安全なはずの自宅で多くの事故が起こっている
子どもにとって、もちろん大人にとっても一番安心できる場所、それは「自宅」だ。そんな安心・安全な場所であるはずの自宅でも、大きな事故一歩手前「ヒヤリ」とする出来事は日々起きている。今回は小さな子どもがいる家庭の「マンションのバルコニー」で起きたヒヤリハットをいくつかご紹介しようと思う。手すりから身を乗り出す男の子
相模原市に住むAさんには2人の子どもがいて、マンションの10階に住んでいる。そのマンション内では同じような年頃の子どものいる家庭同士で仲が良く、日ごろから子ども同士がそれぞれの家に遊びに行くなど行き来も多かった。その日も、自宅のちょうど真下の列の1階に住む、子どもの友達(小学校3年生の男の子)が自宅に来ていた。A子さんがふとバルコニーに目をやると、その男の子がバルコニーの手すりに手を掛け、胸のあたりまで身を乗り出して下を見ているのを発見。男の子の家の専用庭がちょうど真下に見えたため、興味が湧いてのぞき込んだという。
Aさんの自宅はマンションの10階なので地上まで27メートルくらいある。バルコニーの手すりの高さは床から125センチあり、足元には踏み台になるような足がかりは一切なかった。運動神経の良い男の子だったので、腕の力だけでひょいと登れてしまったようだ。
どんなに高い手すりをつけても
一般的にマンションのバルコニーの手すりの高さは110センチ以上という規定がある。Aさんの自宅マンションはそれより高い125センチで、安全に配慮した高さになっている。また、足元には何も置いていなかったにも関わらず、腕の力だけで乗り越えが可能となると、大人ができる対策には限界がある。小学生ともなれば聞き分けはつくはずなので、危ないことを常に言い聞かせること、バルコニーに単独で出られないようにサッシに何かくふうをしておくことくらいだろうか。
網戸を窓と見間違えて…
岩手県に住むBさんには年子の子どもがいる。ある日、親戚の家に遊びに行ったときに子ども同士でふざけあい、3才の姉が1階の掃き出し窓にぶつかった。そこには窓ガラスがあるように見えていたが、実は窓は開いていて、虫よけの網戸があるだけだった。そのため、その網戸を勢いよく突き破ってその先の庭まで転がり落ちてしまった。一戸建て住宅の1階で起きたハプニングだったため大きな怪我にはならなかったが、もしマンションの上階の窓だったら大変なことになっていた。実際にマンションの出窓の網戸を突き破って落下した死亡事故も発生しており、光加減によっては窓ガラスが閉まっているようにも見える。網戸の利用時には気を付けたい。
もしや締め出し? 大人がヒヤッと体験
山形市に住むCさんには3人の子どもがいて、家族でマンションの3階に住んでいる。ある日の朝、Cさんがバルコニーで洗濯物を干していると、まだ言葉もしゃべれない1歳半の長女が室内側から掃き出し窓のカギをかけてしまった。あせったCさんは窓ガラスを通して中にいる長女にカギを開けるように言ったが、言葉のわからない長女はニコニコと笑うだけで、カギを開けてくれることはなかった。
その時、たまたまバルコニーの下を知り合いが通ったので、事情を話して玄関から自宅の中に入ってもらい、無事にカギを開けてもらうことができた。もし高層階のバルコニーだったり、セキュリティが厳しいマンションだったらと考えるとぞっとする。
ちなみにCさんの友人も同じような経験をしたが、たまたま携帯電話を持っていたため、バルコニーからマンションの大家さんに電話して自宅に入ってもらい、カギを開けてもらったとのこと。バルコニーで起きるヒヤリハットはなにも子どもだけではなく、大人にも起こり得るということだ。
他人に危害が? バルコニーから落ちてくるモノ
同じくCさんの体験だが、子どもたちがバルコニーで遊んでいるとき、よくモノを下に落としてしまい、ヒヤッとしたそうだ。ある日シャボン玉を落とした時は、真下に止めてあった車に当たってしまった。この時はたまたま自分の車だったから良かったけれど、もし他の人の車だったら大変だった、という。ガイドもマンションの1階に住んでいた頃、バルコニーで洗濯物を干していたら上からいろんなものが降ってきたという経験をしている。洗濯ばさみのような小物から、布団たたき、バスマット、洗濯物の一部など。ちょうど目の前を通過して、自宅前の駐車場に落ちていった。これらのものがもう少しでも硬かったり重かったりするモノで、その時たまたま下に人がいたら、大きな事故につながりかねない。バルコニーからの落下物は日常的にとても良くあることだが、もっと注意を払うべきことだろう。
ニュースにならないヒヤリハットから学ぶ
これらは全て実際に起こったヒヤリハットの事例だ。マンションのバルコニーから小さな子どもが転落する事故は後を絶たず、その都度大きなニュースになるが、その周りでは無数のヒヤリハットが起きている。危ない目に合うのは子どもだけでなく、大人や他人も含まれる。繰り返しになるが、大きな事故を防ぐためには、子どもは何をするかわからないという認識を持つこと、大人の目がない時は子どもがバルコニーに出れないようなくふうをしておくことが予防につながる。そして「こんなことがあった」というヒヤリハットの事例を知っていれば予防に役立つので、ご近所同士でたまに情報交換などもするとよいと思う。
※ヒヤリハットとは
ヒヤリ・ハットとは、大きな事故には至らないものの、その一歩手前の事故・事例で、その名の通り「ヒヤリとしてハッとする」ものをいう。
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