年齢とともに減るコラーゲン
コラーゲンにも寿命があり、種類によってその寿命の長さは異なりますが、それぞれの役割を終えると、新しいコラーゲンが生まれ入れ替わります。コラーゲンは20代に比べて30代では約10%減少、40代では約20%減少、50代で約30%も減少……つまり10歳年齢を重ねるごとに約10%ずつ減少してしまうのです。コラーゲンの減少が肌老化を起こす大きな原因になっていることがわかりますね。
コラーゲンは若返りの泉でもある!
コラーゲンはとても大切な存在だけど、年齢とともにどんどん減ってしまう…とても残念なことです。でもちょっと待ってください!反対に考えると、10年で約10%減るコラーゲンを減らさなければ、10年前の肌に近い状態をキープできるのです。さらに減ってしまったコラーゲンを増やすことができれば、肌だけでなく、骨、関節、筋肉、内臓、血管、髪まで若返ることができる、ということです。だからと言って、K子さんのように「フカヒレ1週間チャレンジ」で体重増、肌荒れ悪化、お財布空っぽ……になってしまっては効率的ではありません。
コラーゲンを生み出す工場「線維芽細胞」
では一体、何がコラーゲンを作らせてくれるのでしょうか? 肌のコラーゲンを作らせる方法も、実は次々とわかっているのです。これについてコラーゲン研究のトップリーダー、資生堂リサーチセンター研究員の入山俊介さんに聞いてみました。肌には、コラーゲンをつくり出す工場のような役割をする「線維芽細胞」という細胞があります。線維芽細胞はコラーゲンだけでなく、ヒアルロン酸やエラスチンという美肌を保つのに必要な成分をつくります。線維芽細胞はコラーゲンを減らさないで、若々しい肌を保つために、とても大切な存在なのですね。
線維芽細胞も年齢とともに衰える
「でも実はこのコラーゲン工場とも言える『線維芽細胞』の働きも年齢とともに低下することが明らかになっています」と入山さん。そこで線維芽細胞を増やしたり、線維芽細胞の働きを維持したり、高めたりする方法についての研究が盛んに行われ、いろいろな美容成分や美容手法が開発されました。しかし、どうしても年齢を重ねた皮膚にある「線維芽細胞」は、コラーゲンを生み出す力がどんどん衰えていくのも事実。つまり、「40歳の線維芽細胞」は「20歳の線維芽細胞」に比べて、明らかにコラーゲンをつくる能力が劣ってしまうのです。
コラーゲンを生みつづける「真皮幹細胞」
そこで入山さんたちは、「さらに肌に無理なくコラーゲンを作らせる方法はないか?」と研究を続けました。その結果、コラーゲン工場である「線維芽細胞」を生み出す“お母さんのような細胞”である「真皮幹細胞」に着目したのです。「皆さんは『幹細胞』という言葉を聞いたことがありますか? 実はいま話題の『iPS細胞』も幹細胞の仲間です。幹細胞は分裂しながら、自分と同じ細胞と別の細胞を、際限なく作ることができる特殊な能力を持つ細胞なのです。皮膚の真皮には、『真皮幹細胞』があります。ということは、40歳の真皮幹細胞も、20歳の真皮幹細胞も、特別な異常がない限り、基本的には同じクオリティ、能力を持つ幹細胞をつくることができるのです」
いくつになっても質の高い線維芽細胞、つまりコラーゲン工場をつくれるのが真皮幹細胞、と入山さんは説明します。
年齢でコラーゲンケアをあきらめなくても良くなるの?
加齢によってお肌の細胞が弱まっていたために、なかなか産生されなかったコラーゲン。今回の技術では加齢には関係なくコラーゲンを産生させる「真皮幹細胞」の働きがわかりました。ということは、もう年齢でコラーゲンの減少や衰えをあきらめなくても良くなりそう。シワやたるみを「年齢のせい」、「コラーゲンの減少のせい」、「細胞レベルで肌のアンチエイジングはムリ……」とあきらめていた人にも朗報ですね!
入山さんは「これからのコラーゲン研究で一番ポイントになるのは真皮幹細胞です」と断言します。実際に真皮幹細胞に働きかけてコラーゲンを生み出す能力を高める成分などの研究も進み、その成分を含んだスキンケア化粧品や美容食品などの開発も進んでいます。この技術がこれからどんな商品に応用されていくのか、今から楽しみですね。
さあ、さっそく「フカヒレ1週間チャレンジ」に失敗して落ち込んでいるK子さんに教えてあげなくちゃ!
取材協力:資生堂