お正月とは? 正月行事の由来・意味や過ごし方
そもそも、お正月とは何でしょう? 本来「正月」は1月の別称ですが、一般的には正月行事をする期間ととらえ、1月1日~1月7日(地方によっては15日、または20日まで)の「松の内」や、一連の正月行事を終え「正月事終い」の日とされる1月15日(地方によっては20日)の「小正月」までを指すことが多いです。また、丁寧に“お”をつけて「お正月」というのも特別な気持ちの表れですし、1月を「睦月」と呼ぶのも、正月に一家揃って睦みあう様子を表したもの。多くの方がお正月を家族で過ごし、当たり前のようにおせちを食べたり、お年玉のやりとりをしたりしていますが、ひとつひとつの物事に大切な意味が込められています。正月行事の意味や由来を知ると、なるほどと思うはず。これらを知って、お正月を心豊かに過ごしましょう。
<目次>
まずは、意外と知らないお正月の由来からご紹介します。お正月の由来 ~年神様をお迎えするための正月行事
昔から、元旦には「年神様(としがみさま)」という新年の神様が、1年の幸福をもたらすために各家庭に降臨するとされています。年神様は祖霊神であり、田の神、山の神でもあるため、子孫繁栄や五穀豊穣に深く関わり、人々に健康や幸福を授けるとされていて「正月様」「歳徳神(としとくじん)」ともいいます。その年神様を迎え入れてお祝いし、たくさんの幸せを授けてもらうために、様々な正月行事や風習が生まれました。新しい年を“迎える”と表現したり、「一年の計は元旦にあり」といったりするのも、年神様を元旦にお迎えするからで、お正月の行事や風習には、年神様をめぐる一連のストーリーがあります。それはまるで、私たちが大事なお客様をおもてなししているようにも思えて、おもしろいですよ。
時代が変わっても、正月行事や風習は受け継がれていますが、それぞれに深い意味が込められています。
正月行事・正月にすること
大掃除
年神様をお迎えする前に大掃除をして、神棚や仏壇、家屋を清めます。1年間にたまったほこりを払って隅から隅まできれいにすると、年神様がたくさんのご利益を授けてくださるそうで、12月13日に江戸城で行っていた「すす払い」に由来します。すす払いから正月準備が始まるので、12月13日を「正月事始め」といいます。
▷詳しくは「『大掃除』の由来・意味~ちょっとやる気が出る話」
門松
門松は、年神様が迷わずやってくるための案内役であり、年神様がいらっしゃる目印として、門のところ、玄関前に飾ります。古来より松は神の宿る木とされており、古くは庭先に一本松を置いていました。やがて門のところに雄松と雌松を左右一対に並べるようになり、さらに縁起物の竹や梅が添えられるようになって現在に至ります。門松を飾っておく期間=年神様がいらっしゃる期間となるので、これを「松の内」(一般的には1月7日まで)といい、年始の挨拶や年賀状のやりとり、初詣をするのも松の内とされているわけです。
しめ縄/しめ飾り
ここは年神様をお迎えする神聖な場所という意味で、しめ縄を張ったり、しめ飾りを飾ったりします。▷詳しくは「しめ飾り・しめ縄の意味と飾り方 ~種類・向き・飾る場所・時期~」
鏡餅
鏡餅は、年神様へのお供えものであり、依り代。正月に固い餅を食べる「歯固め」という儀式に由来します。鏡餅という名は、神様が宿るところとして神事に用いられる円形の鏡からきており、丸餅は魂も表しています。また、大小2段で太陽と月、陽と陰を表しており、円満に年を重ねるという意も込められています。▷詳しくは「なぜ鏡餅というの? 鏡餅の由来と飾り方」
年越し蕎麦
年越し蕎麦は、細く長く長寿であるよう願い、大晦日に食べます。江戸の町人の間で慌ただしい月末に手っ取り早く食べられるそばを好んだ「晦日そば」という風習が大晦日に残ったもので、日本各地で細く長く長生きできる「寿命そば」、運がよくなる「運気そば」、金運上昇の「福そば」、苦労ごとと縁が切れる「縁切りそば」といった呼び名やいわれがついて親しまれるようになりました。薬味のネギは、疲れをねぎらう意の「労ぐ(ねぐ)」、祈るという意の「祈ぐ(ねぐ)」、お祓いしたり清めたりする神職の「祢宜(ねぎ)」という言葉にかけ、1年間の頑張りをねぎらい、新年の幸せを祈願する意味があります。
▷詳しくは「年越しそばの意味・由来、なぜ大晦日に?食べるタイミングはいつ?」
除夜の鐘
大晦日は、年神様を寝ずに待つ日とされていました。その前にお祓いをするために、寺院では深夜零時をまたいで除夜の鐘を108回打ち、108つあるという人間の煩悩を祓います(十二か月と二十四節気と七十二候を合わせた数で108という説もあります)。神社では罪や穢れを清める「大祓(おおはらえ)」「年越しの祓」を行います。初日の出
初日の出は、新年の幕開けの象徴です。年神様は日の出とともにやってくるという説もあり、見晴らしのいい場所へ出掛けて、その年最初の日の出を拝むようになりました。とくに山頂で迎える日の出を「御来光」といいます。こうして年神様をお迎えしたら、おもてなしをしないといけません。お馴染みの正月行事も、我が家にいらした年神様とともに新年を祝うものばかりです。
おせち
おせちは、年神様に供えるための供物料理。もともとは、季節の節目に行う節供の料理を「御節供」「御節料理」といい、やがて正月だけをさすようになりました。かまどの神様を休めるため作りおきできるものが中心で、家族の繁栄を願う縁起物が多く、めでたさが重なるよう重箱に詰めます。▷詳しくは「『おせち』のいろは~由来、意味、しきたりは?」
おとそ
新年も健やかに過ごせるよう、邪気を祓い不老長寿を願ってのむ薬酒。「お屠蘇」と書き、邪気を屠(ほふ)り、魂を蘇らせるという意味があります。飲み方にもお正月ならではのユニークな作法があります。▷詳しくは「おとそ・お雑煮のいろは~由来、しきたりは?」
雑煮
お雑煮は、年神様に供えた餅を下ろして頂くための料理で、食べることで新年の力(年魂)を頂戴します。もともとは、酒宴の前に食べて胃を安定させるための前菜料理で、臓腑を保護するため「保臓(ほうぞう)」と呼ばれていたという説もあります。やがて、お餅を入れて雑多なものを煮込む「雑煮」となり、各地の特色がでるようになりました。▷詳しくは「おとそ・お雑煮のいろは~由来、しきたりは?」
若水(わかみず)
若水とは、年神様に供えたり雑煮を作ったりするために、新年に初めて汲む水のことで、これを飲むと1年の邪気も祓えるといわれています。▷詳しくは「お雑煮のいろは~若水について 」
お年玉
お年玉は、新年の力(年魂)の象徴である年神様の魂が宿った餅玉を家長が家族に分け与えたのが始まりで、「御年魂」「御年玉」と呼ばれるようになりました。▷詳しくは
「お年玉とは?由来・意味、起源はお金じゃなく餅だった!」
「お年玉の常識~お金の入れ方からマナーまで」
「ぽち袋とは?使い方や由来・意味、お年玉以外の活用術」
年賀状
年頭に祝賀を交わすために、当初は先方に出向いて年賀のあいさつをしていましたが、あいさつに行けない人は手紙を送るようになり、やがて現在のような年賀状を送る習慣となりました。▷詳しくは
「賀詞の種類と意味や年賀状やりがちNG」
「失敗しない、年賀状3タイプのすすめ」
「喪中はがきに『年賀状はほしい』と書かれていたら」
「年賀状の処分方法」
こうして元旦を過ごしたあとも、幸福を呼ぶお正月行事が続きます。年始の恒例行事にはどんな意味があるのでしょう?
初詣
年の初めにお参りすると、新年の幸福が増すとされています。初詣は、本来は自分たちが住んでいる地域の氏神に新年の挨拶をするものですが、やがて、ご利益を求めて年神様のいる方角の社寺にお参りする「恵方参り」をしたり、有名な社寺にお参りするようになりました。▷詳しくは
「初詣、いつ行くのが正解? 」
「初詣、ご利益があるのはどの神社? 」
「神社の参拝方法・手水・二拝二拍手一拝 」
「おみくじの順番と結び方は 」
「絵馬の由来や願い事ポイント」
「破魔矢の由来や置き方・処分」
書き初め
書き初めをして、新年の抱負や目標をしたためます。「吉書」ともいい、年神様のいる恵方に向かって祝賀や詩歌を書いたことに由来します。本来は事始めの1月2日に行います。初夢
初夢にその年の運勢が表れるとされたことから、夢の内容で新年の運勢を占いました。吉夢を見るために宝船や獏の絵を枕の下に敷いたり、回文を唱えたりします。▷詳しくは「初夢はいつ見る夢?~初夢で幸せになる方法」
七草粥
1月7日に七草粥を食べると、1年間病気にならないと言われています。本来は「人日の節句」という五節句のひとつですが、正月のご馳走で疲れた胃腸をいたわる効果もあります。▽詳しくは
「七草粥の由来と春の七草」
「七草粥の作り方・楽しみ方」
鏡開き
年神様の拠り所だった鏡餅を食べることでその力を授けてもらい、無病息災を祈ります。また、鏡餅を開くことで年神様をお送りし、お正月に一区切りつける意味もあります。本来は1月20日でしたが、徳川家光の月命日と重なるため、仕事始めと同じ11日に変更されました。▷詳しくは「鏡開きの由来・餅はいつ食べる?」
小正月
1月15日に小豆粥を食べて無病息災を祈ったり、柳の枝に紅白のお餅をつけた餅花(まゆ玉ともいう)を飾って豊作を祈願します。大昔この日を正月としていた名残で、元日を「大正月」、1月15日を「小正月」と呼ぶようになりました。元服(現在の成人式)が行われたのもこの日です。大正月が年神様をお迎えする行事なのに対し、小正月は豊作祈願や家庭的な行事が多いのが特徴で、松の内に多忙をきわめた女性をねぎらう休息日として「女正月」とも呼ばれています。
▷詳しくは「小正月はいつ?どんど焼き(左義長)の意味・由来、食べ物「小豆粥」と「餅花」の作り方」
左義長(さぎちょう)/どんど焼き
左義長とは、1月15日の小正月に正月飾りや書き初めを燃やす行事で、その煙に乗って年神様が天上に帰ってゆくとされています。「左義長」は、三毬杖(さぎちょう)という青竹で正月飾りを焼いたことに由来しますが、「どんど焼き」「とんど」など各地に様々な呼び名があります。この火で焼いたお餅などを食べると無病息災で過ごせる、書き初めの火が高く上がると字が上達するなどと言われています。このように年神様を見送って正月行事も無事終了となるので、1月15日を「正月事終い」といい、15日までを「松の内」とする地方もあります。
一連の由来を知っておくと、心豊かに過ごせそう! 新年もよい年となりますように……