私には二人の子どもがいる。私の子どもたちがまだ小さい10年くらい前、ちょうど子育てで一番忙しい時期は、東京郊外の3LDKの一戸建てに住んでいた。その家は、もともと外国帰りのご夫婦が建てた家で、少々特徴のある間取りをしており、広い玄関と広いリビングがあり、和室はなかった。しかし当時でも和室がないことはさほど珍しいことではなく、あちこちで見かけるようになっていた、と思う。

マンションの田の字プランの住み心地

子どもたちが中学生と小学校高学年になり、子育てもほぼ一息つけるようになった一年半前、引っ越ししてこんどはマンションに入居した。間取りは典型的な田の字プラン(※)で、バルコニーに面して縦長のリビングダイニングと和室が横に並んで設けられている。マンションの田の字プランはスタンダードすぎて、あまり面白味のない間取りと考えられがちかもしれないが、実際に住んでみると意外と住みやすい間取りだと感じた。

(※)田の字プランとは
玄関からまっすぐに廊下が伸び、左右に居室が振り分けられたマンションでは最も一般的な間取り。

住みやすさの決め手は和室

リビングの隣にある6畳の和室の例。

リビングの隣にある6畳の和室の例。家具を置くことを考えると8畳くらいあるといい。

床面積80~90m2程度のスタンダードなファミリー向けのマンションだと、そこに設けられる和室はせいぜい1室で、広さはほとんどが6畳もしくはそれ以下が多く、8畳はまず見たことがない。ところが入居したマンションの和室は8畳だった。和室重視型の、めずらしい間取りである。

リビングダイニングと和室の堺にあるふすまを開けて、二室をつなげて使うことができるが、和室に8畳の広さがあるとつなげた時の空間の広がりが断然違う。そして8畳の広さがあると使い方のバリエーションが増えてくる。

子どもは和室が好き

当初、リビング・ダイニングが家族が集まる中心となるはずだからと、大きなテーブルと座り心地の良い椅子を用意した。でも実際には子どもたちはここに来るのは食事をする時だけで、居場所はもっぱらその横の和室となった。コタツを出す冬はもちろん、夏も和室に床座したり寝転がったりして思い思いに過ごしている。

押入れが秘密基地

先日、小学生の息子が押入れからマットレスを出して組み立てて秘密基地のような空間を作って遊んでいた。それを見て、自分自身もそうやって遊んだなぁと思い出した。基地を作って隠れてみる、狭い空間に潜んでいるのはワクワクする時間だった。これも押入れや布団がある和室ならではの遊びだと思う。

押入れが自分の場所

そしてさらに子どもは押入れの中を自分のテリトリーとして使うようになった。押入れはクローゼットより奥行も幅もあるので、子どもがすっぽり入ることができる空間だ。中段があるのでそこに上がり込んでゴソゴソと、そこにスタンドライトやipod、小机などを持ち込んでドラえもんのごとく”生活”してみたり。押入れの中は子どもだけの世界だ。こういう遊び方、過ごし方は洋室ではできない。子どもの世界も和室のほうが広がりやすいように思う。

「使える和室」を実感

この和室、子どもたちの居場所としてだけでなく、いろいろな使い方ができ、すごく便利だということに気がついた。ポイントは「リビングとふすまを隔ててつながっている」ということと「ある程度の広さがある(=8畳程度あれば理想的)」ということ。

昼間はふすまを開けリビングと一体に広く使い、夜はふすまを閉めて布団を敷いて寝室として使うこともできる。お客さんが来たら客室にもなる。部屋の使用用途の幅がとても広い。子どもがいるときはふすまを開けておけばリビングからも子どもたちの様子がわかるし、アイロンがけや洗濯物を畳むなど座ってする家事の場にも重宝する。

和室離れが進んでいる昨今だけど、普段使いに子育て期にと、和室はとても使い勝手がいい。これから家を建てる人、買う人には「和室っていいよ」と伝えたいと思っている。

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