住まいのプロが提案「イエコト」/住まいなでしこ ~女性目線のすまいのヒント~

トイレはふたつ必要か?

わが家は延床面積24坪の小さな2階建て。オットとふたり暮らし。間取りを検討する時に迷ったのはトイレの数だった……。

岩間 光佐子

執筆者:岩間 光佐子

住まいの設備ガイド


新しい住まいの間取りを検討している時、
ワタシの頭を悩ませたのは、トイレはふたつ、必要かどうか。

結婚以来、十数年のマンション暮らし。
トイレはひとつで大丈夫だった、はず。
そりゃ、具合が悪かったり、外出前でバタバタしたり、
ひとつで「困った」時もあったけれど。

オットとふたり暮らしだし、小さい家だし、
掃除が面倒だし、そして、なにより、予算無いし、
ひとつでもいいんじゃないかなぁ、と。

2階建てプランでは各階に

ハウスメーカーのモデルプランや分譲住宅の間取りをみてみると、2階建ての住まいの場合、1階と2階にトイレが配置されているケースがほとんどだ。4人程度の家族を想定して、LDKのあるフロアにひとつ、寝室や個室のあるフロアにひとつ、というのが一般的。新築マンションの場合は、床面積が広いタイプや2世帯向けプラン以外は、トイレはひとつのケースが多い。スペース的な問題が大きいが、ワンフロアで上下移動がない、という理由もあるだろう。

2階建ての場合、家族構成やライフスタイルにもよるが、ひとつよりもふたつ、の方が使い勝手はいい、という声はよく聞く。たとえば、ひとつの場合だと、「朝、仕事や学校に出かける時、喧嘩になる」とか、「体調を崩した時にゆっくりと使えない」とか、「2階の寝室から1階のトイレに行くのは面倒」といったような不満がおきがち。「お父さんの後には入りたくない」という思春期の娘の意見もある。ふたつの場合の不満は、「掃除が大変!」ということぐらいか……。

日常の暮らしや将来をイメージして

イメージ

1階の「くつろぎトイレ」。左に手洗カウンターと鏡、ブラケット照明もつけた。奥の窓前にも花などをかざることのできる棚がある。

で、わが家の場合。設計をお願いした建築家のKさんのプランは、1階に寝室と和室、浴室と洗面室。2階には、リビング・ダイニング・キッチンのほかに仕事部屋。トイレは、1階と2階それぞれにプランニングされていた。

間取図の中で日々の暮らしや将来の生活をイメージしてみる。「昼間はほとんど2階で過ごし、夜は1階という生活パターンになるだろう。和室で接客することも多いし、歳をとったら寝室近くにトイレがないと大変だから、1階にトイレは絶対必要だ。でも、2階のリビングでくつろいでいたり、仕事中にわざわざ1階のトイレに行くのは面倒。慌てて階段を下りて転んだら大変だし、後でトイレを造るのは新築よりもお金かかるし……」。あれこれ悩んだ結果、年齢的にも特に将来を考えて、ふたつ設けることにした。

トイレのプランニングに限らず、日々に暮らしや動き方(動線)を考えることはとても重要だ。間取りによっては同じ広さの住まいでも、トイレはひとつでいいケースもあるだろうし、せっかくふたつ設けても、あまり使わなかった、ということもあるかもしれない。間取りを検討する際には、新しい住まいでの暮らしをどこまでイメージできるかが、大切なポイントになってくる。

メリハリつけてコストを抑える

というわけで、ふたり暮らしの小さな家だがトイレはふたつ。それぞれ快適な空間にしたいところだが、なにせ予算もギリギリ。少しでもコストを抑えるために、役割を明確にしてメリハリをつけることにした。

朝夜、ゆったりと使いたい1階のトイレはくつろぎ重視。お客様も利用するので、ゆとりある空間を確保(といっても階段の下なのだが)。インテリアや機能にこだわってタンクレストイレを選び、木製カウンターを設けて手洗い器を設置。お気に入りの籐の鏡も取りつけて居心地のいい空間に。2階のトイレは、普段使いと割り切って、安価な手洗付タンクタイプを選び、温水洗浄暖房便座もナシ。一畳弱のコンパクトな空間だ。

新しい住まいでの暮らしも2年。結果として、ふたつつけて正解だった。体調を崩した時には、ベッドから5歩のトイレでゆっくりできるのはありがたかったし、鏡のある広めのトイレは友人たちにも好評。ササっと使える2階のトイレは、原稿の締め切りでバッタバタの時にもマル。もし、1階にしかトイレがなかったら、おっちょこちょいのワタシの見事な階段落ちで、編集担当者のNさんに迷惑をかけたに違いない、かも。


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