新しい家を建てる時、
設計をお願いしたKさんに伝えたのは、
「眺めを重視して選んだ土地なので、
景色を楽しみながら暮らしたい」ということ。
だから、大きな開口部のある2階のLDKはもちろん、
リビングからつながるバルコニーのあるプランは嬉しくて、
工事中にも、何度も、ウチとソトを行ったり来たりしたものだ。
引き渡しの翌日には、掃除をしながらバルコニーでおにぎりを頬張ったし、
毎朝バルコニーで食事をする暮らし、も夢じゃないと確信していた。
お気に入りの場所だけど……
リビングのソファからベランダ越しの風景。私の一番好きな眺めだ
準備万端、のはずなのに、3年近く暮らしていて、どうも使用頻度が少ないような気がするのはなぜ? 本当に気持ちがよくて、お気に入りの場所なのに、食事はおろか、お茶を飲んだのも数えるほど。自分でも、あれっ? という感じなのだ。
風と太陽。そしてトンビ
バルコニーに限ったことではないが、プランニングの際には、その空間での過ごし方をイメージすることが大切だ。日々の暮らしの中で、誰が、いつ、どんな動きをするのか、シミュレーションしてみることが重要なのは言うまでもない。バルコニーであれば、室内からの出入りがしやすいか、食事やお茶をとるのであればキッチンからの動線は使いやすいか、窓サッシの開閉方法なども含めて、検討することがポイント。ホームパーティを開きたいのなら、来客の動線などにも配慮したプランが必要だろうし、夜間使用するなら照明を、バルコニーでガーデニングなどをするのであれば、スロップシンクも便利なアイテムだろう。
で、わが家の場合、リビングにつながる動線は問題ないし、窓サッシだって使い勝手は悪くない。ただ、予想外だったのは、風がとても強いこと。バルコニーでゆっくりしたいな、と思う気候のいい時期にかぎって強い海風が吹く。お茶を飲みながら読書、なんて優雅なことはできないのだ。それに、南東向きのバルコニーは、夏は陽射しがきつく、昼間に長時間くつろぐことは難しい。夜は夜で、周囲の雑木林からたくさんの虫の来訪がするし……。
そして、なにより暮らして初めてわかったのは、わが家周辺は、トンビ(鳶)がとても多いこと。バルコニーで食事をしていると、餌を狙ってすぐ上で旋回を始めるので、のんびり料理を味わうこともできないのだ。
リビングが気持ちいいから
ということもあってか、暮らし始める前に思っていたよりは、バルコニーにいる時間が少ないのが現実。利用頻度だけを考えると、せっかくプランニングしてくれた建築家のKさんに申し訳ない、という感じだが、バルコニーがなかったら、リビングからの広がりも周辺環境との一体感も得ることができなかったと思うので、プランそのものは大正解だし、本当に大満足。それに、バルコニーの滞在時間が少ないのは、もうひとつ理由があるような気もしている。リビングに隣接しているバルコニーは、環境的には、窓近くにあるリビングソファに座っているのと大差ない。ソファに座っていると、窓からバルコニー越しに遠くの山々が見渡せるし、明るく風も通り抜ける。窓を開ければ、リビングとバルコニーは一体となって、ウチとソトの境界も曖昧に。リビングにいてもソトと同じように気持ちいいから、わざわざバルコニーに出ていくことが少ないのかもしれないな、とも思うのだ。
まぁ、ワタシの場合、窓や網戸を開けるのが面倒くさいとか、サンダルを履くのが鬱陶しいとか、ただの「ものぐさ」ということも、ないわけじゃないけれど。
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