暮らしの歳時記/秋の行事・楽しみ方(9~11月)

【9月行事・歳時記】重陽の節句・十五夜・秋彼岸…風物詩や行事まとめ

9月といえばお月見や秋彼岸など。昼と夜の長さがほぼ同じになる「秋分の日」を迎えると、それ以降は秋の夜長に向かいます。「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるように、厳しかった残暑に目処がつく頃です。9月の代表的な行事・暮らしの歳時記などについてまとめました。

三浦 康子

執筆者:三浦 康子

暮らしの歳時記ガイド

9月といえば?重陽の節句・十五夜・秋彼岸… 9月の伝統行事や暮らしの歳時記

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「秋分の日」を境に夜長に向かい、秋が深まっていく9月

暑さも次第にやわらいで、秋分の日を境に夜長に向かい秋が深まる頃。歌や月見団子でおなじみの「お月見」やお墓参りに行く人も多い「お彼岸」など、9月には昔から大切にされてきたなじみ深い行事がたくさんあります。9月の行事・風物詩についてご紹介します。
<目次>

9月1日【防災の日】【二百十日】

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9月1日「防災の日」は、台風に警戒する日である「二百十日」と重なることが多い

「防災の日」は、1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災にちなんで、1960年(昭和35年)に制定されました。防災の日は、犠牲者の慰霊とともに、災害に備えて避難訓練や防災用品の点検などを促す効果があります。また、この時期は台風が集中し、甚大な被害となることも多い台風シーズンでもあるため、それを警戒する意味もあります。1959年(昭和34年)には伊勢湾台風が甚大な被害をもたらしています。

こうして「防災の日」が制定されましたが、実は、それ以前から警戒が必要な厄日として暦に記されています。

立春(2月4日頃)から数えて210日目という意の「二百十日(にひゃくとおか)」は雑節の一つで、毎年9月1日頃にあたります。この頃は稲が開花するとても重要な時期ですが、農作物に甚大な影響を与える台風が襲来することが多く、過去の経験からこの日を厄日として戒めました。台風の襲来は、農家だけでなく漁師にとっても生死に関わる問題です。現在のように台風の予測ができなかった時代、人々はこの日を恐れて警戒し、風を鎮める祭りを行って収穫の無事を祈るようになりました。2024年の二百十日は8月31日です。

9月1日「防災の日」の由来、雑節「二百十日」、風祭りとの関係
 

9月9日【重陽の節句(菊の節句)】

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9月9日の「重陽の節句」は「菊の節句」ともいわれる

9月9日は、3月3日の「桃の節句(雛祭り)」や5月5日の「端午の節句」などの五節句の一つ「重陽の節句」です。古来、奇数は縁起の良い陽数、偶数は縁起の悪い陰数と考え、その奇数が連なる日をお祝いしたのが五節句の始まりです。めでたい反面、悪いことにも転じやすいと考え、お祝いとともに厄祓いもしてきました。

中でも一番大きな陽数(9)が重なる9月9日を、陽が重なると書いて「重陽の節句」と定め、不老長寿や繁栄を願う行事をしてきました。重陽の節句は、五節句を締めくくる行事として、昔は最も盛んだったといわれています。菊を用いて不老長寿を願うことから別名「菊の節句」といいます。

古来、菊は薬草としても用いられ、延寿の力があるとされてきました。菊のおかげで少年のまま700年も生きたという「菊慈童(きくじどう)」伝説もあります。他の花に比べて花期も長く、日本の国を象徴する花としても親しまれています。また、「後の雛」といい、ひな人形を飾る習わしもあります。

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2024年は9月16日【敬老の日】

9月の行事・歳時記 敬老の日

敬老の日に大切なのは、労りや感謝の気持ちを表すことです

敬老の日は9月の第3月曜日。2024年は9月16日です。「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う日」 として制定されました。「母の日」や「父の日」は外国発祥ですが、「敬老の日」は日本発祥で国民の祝日になっています。

1966年に9月15日が国民の祝日「敬老の日」となって親しまれてきたことから、敬老の日といえば、9月15日を思い浮かべる方も多いはず。祝日法改正(いわゆるハッピーマンデー法)によって、2003年から「敬老の日」が9月の第3月曜日に変更され、老人福祉法の改定によって9月15日は「老人の日」、9月15日~21日は「老人週間」となりました。

「老人とは何歳から?」と疑問に思う方もいるかもしれません。捉え方は人によって様々ですが、いずれにしても、大切なのは労りや感謝の気持ちを表すこと。食事会を開く、プレゼントを贈る、家事を手伝う、住環境をバリアフリーにするなどその方法は様々です。各地で敬老にちなんだ行事が催されることも多く、敬老の日を通じて高齢者をとりまく社会問題を考えるきっかけにもなるでしょう。

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2024年は9月17日【十五夜・中秋の名月・お月見】

9月の行事・歳時記 十五夜 お月見 中秋の名月

平安貴族は池に映る月を鑑賞していました

十五夜といえば、一般的にはお月見をする旧暦8月15日の「十五夜」をさします。十五夜は「中秋の名月」と呼ばれる秋の美しい月を観賞しながら、秋の収穫に感謝をする行事です。

旧暦では7月~9月が秋にあたり、初秋は台風や長雨が続きますが、中秋は秋晴れも多く空が澄んで月が美しく見えます。お月見の風習は中国から伝わり、当初は平安貴族が月見の宴を催して風雅を楽しんでいました。やがて月見が庶民に広がると、実りに感謝する行事になっていき、芋類の収穫祝いをかねているため、「芋名月(いもめいげつ)」という別名で呼ばれるようにもなりました。

十五夜に月見だんご、すすき、芋などの収穫物を供えるのは、さまざまな物事の結実に対して感謝と祈りを捧げるためで、日本文化の特徴といえます。日本では、月の模様を「うさぎが餅をついている」と捉えますが、月うさぎは慈悲の心の象徴であり、月に寄せる思いの深さが感じられます。

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2024年は9月22日【秋分の日】、9月19~25日【秋彼岸】

9月の行事・歳時記 秋分の日 秋彼岸 お彼岸

「暑さ寒さも彼岸まで」というのは、どうしてなのでしょうか

彼岸には、3月の春彼岸と9月の秋彼岸があり、秋彼岸は秋分の日(9月23日頃。その年により変動)を中日とした前後3日、合わせて7日間をいい、雑節のひとつです。最初の日を「彼岸入り」「彼岸の入り」と呼び、秋分の日を「彼岸の中日」、最後の日を「彼岸明け」と呼びます。

春分と秋分は、太陽が真東から昇って真西に沈み、昼と夜の長さがほぼ同じになる日です。仏教では、生死の海を渡って到達する悟りの世界・あの世を彼岸といい、その反対側の私たちがいる迷いや煩悩に満ちた世界・この世を此岸(しがん)といいます。彼岸は西に、此岸は東にあるとされており、太陽が真東から昇って真西に沈む秋分と春分は、あの世とこの世彼岸と此岸がもっとも通じやすくなると考え、お彼岸にお墓参りに行き先祖供養をするようになりました。

お彼岸はインドなど他の仏教国にはない日本だけの行事です。春の種まきや秋の収穫とも結びつき、自然に対する感謝や祈りがご先祖様に感謝する気持ちにもつながって、お彼岸は大切な行事となりました。

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9月の行事・歳時記 白露

花や宝石にたとえられることも多い、露の美しさ

なお「秋分」と同じく、季節の移り変わりを知るための二十四節気では、9月に「白露(はくろ)」があります。白露は毎年9月7日頃~9月22日頃にあたりますが、日付が固定されているわけではありません。2024年の白露は9月7日~9月21日です。

白露といっても、「白露(二十四節気の第15)」から「秋分(二十四節気の第16)」までの期間をさす場合と、「今日は白露です」のように白露に入る日をさす場合があります。二十四節気では、白露の前は暑さがおさまる頃という意味の「処暑」、白露の次は昼夜の長さがほぼ同じになり、秋の夜長に向かう「秋分」となります。

白露とは、「露が降り、白く輝くように見える頃」という意味です。夜の気温がぐっと下がって空気中の水蒸気が冷やされると、水滴になって葉や草花につくようになります。それが露(朝露)。日中はまだ残暑が続いていますが、朝晩は冷えるようになり、朝露が降り始める時期をあらわしています。

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9月といえば? 行事食・食べ物

●重陽の節句(菊の節句):菊酒・栗ご飯・秋茄子・食用菊・菊のお菓子
9月の行事・歳時記 重陽の節句 菊の節句 栗ご飯

江戸時代から重陽の節句に食べる習わしがある栗ご飯

重陽の節句は秋の収穫祭と結びついていったため、重陽の祝い膳には秋の食材が並びます。長寿につながる菊酒は、本来は菊を漬け込んで作りましたが、お酒に菊の花びらを浮かべてみるだけでも良いでしょう。栗ご飯は、江戸時代から重陽の節句に食べる習わしがあり、「栗の節句」とも呼ばれています。秋茄子は「おくんちに茄子を食べると中風にならない」といわれてきました。食材として栽培された食用菊は、おひたし、お吸い物、サラダなどが人気です。この時期になると、菊をモチーフにした和菓子なども販売されます。

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●十五夜(お月見):月見団子・里芋・さつまいも
9月の行事・歳時記 十五夜 お月見 月見団子

穀物の収穫に感謝し、月見団子の始まり

穀物の収穫に感謝し、米を粉にして丸めて作ったのが月見団子の始まりです。月に見たてた丸い団子ですが、関西では里芋に見立てた形の団子を餡でくるむなど、地域に根ざしたさまざまな月見団子があります。団子を供える数は十五夜だから15個、十五夜の五から5個、満月の数から12個、などの説があります。

十五夜は里芋などの芋類の収穫を祝う行事でもあり、別名「芋名月(いもめいげつ)」といい、里芋やさつまいもなどをお供えします。
 
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●お彼岸:おはぎ
9月の行事・歳時記 お彼岸 おはぎ ぼたもち

春は「牡丹餅」、秋は萩の花にちなんで「御萩」

お彼岸のお供えものの定番「ぼたもち」と「おはぎ」は基本的には同じですが、本来は季節によって呼び名や作り方が変わり、通称は「ぼたもち」です。おもちは五穀豊穣、小豆は魔除けに通じることもあり、日本の行事に欠かせないもの。また、今と違って昔は甘いものが貴重だったため、「ぼたもち」といえばご馳走で、大切なお客様、お祝い、寄り合いなどで振舞われ、法要の際にも必ずお供えしていました。

本来、春は牡丹の花にちなんで「牡丹餅(ぼたもち)」、秋は萩の花にちなんで「御萩(おはぎ)」と書きます。牡丹は大きくて丸い花なので「ぼたもち」は大きめで丸い形、萩は小さくてやや細長い花なので「おはぎ」は小ぶりで俵の形に作りました。材料となる小豆は秋に収穫されるので、とれたての小豆が使える秋は皮ごと使った粒あんに、冬を越した春は、かたくなった皮を取ってこしあんにして使っていました。だから、「ぼたもち」はこしあん、「おはぎ」は粒あんを使って作るものでした。

お彼岸に「ぼたもち」「おはぎ」を食べる理由って?意味・呼び名や作り方違い
 

9月の花

●彼岸花(曼珠沙華)
9月の行事・歳時記 彼岸花 曼殊沙華

彼岸花の別名「曼珠沙華」は、サンスクリット語で「天界に咲く花」

彼岸花の別名「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」は、サンスクリット語で天界に咲く花という意味。おめでたい事が起こる兆しに赤い花が天から降ってくる、という仏教の経典から来ています。

彼岸花の花言葉は、「情熱」「悲しい思い出」「独立」「再会」「あきらめ」。ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草で、田んぼの畦道などに群生し、9月中旬に赤い花をつけるため、秋のお彼岸の頃に咲く花として親しまれています。開花期間が1週間ほどなのに、秋の彼岸と時を同じくするかのように開花する彼岸花は、あの世とこの世が最も通じやすい時期に咲く花でもあります。

「彼岸花・曼珠沙華」の意味や読み方・別名、花言葉や不思議な特徴

厳しい残暑から秋に近づき、過ごしやすくなっていく9月。先祖を思ったり、秋の実りに感謝しながら秋支度を始めましょう。

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