「(東京など)都市部ではご近所関係が薄れてきていて、隣人の顔を知らないこともある」と、耳にすることがある。確かに人の流入・流出の多い都市部では、地方のような濃厚な近隣関係は築きにくい部分がある。でも、そもそも「ご近所付き合い」はそこでの暮らしにどれほど影響を与えるのだろうか。

 

空き家となっている東京の持ち家

都市部の新興住宅街のご近所付き合いは?(写真はイメージ)

都市部の新興住宅街のご近所付き合いは?(写真はイメージ)

先日久しぶりに、東京にある持ち家(現在空き家)へ立ち寄った。家族の転勤で一家そろって東京を離れて2年と9か月ほど、この家はずっと空き家になっている。

人に貸すとか売るとかした方が、いろんな意味でよいと頭ではわかっているものの、遠くに住んでしまうとなかなか重い腰が動かない。

近隣では高齢化が進み、住宅街で周辺に家は建ち並ぶものの空き家もポツポツと目立つようになってきた。空き家が多いと不用心だし、活気が出ないし、我が家もそんな原因の一端を担っていることになり、近隣の方にはたいへん申し訳ないと思っている。

 

新しい住宅街での近隣関係

この家には引っ越す前に10年ほど住んでいたけれど、その頃のご近所関係というと、先祖代々そこに住んでいた人は少数派で、多くはその代で引っ越してきたファミリーだった。町内会のつながりはあり、全くお付き合いがないというわけではないけれども、地方のような強い結びつきがあるかというとそうでもない。比較的新しい住宅造成地で、地元で受け継がれてきたお祭りなどもない。だから、ご近所と「深く良い関係」を築いていくというのはなかなか難しいという面がある。

そんな関係のまま引越しをして数年ほど留守をして、久しぶりにご近所さんへご挨拶に伺ったわけだけれども、意外にも(といってはなんだが)温かく迎えていただいてうれしかった。

 

なぜ、気に留めてくれているかというと…

その中でも「早く帰って来てね」と言って下さったあるご近所の女性は、空き家に異変があるとこまめに連絡をくださるありがたい存在だ。たまに私の家族が泊まったり立ち入ったりすることがあるため、家の窓が開いていたり電気がついていたりすることがあり、その都度連絡をしてくださる。

その女性が、私たちがご挨拶に行ったときにこんな話をしてくれた。私の長男が4才のころ、「弟が生まれたんだよ。かわいいんだ」とこの女性にお話しをしたのだという。私はいつの間にそんな会話をしたのかも思い出せない。「その時の様子がかわいくてねぇ」と言って下さり、そんな長男も今はもう高校生ですというと、驚いていた。

 

深すぎず、全くないわけでもない関係

東京の比較的新しい住宅街でのお付き合いは、深いお付き合いはあるところではあるだろうが、このような感じであっさりしているところも多いのではないだろうか。でも、そんなに深いお付き合いではなかったとしても、こうして気にかけてくれて、子どもの成長を楽しみにしてくれているご近所さんがいるというのはとてもうれしい。地方在住の人は「都市部にはご近所付き合いがない」と思っている人もいるけれど、ないわけではないのだ。

 

ご近所トラブルの原因とベストアンサー

話は変わるけれども、騒音問題をはじめとする昨今のご近所関係トラブルをひもといていくと、だいたいは「お互いのことをよく知らない」ことが原因で起こっている。赤ちゃんの泣き声、子どもの足音など、子どもが原因で起こるトラブルも、お互いに事情を知っているもの同士であればそこまでこじれないだろうに、という騒動も多い。 

そんな問題の回避方法として「まずはご近所にご挨拶をして子どもの顔を覚えてもらうといい」というが、それは一理ある。今回のように、その昔、ほんの一言三言、言葉を交わしただけだと思うのに、子どものことをずっと覚えていてくれて、懐かしんでくれる人もいる。多少のことなら「ああ、あの子がやったのね」と許してくれると思う。子どもの力って大きい、そして子どもを通じて得たご近所関係も、とてもありがたい。

 

帰りたくなるご近所関係とは

ご近所さんが言ってくれた言葉「早く帰ってきてね」は、強い求心力を持つ。今の地方暮らしも気に入っていて、いつ東京に戻るかわからない身だ。その空き家になっている持ち家は、東京郊外の、子育てにはとても良い環境にあるが、都心部への通勤・通学にはちょっと不便な場所にある。

子育てがそろそろ終わる我が家では、次に東京に帰る時はもう少し便利な場所がいいな、と思ったりしたけれど、「いつかまたここに帰りたい」という気持ちも、ほんのちょっぴり生まれた。

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