ボウモア・フラッグシップモルト「12年」
ハイボールもおすすめ
近年、ボウモア蒸溜所から生まれる数量限定品の香味品質はすべてハイレベルなもので、発売の度にわたしは驚かされている。前回記事での「ボウモアヴォルト」はもちろんのこと、新たに登場してくる製品がこれだけ高品質であるのはじっくりと確かなつくり込みがなされていることの証である。
どの製品も複雑味、重層感がありノージングから口中香、そして余韻まで十分に楽しませてくれるが、その核となっている香味は「ボウモア12年」である。今後登場してくると思われる新製品や限定品を楽しむためにも皆さんに必ず味わっておいてほしいと願う。
アイラ島ボウモアの環境が香味に色濃く反映
ボウモア12年
ベーシックなつくりはこうだ。仕込水はピート層をくぐり抜けて湧く、蒸溜所近くを流れるラガン川を源とする清水である。製麦に関しては上記2つの記事を参照していただきたいのだが、フロアモルティング作業とピートによる麦芽乾燥を自らがおこなうスコッチのなかでも稀少な蒸溜所である。ピートは蒸溜所独自のボグ(採掘場)を持つ。
粉砕した麦芽を仕込水の温水とともに糖化槽に投入。やさしくかき混ぜ、じっくりと時間をかけて濾過をおこない、甘い麦汁を採取する。
麦汁はオレゴンパイン材の木桶発酵槽に入れられ、酵母を加えて発酵。木桶発酵槽は6基。温度管理に細心の注意を払い、約48時間~62時間をかけてアルコール分約7~8%のウォッシュ(醪/もろみ)を得る。
このウォッシュを蒸溜する銅製のポットスチル(単式蒸溜器)は可愛いらしい小型のストレートヘッドで初溜2基、再溜2基の計4基。初溜、再溜の2回蒸溜によりアルコール分69%の最良の香気成分を抱いたニューメイクだけを取り出し、これが樽に詰められて貯蔵熟成へと向かう。
貯蔵庫は3棟。なかでも第一貯蔵庫はスコッチ最古の貯蔵庫で、しかも海にダイレクトに面しているだけでなく海抜0メートルという特殊な環境にある。
熟成樽の主体はバーボン樽、そしてシェリー樽。その他、ボルドーやマデイラのワイン樽、ジャパニーズオークのミズナラ樽でも貯蔵熟成をおこなう。
駆け足で製造工程を述べたが、シングルモルトウイスキー「ボウモア」の香味には蒸溜所を取り巻く環境が色濃く反映している。ピート層をくぐり抜けた仕込水。潮風を浴びたピート。そして潮風がそよぐフロアモルティングの発芽室や第一貯蔵庫。こうした環境に職人の技と情熱が一体化して、しなやかで気高く、しかも力強さのある深遠な香味が誕生するのだ。
では、アイラモルトの女王、ベストバランス・アイラと称賛される「ボウモア12年」を味わっていただきたい。前回記事の「ボウモアヴォルト」のような限定品がしばしば登場するが、「12年」の他にスタンダードとしてシェリー樽熟成原酒の甘美さで魅了する「15年」(700ml/43%/¥8,000)、「18年」(700ml/43%/¥9,600)がある。(ボトル撮影/小寺浩之)
BOWMORE 12YEARS
700ml/40%/¥4,400(税別)
色/琥珀色
香り/スモーキー・レモン・はちみつ
味わい/スモーキー・ダークチョコレートを想わせる温かみのあるコク
フィニッシュ/繊細で複雑な余韻が長くつづく
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