どう維持するか? が肝心!
「あたる」を改善するのに、この様なストレッチャーを併用すると更に効果的です。ホームセンター等で千円前後で売られているものでも十分機能を発揮します。 |
これまで採り上げたものはどれも有効なものばかりですが、使い方次第で更に実力を発揮するポイントが幾つかあるので、最後にそれを纏めてみたいと思います。既に何度も書いているのでお気付きでしょうが、まず直接あたる部分とその周辺だけでなく、場合によってはその反対側や対角となる箇所にも使用すること。単にあたる部分が出っ張っているからではなく、実は他の部分の容積の方が見えないながらも不足していて、革がそちらに引っ張られているが故に結果的にあたる部分が生じる場合もあるからです。
革を伸ばし始めた際には、靴を履いている時だけでなく脱いだ後でも、上の写真のようなシューストレッチャーを用いて、少しでも早く足の形を靴に覚えさせてしまうことも肝心です。脱いだ後そのままの状態で長期間放置すると、革によっては次第に形状が元に戻ろうとする場合もあるからです。このシューストレッチャー、価格がそれなりにするものもありますが、千円程度で売られているものでも十分効果は実感できますよ。
ただ、たとえシューストレッチャーが手元に用意できなくても、工夫次第で代用は十分可能! 例えば革伸ばしスプレーを用いて靴を履いた後、足のあたる部分やその反対側・対角等にティッシュペーパーを小さく団子状に張り付けたシューキーパーを靴に押し込んだ上で、これらの部分にもう一度それを吹き付け放置するだけでも、結果が大きく違ってきますよ。更にはある程度革が伸びた後でも、シューキーパーをややキツ目に設定しその形状維持に努めるなど、履かない際の一手間を惜しまないと結果はきっちり出てまいります。
なお、2ページ目にも書いた通り革を伸ばせるか否かは、その一番丈夫な層である銀面をいかに伸ばせるかにかかってまいります。よって、今まで挙げた手段の効果が覿面に表れるのは、牛革ですと表面に銀面がしっかり残った所謂銀付き革をアッパーに用いた靴です。銀面が裏面に回ったスエードや、表面がコーティング状態のガラス張り革やエナメル革にはあまり有効ではないどころか、場合によってはシミ等も起こりかねないので、これらはリペアショップに持ち込んで、業務用の製品で対処してもらう方が無難でしょう。
また、大抵の靴には爪先に先芯、かかとに月型芯と呼ばれる芯地が内蔵されているため、今までご紹介したものを用いても革は前後方向にはあまり伸びません。よって「25の靴を26相当に伸ばす」ことは無茶な注文ですから、その辺りの見極めを過度な期待を持たずに必ず事前に行って下さい。最悪の場合革に亀裂が生じてしまい、そうなってしまっては当然手遅れですので。
いかがでしたでしょうか? 「足に合わないから……」と靴箱に眠っている靴が、ほんのひと手間で一気に快適に転じる可能性は、意外と高いものです。実稼働できる靴が1足でも多く増えると、お手持ちの他の靴の寿命も確実に伸びますので、どうかあきらめずにこれらを活用して、靴の多様性を楽しんで下さいね!
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