チャッカブーツを履きこなそう!

ツイード系のジャケットとの相性の良いチャッカブーツ。まずチャッカブーツの「丈」を解説した上で、メンズのドレスブーツでは安定した人気を保つチャッカブーツを採り上げます。また、ジョージブーツについても合わせてご紹介。

【目次】  

チャッカブーツは、まずは「丈」が問題だ!

だんだんと北風の冷たい季節になってまいりましたし、寒い時季に恋しくなる「ブーツ」の色々について、じっくりお話してゆきたいと思います。具体的なスタイルをお話しする前に、ブーツを知る上でどうしても外せないブーツの「丈」について、まずは手短にお話ししておきましょう。

靴の世界では、アッパーでくるぶしを覆っているものを「ブーツ」と呼んで、一般的な「シューズ」とは領域を区別しています。ブーツで興味深いのは、それぞれのスタイルでその歴史的起源や用途に裏打ちされた最適な「丈」が存在する点です。
 
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シューズとブーツの大きな違い、それはくるぶしが隠せるか否かなのですが、後者は単にスタイルだけでなく、その歴史・用途に応じた「丈」でも様々に分類可能です。


見栄えにも大きな影響を及ぼすこの「ブーツの丈」は、ヒールの高さと同様に男性よりも女性の方が関心の高い領域。秋になると婦人靴の世界では「今年はどの位の丈のブーツが流行るか?」は常に話題の中心ですので、何となくご存じの方も多いでしょうが、これを短いものから順に並べてみると、大まかには以下のようになります。
 
  • デミブーツ:踝を覆うか覆わないか程度の丈のもの。ローカットのワラビーなど。
  • アンクルブーツ(ブーティ):踝が隠れる丈のもの。チャッカブーツ・デザートブーツなど、今日のメンズブーツの主流です。
  • ショートブーツ:踝より上の足首が若干隠れる丈のもの。ジョージブーツ・ジョッパーブーツなど。
  • ハーフブーツ:下腿部の半分程度を隠せる丈のもの。カウボーイブーツなど。
  • ロングブーツ:膝下あたりまで隠せる丈のもの。ライディングブーツなど。
  • オーバーニーブーツ:膝より上まで隠せるもの。釣りの際に用いるウェーダーズなど。

具体的には、上記は「アンクル丈」「ハーフ丈」のような用い方を致します。より厳密には、丈を数値で示した「6インチ丈」「13インチ丈」のような表記も、特にワークブーツ系のものでは暫し行われているのですが、この講座では上記の分類に沿って説明してまいります。
 

チャッカブーツは「ドレスブーツ1足目」に相応しい

靴紐で締め上げる広義の「レースアップブーツ(Lace-up Boots)」のうち、一番お馴染のスタイルがこのチャッカブーツ(Chukka Boots)でしょう。足首部にある2対の鳩目(実際には3対のものもあります)に靴紐を通して締め上げる外羽根式(参考:外羽普段用?冠婚葬祭用?靴は外羽根式・内羽根式で選べ)のアンクル丈のもので、馬に跨って行うポロ競技で19世紀末頃に用いられていたブーツが起源と言われています。そのため名前の由来も、この競技の1ラウンドを示す'Chukker'から来ているようです。
 
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イギリス人の持つ伝統とモダンさを巧みに掛け合わすことで定評のあるHACKETTが、ご存知クロケット&ジョーンズに別注したチャッカブーツです。甲から前のアンラインド仕様に2対の鳩目は、このブーツに強い思い入れを持つ創設者ジェレミー・ハケット氏が断じて譲らなかったスペックです。


つま先にステッチングやブローギング、それにメダリオン(参考:快活、律儀、セミブローグ)が入る場合も稀にありますが、通常はいわゆるプレーントゥスタイル(参考:プレービジネスマンは知っておきたいプレーントゥの種類)のあっさりしたデザインの場合がほとんどです。

「シューズ」に比べてくるぶしを覆ってくれる安心感があるのと、鳩目が少な目の外羽根式のお陰でブーツの割に脱ぎ履きが容易なこともあり、「ワークブーツ」ではなく「ドレスシューズの延長」として、このブーツを抵抗なく選ばれる方も多いようです。さすがにビジネスの場面では少々難しいですが、履く場や合わせる服をそれほど選ばないので、メンズのブーツの中では常に安定した人気を保っているのも当然と言えましょう。

表情がシンプルなこともあり、用いられるアッパーもスムースレザーはもちろんのこと、スエードやヌバックなどの起毛系やオイルドレザー、それにコードヴァンなどそれこそ多種多彩です。起毛系の革を用いたものは、「アタリの柔らかさ」を最大限に味わえるべく一部若しくは全部を「アンラインド仕様」にしたものも暫し見受けられます。

またコードヴァンを用いたものは、くるぶし周りをあの唯一無二の重厚な感触で覆われるせいか、同じアッパーでもシューズの時以上に履き心地に独特な「粘り」を感じることが多く、熱烈なファンがいることでも知られています。
 

微妙に、でも決定的に異なるジョージブーツとは?

実はチャッカブーツと酷似したものに、下の写真のような「ジョージブーツ(George Boots)」と呼ばれるものがあります。こちらは足首部の3対の鳩目に靴紐を通して締め上げる外羽根式のアンクル~ショート丈のもので、そもそもは1952年に英国国王ジョージ6世の進言で陸軍将校向けに開発されたものです。

それまで用いられていたロングブーツでは、近代化する陸軍の戦闘様式に対応し切れなくなり始めたための大幅改良だったようで、そのデザインがやがて民間にも伝わってきた訳です。
 
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日本ではほとんど知られていませんが、イギリスでは軍隊や警察関係のブーツメーカーとして大変有名なSandersのジョージブーツです。チャッカブーツとの仕様の微妙な違いは、その起源の違いによるところが大きいのです。


チャッカブーツに比べ鳩目の位置が高くその数も一対多く、外羽根の切り返しのデザインも縦長ですが、それらは起源の違いからくるもの。より厳密に申せば、ヒールもチャッカブーツより明らかに高くできていますし、アッパーも黒や茶の頑丈なものと相場は決まっています。

ただ実際には、このジョージブーツとチャッカブーツを著名な靴メーカーでも混用している事例がほとんどで、両者を生んだイギリスのメーカーであっても、現状あまり厳密な区別は行われていないようです。

例えば、イギリスの著名なメーカー・クロケット&ジョーンズには、その名もズバリ“Chukka”と呼ばれるモデルがあるのですが、これはスエードの総アンラインド仕様ではあるけれど鳩目は3対で、デザイン面でもジョージブーツの要素が少し入り込んでいます。

だからでしょうか、同じくイギリスのブランド・ハケット(Hackett)の創設者であるジェレミー・ハケット(Jeremy HACKETT)氏は、自らのブランドのスエードチャッカブーツをこのメーカーに発注する際、「鳩目を3対ではなく2対にする」ことと「甲から前にはライニングを付けない」ことに相当こだわったようです。

チャッカブーツの起源は「スポーツ」である一方、ジョージブーツのそれは「軍隊」。起源の違いで求められる「機能」も本来は異なるわけで、その差が結果としてスタイルにはっきり表れることを、彼は一般のユーザーにもしっかり知ってもらいたかったのでしょう。「機能に裏打ちされた美」を重んじる、イギリス人らしい発想です。
 

チャッカブーツはツイードのジャケットとの相性が抜群!

鳩目の数が2対であれ3対であれ、またアッパーの材質がどうであれ、世間で広く「チャッカブーツ」と呼ばれているものは、原則ビジネス用のダークスーツに合わせるものではなく、基本的にカジュアルの領域の靴です。

ただ、ネクタイが全く似合わないかと言えばさにあらず、ジーンズとボタンダウンシャツのような極めて単純な装いからジャケット&トラウザーズの合わせまで縦横無尽にこなすことができる、1足あると大変重宝する靴です。礼を失しない程度にビジネスシューズとは異なる面持ちの休日履きをお探しの方には、最初にお勧めしたいブーツと申せましょう。

もはや季節も問わずにサラッと履ける靴になってしまいましたが、チャッカブーツが一番映えるのはやはり秋冬。となると、至って正攻法ですがまずは合わせてみたいのがツイードのジャケット達でしょう。
 
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カジュアルな装いならほぼ何でも対応可能なチャッカブーツですが、特にツイードのジャケットとの組み合わせは失敗の危険が極めて少ないものです。靴の色とジャケットに含まれる一色を合わせてあげるのがポイントです。


生産組合の方針で日本では今後生地としての調達が難しくなるとの悲しい情報が入っているハリスツイードや、所々に飛び色が浮き出るのが特徴のドニゴールツイード、それに柔らかさでは昔から定評のあるシェットランドツイードなどでできたジャケットとは、全く気楽にかつ自然に合わせることが可能です。

要はツイード系のジャケットが持つ視覚的な「重み」を、普通の靴より丈長な分だけチャッカブーツが更にバランス良く地面で受け止めてくれるのです。もちろん無地のジャケットやカシミア系のチェックのものでも、難なく対応してくれるのが心強い限り。靴の色味と同じ色がそのジャケットに少しでも入っていたら、メインの色は違っても案外カッコ良く映えてしまいますから、今度の休日、騙されたと思って試して外出されてみて下さいね!

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