考えさせる質問とは……答えを導き出す質問と探求する質問は違う

考えさせる質問とは

良質な問いかけは活発な思考を促す

「相手の自発的な行動を促すにはコーチングが有効であり、コーチングは相手に質問を投げかけることである」

このような理解に基づき、相手を質問攻めにしてお互いが窮屈になっているケースをいくつも見てきました。

質問することの背景に「正しい答えを導き出す」というニュアンスがあるとしたら、ちょっとストップ。良い質問とは、「探求させるための質問」です。「お客様を満足させるために一番いい方法は何か?」と聞くのと、「お客様はどんなサービスを求めているのだろうか?」と聞くのでは、何が違うでしょうか? 前者は正しい答えを求めているのに対し、後者はお客様の身になって「どうなんだろう」と考える機会を与えています。

ホテル業界で世界一のサービスを誇っているリッツ・カールトンは、1つの質問を常にスタッフに投げかけています。それとは、「あなたはどのようなサービスをしてほしいですか?」です。この質問も、「あなたはどうか?」という問いかけることにより、考える機会を与えることができるのです。
 

質問することに慣れていない

子供の頃、好奇心に駆られて質問したり、学校で先生に質問攻めにし、「あまり質問をするものではない」と注意されたことはないでしょうか。また、質問せずに理解することが「察しがいい」とか「頭がいい」と評価されたこともあるでしょう。このように私たちは相手に質問することに慣れていません。従って、「相手を考えさせるために、質問は有効である」と言ってもなかなかできるものではありません。効果的な質問をする力を、鍛える機会はほとんどなかったと考えていいでしょう。

スポーツ選手を育てるコーチにとっても質問力は大切な能力です。野球選手はピッチャーが投げてきたボールを正確に打つ必要がありますが、バッティング能力が低い人をコーチする際、ヘボなコーチは「どうして打てないんだ?」「ちゃんと打てるようになぜスィングしないんだ?」と聞いてしまいがちです。そうなると、選手は何も言えずに萎縮してしまうか、自己正当化するしか方法はありません。

しかし、有能なコーチは次のように聞きます。

「ボールはどちらの方向から回転してきている?」

するとバッターはおのずとボールをよく見るようになります。

このように質問の仕方には工夫が必要です。そこで、答えを得ることを目的とするのではなく、考えさせるために質問をするにはどうしたらいいでしょうか?
 

限定質問と拡大質問を使い分ける

質問には大きく分けて「限定質問」と「拡大質問」があります。限定質問とは、When、 where、whoを使った質問で、答えは比較的限定されます。

■Whenを使った質問
A:「会議は何時から始まりますか?」
B:「10時からです」

■Whoを使った質問
A:「今朝一番に誰と会いましたか?」
B:「先月商品を買ってくださったお客様に会いました」

■Whereを使った質問
A:「どこに住んでいるのですか?」
B:「横浜です」

このように時間、人、場所などを尋ねる質問は限定質問と呼ばれます。必要な情報を手に入れたり、確認をとるときには役に立ちます。見てわかるように、決まった答えがあります。

一方拡大質問とは、what、why、howを使った質問で、相手に考えさせ、気づかせ、発見を促すことができます。

■Whatを使った質問
A:「この状況を解決するために何が必要でしょうか?」
b:「原因を追究することが必要です。商品の問題なのか、サービスの問題なのか、その他の問題なのか、検証するところから始める必要があります」

■Whyを使った質問
A:「どうしてこのことが障害になっているのでしょうか?」
B:「商品の配送が遅れてしまうと、せっかく早く申し込んでくださったお客様の満足度が下がってしまう可能性があるからです」

■Howを使った質問
A:「どうやったらこのプロジェクトは早く進むでしょうか?」
B:「決定権者がいないと物事がたらいまわしになる傾向があるので、責任者を明確にすることです」

拡大質問は表面的なことだけなく、より深く考えたり他の人の意見を参考にするなど、多くの情報にアクセスすることが求められます。また、拡大質問の場合は、「他には?」と聞くことで、さらに話したことを発展させることができます。限定質問の場合、「会議は何時から始まりますか?」「10時です」「他には?」というやりとりは成り立ちません。

それでは、拡大質問をより効果的に使う方法について次に取り上げます。
 

What、why、howをうまく使う

拡大質問で問いかけると、相手がより考えるようになる

拡大質問で問いかけると、相手がより考えるようになる

拡大質問はまさに思考を促進する問いかけです。この3つの疑問符は以下のように使い分けると有効です。

What(どんな)
Whatは問題を明確にする、相手に考えさせるときなどに使います。

「もしこのプロジェクトが成功しなかったら何が起こりますか?」
「どんな人を採用したいですか?」

■Why(どうして)
Whyは原因を特定するときに有効です。しかし、時には相手を追及しないように気をつけることです。

「売り上げの低下はなぜ起こったのだろうか?」
「どうしてこの問題は起こったのだろうか?」

■How(どうやって)
Howはアイディアを探っていくときに使います。特にwhatで明確になった後にHowを使うと有効です。

「どうやったらこのイベントを成功させることができますか?」
「スタッフのやる気をどうやって引き出せばいいでしょうか?」

拡大質問は相手の思考を刺激し、より深いところまで考えることを促します。質問をする際は向かい合って聞くのではなく、関わっている相手と同じ方向を向きながら、目の前にあるキャンバスに一緒に絵を描くイメージを持って問いかけると、相手はプレッシャーを感じずに、自由に発想を展開させることができます。
 

自分への質問で練習する

良い質問はその瞬間だけでなく、頭の中に残って問いかけ続けます。ハムレットの「to be or not to be. That is the question.」は、自分自身への有名な問いかけです。人が考えているときは、自分自身と会話をしているときなのです。

以下は自分自身を振り返る質問です。自分に質問をしながら、思考を促す練習をしてみましょう。
  • 仕事で自分がうまくいっているかどうかをどう測りますか?
  • 職場の人はあなたのことをどう評価すると満足しますか?
  • あなた自身が良い状態でいるには何が必要ですか?
  • あなたはどんな基準で物事を判断しますか?
  • あなたが今の仕事から手に入れたいと思っているものは何ですか?
  • あなたがリーダーシップを発揮するのは、どんなときですか?
  • 自分が健康でいるためにはどんなことをしていますか?
  • あなたは人にどのような影響を与えていますか?
  • あなたは自分の仕事のスキルをどのようにして磨いていますか?
  • あなたが仕事で高いパフォーマンスを発揮するには何が必要ですか?
このような質問に答えていくことは、自分自身への認識を深めるのに役立ちます。その体験を下に、あなたの部下にも同じ質問を投げかけて、考えさせる機会を作ってみてください。

【関連記事】


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。