居酒屋メシに合う挑戦的ジャパニーズジン

 
ジャパニーズクラフトジン翠(SUI)

ジャパニーズクラフトジン翠(SUI)

酒類は世界的なクラフトブームがつづいている。ジンにおいては「シップスミス」(『シップスミス ロンドンクラフトジン先駆者の思想』参照)のように古い文献資料をもとに原点回帰の王道を極めようとするつくりのものや、ジュニパーベリーを核としながらも、それまでのベーシックなボタニカル(草根木皮)から新たな素材を見出そうとする姿もみられる。
「ジャパニーズクラフトジンROKU」(『六[ROKU] ジャパニーズクラフトジンの魅力』参照)のようにベーシックなジン原料酒と6種の日本の自然の恵みを浸漬、蒸溜した原酒をブレンドし、ザ・ジャパニーズジンという新たなジャンル、新たな香味の頂(いただき)を創造した製品も登場した。近年はこうした香味創造の挑戦がさまざまに見られる。つくり手の明確な設計思想が味わいからうかがうことでき、飲み手にとっては楽しい時代になってきている。
 
先日(3月10日)、注目すべきジンが新発売された。クラフトとは謳ってはいないが、わたしはある意味、ジンの進化だと感じている。
その名を「サントリージャパニーズジン翠(SUI)」(700ml・40%・¥1,380/税別希望小売価格/以下、翠)という。
昨年からジンに関する記事(『ジン・栄光の歴史1』参照)を掲載してさまざまに語ってきたが、「翠」の香味は実に挑戦的だ。ジンは、マティーニ、ギムレット、ホワイト・レディをはじめとしたザ・スタンダードとして君臨するカクテルのベース・スピリッツとして名高い。ところがこの「翠」はそんなトラディショナルなカクテルへの志向はまったくない。
あくまで居酒屋をはじめとした料飲店での食事の友として開発されたジンである。挑発的といってもいいだろう。ジンの歴史が動くかもしれない。
飲み方はとてもシンプル。単純にソーダ水で割るだけ。“翠ジンソーダ”というハイボールで料理を楽しむためのジン。居酒屋メシとともにグビっと飲むジン。ウイスキーの角ハイボールと同様、スピード感のある飲み口を追求したといっても過言ではない。
スピード感はとても重要だと思う。たしかに、深い熟成感や重層感、複雑味のある酒をゆったりと味わう時間もなくてはならない。しかしながら料理や会話を楽しみながら無理なく口中を心地よくすべっていく、時を止めることのないスピード感のある酒の存在があってこそ、ゆるやかな時の流れに浸る酒も生きてくるのではなかろうか。
 

柚子、緑茶、生姜の和のボタニカルがキー

 
翠ボタニカル柚子

翠ボタニカル柚子

さて、ジンといえばジュニパーベリーなのだが、「翠」においては穏やかに抑えられ、柚子、緑茶、生姜の3つの素材が織り成す和の感覚がふんわりと漂う。ジュニパーベリーのクセのある香味が苦手という人もいらっしゃるが、「翠」にはその強い主張はない。
挑戦的といったのはこのことで、ジュニパーベリーの主張をよくぞここまで抑え込んだものだと思う。勇気のいることであり、これまでジンに抱いていた固定概念を打破したものである。マティーニに仕上げて飲んでいただこうなんてまったく考えていないジンなのである。天晴であり、つくり手に拍手を贈りたい。
 
翠ボタニカル緑茶

翠ボタニカル緑茶


こういう挑戦的なつくりをおこなっていかないと、酒の世界は広がっていかない。バーで愛されるジンがあり、居酒屋で愛されるジンがあっていい。こうして将来的には、さらに新たなジンの世界が創造されていくだろうし、「翠」はその先駆けの存在であるはずだ。
 


 
翠ボタニカル生姜

翠ボタニカル生姜

では、「翠」に使用されている原料をお伝えしよう。
まずジン原料酒であるが、これは「ジャパニーズクラフトジンROKU 」と同様、ジュニパーベリー、コリアンダーシード、アンジェリカシード、アンジェリカルート、カルダモンシード、シナモン、ビターオレンジ、レモンピールの8種のボタニカルで構成されている。
そしてジン原料酒にブレンドされるのが、柚子、緑茶、生姜といった日本の自然の恵み、和のボタニカルを生かした蒸溜酒や浸漬酒である。ジンは一般的には蒸溜酒のみを使用するが、「翠」の製法、独自のつくり分けや香り、味わいについては次ページでご紹介しよう。(次ページへつづく

※お酒は20歳になってから。未成年者の飲酒は法律で禁じられています。