「どうせ買うなら一生モノの家具がいいな」と思っていた。
海外のインテリア雑誌で
「結婚祝いに、母が使っていた祖母のチェストを譲ってもらった」
なんて記事を見ると、
やっぱり、いい家具を買えば、ずっと使えるのね、と感心したものだ。
だから、ひとり暮らしを始めた時、
少し無理して、無垢材の食器棚を買った。
オーソドックスなデザインを選べば、孫は無理でも、
とりあえず、自分のための一生モノになるんじゃないかと思っていた。
結婚した時も、当時憧れていたブランドの
大きなテーブルとダイニングチェアを買った。
チェアは、張り地を変えれば、ずっと使えるんじゃないかと思っていた。
年齢で好みは変わるか……
家を建てることに決めた時、建築家のKさんからプランニングに必要だから、と新居で使う予定の家具リストをつくるようにシートを渡された。使いやすいプランにしてもらうためには、何を持っていくのか、処分するのか、事前に明確にしておかなければならないのはあたり前のことだ。わかっていても、かなり悩んだ。食器棚もダイニングも使えないわけじゃない。モノはそこそこいいはずだ。だって、あの時、少ないお給料の中から、頑張って買ったんだから。
でも、デザインが、若すぎる(というか子供っぽい)。なんとなく、中途半端な感じで、いまの趣味からは、遠くなってきているのは否めない。新しい家の空間にだって、しっくりこないし。
20代でコレだ!と思ったデザインも、50歳も近くなると、やっぱり違う、ということがあるんだな、ということを改めて理解した。というか、若いころのワタシは、見る目がなかった、ということなんだと思う。
モノの良し悪しだけじゃなくて
そして、もうひとつ。その家具への思い入れがあまりなかったことがモンダイ。頑張って買ったけれど、長年、愛着を持って使っていたかというと、かなりあやしい。雑誌に出てくるような部屋づくりの、上っ面部分にだけに執着して、買い揃えることで満足してしまったような気がする。
一生モノの家具っていうのは、それはいいモノであるに越したことはないけれど、どれだけ愛着を持てるモノか、ということも大切なような気がする。買った時の思い出だったり、その家具のある部屋での思い出だったり。思い出とともに愛着もわくだろうし、一生大事にもするはずだ。
「結婚祝いに、母が使っていた祖母のチェストを譲ってもらった」ことが素敵に感じるのは、物理的にいい家具というだけでなく、きっと、大好きなお祖母ちゃんやお母さんの思い出に、自分の思い出も加えていきたくなるような家具だからだろう。
そういう意味では、わが家にある1脚の古いチェアは一生モノかもしれない。夫が中学生の頃から実家の食卓で使っていたもので、決して高価なチェアではないけれど、なんともいえない雰囲気が伝わってくる。新居に合わせて塗装をし直し、部屋のコーナーに置いている。
愛着を持てるかどうか
アンティークショップで見つけたチーク材のテーブルとチェア。今の暮らし方にしっくり馴染んでいる
そして、悩みに悩んで求めたのは、アンティークの小さなテーブルとチェア2脚。家が完成するまでにテーブルは見つけることができたけれど、チェアは引っ越して数ヵ月後にやっと気にいるモノに出会うことができた。
たくさんの家具屋さんを巡り、ネットショップやオークションもチェックし、長い時間かけて、あれやこれやと探しただけに、すでに充分愛着もわいている。
まぁ、この歳だし、一生モノの家具になることは間違いないけれど。
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