さて角瓶である。つい先日発売された関西の食雑誌『あまから手帖』に、このウイスキーのことを「静謐」と書いた。
発売されたのは1937(昭和12)年。65年以上に渡るロングセラーだが、いつの時代も声高に主張することがなかった。
当時はウイスキーファンは日本に少なく、わずかな愛飲家は舶来品一辺倒だった。そこに登場したのが角瓶(発売時の名称は『12年もの』)。世界に通用する初の本格派ジャパニーズ・ウイスキーとして好事家の舌をとらえた。


以来、定着したファンを保ちつづけているが、日本人が日常的に飲めるウイスキーの代表格として、もっと評価されていいと思う。
自宅でチビリチビリと飲むには最高のウイスキーである。一家に一本常備といいたい。

さて、おすすめの銘柄の紹介はここまでにしてダシの話をしよう。
いまシングルモルトウイスキーが人気だが、実は世界で飲まれているウイスキーのほとんどはブレンデッドウイスキーである。モルトウイスキーは数パーセントでしかない。
では世界の酒であるブレンデッドウイスキーとはどんなものか。
簡単に言えば数種のグレーンウイスキーと数十種類のモルトウイスキーをブレンドしたものだ。

グレーンウイスキーはトウモロコシや小麦といった穀類を原料として連続式蒸溜機で蒸溜、樽熟成する。モルトウイスキーは大麦が原料で単式蒸溜器で蒸留、樽熟成する。
その特性からグレーンは静かなスピリッツ(サイレント)、モルトは声高なスピリッツ(ラウド)と表現される。

味噌汁が味噌だけでは濃くて荒々しさがあるように、モルトは個性の主張が強いぶん、荒々しさがある。味噌汁をまろやかな風味にしてくれるのがダシであるように、グレーンがモルトの個性を穏やかにして、まろやかで深い味わいを生み出すと考えていただきたい。

だから初心者にはまろやかなブレンデッドをすすめるのだ。モルト、モルトと喜んで飲むのもいいが、ブレンデッドの奥深い味わいを理解して欲しいと思う。
ブレンデッドがなかったらウイスキーは世界の酒とはならなかったのだから。
次回はそのあたりの歴史について語ることにする。

前回の『ダシの前の、もう一度酒齢の話』もご参照いただきたい。また第4回の『ウイスキーのダシの歴史1』もどうぞ。
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