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子育て時代の照明器具選び

家を購入したり建てたりするとき、意外とタイヘンなのが照明器具選び。大型家電店で入手できるお手軽なものからデザインの凝った輸入物まで、選択肢はとても広い。子育て中なら安全性もきちんと押さえておきたい。

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

種類もデザインも豊富な照明器具

もし注文住宅で家を建てるなら、照明器具ひとつとっても計画の段階から時間をかけて、空間やインテリアに映えるものを、建築士と相談しながら念入りに選ぶことができると思う。

もし中古住宅や分譲住宅を選んだ場合、天井には照明器具をつける専用のコンセント(「引掛けシーリング」という)だけがついていて「照明器具は別途用意」というケースもあるだろう。そんな場合は、そこに合う照明器具を、自分で選ばなければならない。

照明器具を後から選ぶ

私が中古住宅を購入した時、照明器具に関しては「一部はあるが全部はない」状態で引き渡された。ちなみにカーテンもそうだった。前の住人がいくつかの照明器具とカーテンを、次の住まいに持っていったようだ。

この「一部はあるが全部はない」状態は、実はけっこう難しい。例えば20畳ほどの広さのあるリビングダイニングの天井には、引掛けシーリングが3箇所あり、一か所だけ無難な乳白色のシーリングライトがついていた。この、真ん中に残されたシーリングライトはまだ使えそうだし、使えそうなものは使いたいところだけれど、さてここからどうしたものか。

シーリングライトとペンダントライト

天井に直付けするシーリングライト。乳白色のカバーで電球を覆い、調光機能がついたタイプ。

天井に直付けする「シーリングライト」。こちらは乳白色のカバーで電球を覆い、調光機能がついたタイプ。

リビングに一個だけついていた「シーリングライト」とは、最もスタンダードな照明で、天井に直付けするタイプの照明器具の総称だ。一方、天井から吊り下げるタイプの照明器具を「ペンダントライト」というが、最近では吊り下がったタイプは地震時に揺れて破損の危険性が高いと考えられ、ペンダントライトをシーリングライトに代えるご家庭も多い。

家に残されていたものは、乳白色のカバーがついた、何の飾りもないシンプルなシーリングライトで、明るさや光色を調節できる調光機能もついていないものだった。リビング・ダイニングの照明器具としては、少々物足りないと考えて、それを2階の個室の照明として転用し、リビング・ダイニング用の照明を3基購入することにした。

一部屋に複数の照明器具をつけるとき

ミラノのデザイナーによるペンダントライト。照明の色もいろいろ変えられる。

ミラノのデザイナーによるペンダントライト。照明の色もいろいろ変えられる。

リビング・ダイニングの天井にある引掛けシーリングは3箇所。ひとつの空間で3つの照明器具を選ばなければならない。全体の調和も必要だけど、全部同じでも面白くない。そして悩んだ結果、両端の2箇所の照明器具を、見た目はシンプルだけれど、調光機能のあるシーリングライトにして、真ん中の一つをまったく趣の違うデザイン性の高いイタリア製のペンダントライトにすることにした。

そうして部屋の中央に選んだ照明器具はイタリア・ミラノのデザイナーの超個性的なランプ。薄いアルミ板を幾層も並べて構成した、まるで昆虫を想像させる軽快なデザインのもの。アルミの間に挟むカラーシートを交換すれば、様々な色を楽しめる。

デザイン性を重視した結果・・・

ところがあるとき、この照明器具で子どもがケガをするというアクシデントが発生。子どもが何気に振り回した手がこのペンダントライトにあたり、スパッと切れてしまった。天井から吊り下がるタイプのため、背の低い子どもでも手が当たってしまったのだ。

安全であるべき家で、大いに反省

子どもの手のケガは、不幸中の幸いでそれほど深いものではなかったけれど、痛々しかった。安全であるべき住まいの中で、子どもに痛い思いをさせてしまったことを深く、ふかーく、反省。

これを機にこの照明器具を撤去して、結局、天井に直付けするシーリングライトに変更した。ごくごく一般的な乳白色のカバーがついたタイプ。かくして、リビングダイニングの天井には、似たようなシーリングライトが3つ並ぶというシンプルな光景となった。けして豪華じゃないけど、これがその時の自分たちに合っている照明器具なのだ。子どもが手を振り回しても当たらないし、電球が露出していないので、地震時の危険性も少なくなった。

省エネ性、地震時の安全性、
家庭内事故の起きないものを

当時はまだLED照明もそれほど一般的ではなく、照明器具選びはデザイン性や調光機能などに目がいきがちだった。時は流れ、今は省エネ性や地震時の安全性なども重視される時代になった。

自分の失敗談を踏まえ、もし子育て世代でこれから照明器具選びをするという人がいたら、子どもが何かしてもケガをしないかという視点も加味して、家庭内事故の起きにくい照明器具選びをしてほしいと願っている。

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