プレミアム・ブレンデッドは芸術品
ブレンデッドスコッチの傑作、バランタイン17年(撮影/川田雅宏)
メルロ。プルーンのような熟した果物の香りで、芳醇でまろやか。響17年に使われるモルト原酒ではホワイトオークでつくられた山崎のパンチョン樽熟成を想定してみた。バニラを連想させる、甘く華やかな熟成香が特長だ。
カベルネ・フランにはカベルネ・ソーヴィニヨンに似たブルーベリーのような香りがあるが、緑の葉を連想させるような爽やかさも感じられる。これには多少スモーキーさが感じられ、森の若葉のような感覚のある白州ホッグスヘッド樽(ホワイトオーク)熟成原酒を想定した。
プティ・ヴェルドは黒ぶどうだが、タンニンが強く、バイオレットのような香りがありながらほろ苦さも感じられ、とても個性的だ。想定するのはオリエンタルな香味の山崎ミズナラ樽熟成モルトしかない。
こうして考えると、酒の世界が愉しく思えてこないだろうか。そしてウイスキーには花や果実を連想させるだけでなく、バニラ、ナッツに森の香りや潮っぽさなどさまざまな香味が潜んでいて、豊かな香味の醸造酒ワインに負けない深く芳しい複雑味があることが理解いただけるだろう。
それをボルドーブレンドのように、ひとつひとつの強い個性を柔らげたり、輝かせたりしながら、それぞれを響き合わせて新しい香味を創りあげるのがブレンデッドウイスキーである。
とくにプレミアム・ブレンデッドはある意味、芸術品である。高い次元でより美味しいものを創造しようとする人間の匠の結晶である。混ぜもの、なんて言葉を使わないでいただきたい。
グレーンがブレンデッドにつやを生む
ただし、ウイスキーの場合、グレーンウイスキーが加わってこそブレンデッドである。グレーンの役目はブレンデッドにとってとても重要だ。かつてモルトは味噌、グレーンはダシ、と述べたことがある。ダシがよくなくては味噌汁は美味しくないでしょう、ということなのだが、もうひとつ違う世界で表現してみよう。
ウイスキー製造関係者の中には、油絵にたとえて、さまざまな色の絵の具がモルトウイスキー、テレピンとかペインティングオイルといった画用液の役割がグレーンウイスキーと説明される方もいらっしゃる。
色の発色、つや、絵の具の色の延び、これは画用液の使い方で決まる。響17年は、愛知県の知多蒸溜所でとうもろこしを原料にして生まれた、大まかにクリーン、ミディアム、ヘビーといったタイプの異なるグレーンウイスキーを配合し、数十種のモルト原酒とブレンドしている。
あの響17年の華やかで繊細、精妙な香味は、グレーンウイスキーがモルトのハーモニーをしっかりと支えているから生まれてくるものなのだ。
いろいろと書いた。説明不足の部分も多々ある。ワインの技法はウイスキーにもある。異なる酒でも互いに結び合い、影響し合っているのだ。
でも、要は、ブレンデッドウイスキーは素敵な酒なんだよ、と言いたいだけのこと。ウイスキーもワインも、酒はとにかく「ああ、美味しい」って飲めばいい。いい心地になればいい。
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