エナメル靴の手入れ方法……ピカピカでないといけない素材!

 
エナメル靴の手入れ 

                     ヨーロッパの大陸側に行くと結構見かけるパテントレザーのVフロントプレーントウ
       この靴は専ら夜の礼装向けですが、パテントレザーは近年、メンズシューズの世界では用途を
                     一気に広げているのも事実です。 

 
以前は爬虫類を中心とした「エキゾチックレザー」のケアについてお話ししましたが、ご理解いただけましたでしょうか? その方法は分かれば極めて簡単なのですが、その存在感に圧倒され、今まで恐れ多くてケアできなかった方も案外多いのではないでしょうか。

さて今回はそのエキゾチックレザーと同様、光沢感が魅力のパテントレザーの靴のケアについて見てまいりましょう。「パテントレザー」と言われて解らない方でも、「エナメル」と言えばピンと来るかな?メンズシューズでは専ら夜の礼装用のイメージが強く、一般人にはやや縁遠い存在でしたが、近年は必ずしもそうではなくなりつつあります。だとしたら、ケアの方法も余計にしっかり覚えてかないといけませんよね!
 

2層構造だから生まれる長所と短所

 
クラック
パテントレザー最大の敵は、このような亀裂です。通常のレザーではある程度目立たなくすることができますが、パテントレザーでこれが起きると、もうどうすることもできません。

パテントレザーは、そもそも1810年代末期にアメリカの発明家が「水や汚れに強く丈夫な革」を作ろうと開発し、特許(Patent)を得たものです。当時の製法はなめした革の上に亜麻仁油ベースのラッカー剤を幾重にも覆ったものでしたが、当初の目的とは別に「見た目の光沢の良さ」の方が評判を呼んでしまいました。靴墨を入れなくても十分光るので、特に「礼を失することもないし、女性のドレスを汚さずにもすむ」として、舞踏会が付き物だった夜の礼装用の靴向けに、大西洋の両岸で急速に普及してゆくのです。

その後は科学技術の進化と同調して、ベースはウレタン樹脂に変化しましたが、「コーティングで革の上から封印してしまう」発想は開発当初と変わらず、これこそこの革の長所・欠点双方の原点なのです。長所はもはや言うまでもなく、まず水や汚れが内部に染み込まず、手入れを特段しなくても輝きが出てしまう「メンテナンスフリー性」です。また革の表面をすっぽり覆ってしまえるので、表面キズ等が原因で通常の革としては「品質が劣る」とみなされてしまうものでも、これを施せば十分一級品として流通させることができるという意味では、資源の無駄使いを防ぐ役割も果たしていると言えるでしょう。

一方短所としては、断面が厚くなってしまうが故に深いシワが入りやすく、おまけにこのシワがパキッと亀裂になりやすい点がまず挙げられます。また、革本体と樹脂コーティング面の2層構造であるがゆえ、温度や湿度の変化で双方の収縮差が起きてしまい、それが原因のトラブルも起きやすいのも事実です。乾燥しやすい冬場は表面割れ、そして高温多湿の夏場は樹脂の溶解によるベタ付きや表面剥離が起きることがあるのです。これらが表面にいったん起きてしまうと、修復は事実上不可能ですから、保管には十分気をつけましょう。

そういえば1990年代の半ば、フランスの某高級ブランドの女性用ハンドバッグの表面やライニングが「溶けてしまう」トラブルが多発したこと、覚えていらっしゃる方も多いでしょう。これに用いられていた革も、上記と原理は同じでした。光沢を長続きさせるため、これらのバッグの表面やライニングは一種の樹脂加工がされているのですが、老舗のメゾンらしく「革の質感重視」で、耐久性にはやや劣る樹脂でのコーティングだったのです。

ところが真夏の高温多湿、真冬の乾燥と両極端な状態になる日本の押入れへの長期間放置は、彼らは製造時には全くの想定外。ハレの日用に空気が対流しにくいそのような場に大切に保管していた間に、その樹脂が溶解してしまったのです。現在、そのブランドのものはちゃんと改良されているようです。ただ歴史的経緯から行けば、そのブランドは本来「閉鎖的な既成概念と闘う女性の、昼間の装い」にこそ相応しいものですから、バッグも見た目はどんなに華麗でも、本来はハレの日用ではなくて日常の仕事使いにすべきものであって、暗い押入れに長居させるものでは、ないんですけどね……
 

専用クリームで保護! 保管方法は?

 
パテントレザー専用クリーム
パテントレザーのケアも、専用のクリームがあれば大丈夫。左:コロニル ラックポリッシュ \1,050。エス・アイザックス商会。 右:コクシー ジェルクリーム \840。R&D

先述のとおり、表面をウレタン樹脂で厚く覆った革ですから、ケアと申しても正直その要点は「樹脂面をどう守るか?」に尽きます。これまでご紹介した革のように、本来レザーケアに付きものの水分や油分それに通気性といった話が、この「革」では適応できません。必然専用のものの出番となりまして、通常の乳化性靴クリームは使えないと思って下さい(実はこれらにも使用可能なものがごく一部あるのですが、それは別の機会にご紹介します)。

コロニル ラックポリッシュは典型的なパテントレザー専用クリームで、光沢を維持し表面のひび割れやベトつきを防ぐ効果があるだけでなく、防汚性にも優れています。また、前回爬虫類専用として紹介しましたコクシー ジェルクリームはこの革にも使用可能で、爬虫類系やパテントレザーの革製品がいくつもあるご家族には、汎用性の広いクリームと言えるでしょう。いずれも塗る時も乾拭きする時も、表面を均すべく窓ガラスを磨くように直線的に拭いてあげるのが光沢を出すコツで、ブラッシングは特に不要です。なおその特性上、日頃から上述のケアをしていれば汚れは水拭きと乾拭きで十分落とせる筈ですが、頑固なものはケア前にクリーナーを使って落として下さい。

そう、ケアそのものは「専用クリームを塗って空拭き」といたって簡単です。ここまで読めばもう察しが付くでしょうが、むしろ注意すべきは保管方法! ひび割れやベト付きを防ぐため、シューツリーを使って履きジワをちゃんと伸ばし、季節により温度や湿度が極端に変わってしまうような場所に長期間じーっと放置させないようにしましょう。特に高温多湿の場所は厳禁です。要は大事にし過ぎず履く「場」を見付けて適度に履いて、その都度ケアしてあげるのが輝き続ける一番の秘訣ですよ!

レディスや子供靴と異なり、メンズシューズでパテントレザーと言えば、長年「夜間の礼装用で色も黒」と相場が決まっていました。しかし昨今ではモード系のブランドが普段履き用に積極的に取り入れたり、レザースニーカーでも用いるものが大変増えています。これ、考えようによっては開発当初の「水や汚れに強く丈夫」の目的に、ちゃんと適っていますよね。ビジネス向けには派手過ぎと保守的な小生は思っていますが、資源の有効活用の観点もあり、今後も上手に活用されていって欲しい「革」であることは確かでしょう。

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