を乗り越えて、雑草が生い茂ってしまうことも(イメージ)

人の住まない家の老朽化は激しい。日常的な窓の開け閉めがないと、空気がよどみ、湿気もたまる。庭は荒れ、門扉やフェンスの朽ちることもある。地域によっては、野生動物の住処になることも。手入れの行き届かない家が増えれば、周辺環境も悪くなる。空き家はその家の問題だけでなく、周辺環境への影響も及ぼす重大な問題なのだ。

ワタシたち夫婦が、いま暮らしている土地を探すとき、なにより重視したのは、周辺環境。だから、ゆったりとした街並みが続き、手入れの行き届いた庭を持つ家も多く、落ち着いた雰囲気のこのエリアに魅力を感じて、購入することを決めたのだ。数年経ったいまでも、その雰囲気は大きくは変わらないのだが、それでも周囲を散歩していると、ポツポツと、電気の点かない家がある。人気のない家の前は、夜間にはあまり歩きたくないし、台風や強風の後、瓦や雨どいなどが破損した空き家を目にすると、少し不安にもなるのも事実だ。

落葉と空き巣と水道管破裂

とはいえ、空き家を維持することは本当に大変だ。ワタシたち夫婦も、十年ほど前に、空き家を抱えていたことがある。オットの両親が暮らしていた木造2階建て。最寄り駅からバス15分、歩いて10分の典型的な郊外の住宅街にある住まいは、環境はいいのだが、近くに商店はなく、バス便も少ない。仕事や将来的なことを考えると、リフォームするにしろ、建て替えるにしろ、ワタシたちがその土地に暮らす、というイメージはどうしても持てなかった。

しかし、簡単に手放す気にも賃貸にする気にも、なかなかなれず、数年間は、時間をつくって、風を通したり、掃除をしたり、庭の手入れなどに通っていた。少しずつ家の中の整理をしていたのだが、町内会などは退会しているので、ゴミを捨てるわけにもいかず、直接処理場に持っていくか、車で持ち帰り(本当はいけないのだろうが)自宅で捨てることも。落葉の季節には、枯葉掃除だけでも一日仕事になってしまうこともあり、このまま休日を利用して通い、片付けることが厳しく感じることもあった。

やはり、このまま空き家としておくのは難しいな、と思い始めたころ、近隣の家に空き巣が入った。直接的な原因ではないにしろ、空き巣の逃げ道となるような、人の気配がない家が近くにあったことは事実。また、面倒なことは重なるもので、水道管の破裂など思わぬトラブルもあり、熟考の末、しばらくして手放すことを決めたのだ。

人が暮らしてこそ住まい

手放した家には、いま、幼い子供がいる家族が暮らしている。築年数は経っているが、両親がとても丁寧に暮らしていたので、少しのリフォームを施しただけで住み続けることができたとか。外からみるかぎり、ほとんど昔のままの姿で、新しい家族を迎い入れているのは、少しうれしい。窓のカーテンが揺れ、ベランダに洗濯物が干され、庭に花が咲いている風景をみると、家は、人が暮らして初めて住まいとなる、ということ実感する。

数年前、50代のワタシたち夫婦は、いまの土地を購入し家を建てた。年齢的には、そう遠くない未来に、手放す時が来るかもしれない。その時は、できれば、空き家にもせず、解体をせず、誰かに、この建物を生かしてもらえたら、と考えている。構造や性能面では、できる範囲で、それなりの仕様にしたし、建築家のKさんが工夫してくれた、自然の素材を用いたデザインは、誰にでも馴染めるものだ。魅力を感じた街並みに、少しでも貢献できるように、庭づくりも励んでいる。愛着を持って暮らし、手入れをし、いつの日か、いいカタチで、バトンタッチができればいいな、と思っている。

まぁ、床のキズとか、壁の汚れとか、ワタシの不注意による劣化の数々は、許容範囲、ということにしてほしいけれど……。


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