風流な「虫聞き」、秋を感じさせる虫の声とは

秋の虫の代表格の鈴虫。ほかに秋の虫といえば何?

秋の虫の代表格の鈴虫。秋の虫といえばほかに何?

秋の野山で虫の声を聞いて楽しむことを「虫聞き」といいます。虫聞きは平安時代に始まったといわれており、虫の声を聞きながら酒宴を催し風雅を楽しんでいたそうです。虫の声を聞く文化は庶民にも広がり、江戸時代には秋の虫を籠に入れて売り歩く「虫売り」という商売が成立するほどでした。虫の声に心惹かれるのは今でも変わりません。
 
では、秋の虫といえば何でしょう? スズムシやコオロギぐらいしか思い浮かばないかもしれませんが、秋を感じさせる虫はほかにもいます。そこで、童謡『虫のこえ』に登場する秋の虫を、写真や鳴き声の特徴とともに紹介します。
   

童謡『虫のこえ』に登場する秋の虫

まずは、文部省唱歌『虫のこえ』の歌詞を紹介します。

あれマツムシが 鳴いている
ちんちろ ちんちろ ちんちろりん
あれスズムシも 鳴き出した
りんりん りんりん りいんりん
秋の夜長を 鳴き通す
ああおもしろい 虫の声
 
きりきり きりきり コオロギや
がちゃがちゃ がちゃがちゃ クツワムシ
あとからウマオイ 追いついて
ちょんちょん ちょんちょん すいっちょん
秋の夜長を 鳴き通す
ああおもしろい 虫の声

なお、昔はコオロギとキリギリスの区別が曖昧で、コオロギのことをキリギリスと呼び、その鳴き声を「きりきり きりきり」と表していたため、明治43年の『尋常小学校読本唱歌』に初めて掲載された際は、2番が「きりきり きりきり キリギリス」となっていました。しかし、実際にはコオロギのことを歌っているので、昭和初期の教科書で「きりきり きりきり コオロギや」に変更されました。
 
<童謡『虫のこえ』に登場する秋の虫>
  • マツムシ
  • スズムシ
  • コオロギ/キリギリス
  • クツワムシ
  • ウマオイ 
 

秋の虫:マツムシ

マツムシ

秋の虫:マツムシ

マツムシは、秋の訪れを告げる待ち遠しい虫という意味があるといわれており、待つという言葉にかけて、別れの歌や待ち望むシーンに登場することが多い虫です。

<鳴き声>
ティッティリリ、ティッティリリ
※童謡では「ちんちろ ちんちろ ちんちろりん」 
 

秋の虫:スズムシ

スズムシ

秋の虫:スズムシ

名前の通り、鈴を鳴らしたように鳴きます。古くから「鳴く虫の王」とされ、平安時代の貴族は籠に入れて楽しむようになりました。江戸時代の「虫売り」でも、スズムシやマツムシが人気だったそうです。
 
<鳴き声>
リーン、リーン
※童謡では「りんりん りんりん りいんりん」 
 

秋の虫:コオロギ

エンマコオロギ

秋の虫:エンマコオロギ

『万葉集』に「蟋蟀(こおろぎ)」が出てくるほど古くから文学にも登場し、秋に鳴く虫の総称としても使われていました。平安時代ごろに「きりぎりす」と呼ばれるようになったので、長らくキリギリスとコオロギの区別が曖昧でした。そのため、童謡『虫のこえ』の2番は当初「きりきり きりきり キリギリス」でしたが、のちに「きりきり きりきり コオロギや」に変更されています。

<鳴き声>
キリキリ リリリリリ
※童謡では「きりきり きりきり」
 

秋の虫:キリギリス

キリギリス

秋の虫:キリギリス

古くはキリギリスのことを「こおろぎ」、コオロギのことを「きりぎりす」と呼んでいたことから、その区別が曖昧でした。また、キリギリスのギーッチョンという鳴き声が機織りをするときの音に似ているため、キリギリスには「はたおり」という古名があります。
 
<鳴き声>
ギーッチョン、ギーッチョン
 

秋の虫:クツワムシ

クツワムシ

秋の虫:クツワムシ

鳴き声が、馬の口につける轡(くつわ)という道具がガチャガチャと鳴る音に似ているので、クツワムシになったといわれています。
 
<鳴き声>
ガチャガチャ ガチャガチャ
※童謡では「がちゃがちゃ がちゃがちゃ」
 

秋の虫:ウマオイ

ウマオイ

秋の虫:ウマオイ

馬に荷物やお客をのせて運ぶ人を「馬追い(うまおい)」「馬子(まご)」といい、この人達は馬を追うときに、「シーッ」と言ってから舌を「チョッチョッ」と鳴らします。この「シーッ チョッチョッ」という音と鳴き声が似ているため、「ウマオイ」という名前になりました。
 
<鳴き声>
スイーッチョン、スイーッチョン
※童謡では「ちょんちょん ちょんちょん すいっちょん」

虫の声は野原のみならず、街の植え込みや道端、空き地などでも聞こえてきます。その声に耳を傾けながら、秋の訪れを感じてみてください。

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