FUJI FILMのブランド戦略
FUJI FILMは化粧品でも自信を持って他人に薦められるブランドとなることができるのか? |
たとえば、イギリスのヴァージングループは“ヴァージン”というグループブランドを核にしてヴァージンアトランティック航空やミュージックショップのヴァージンメガストア、ヴァージンカフェ、ヴァージンコーラを販売するヴァージンドリンクスに至るまで実に様々な事業を展開して成功を収めています。
FUJI FILMも同じように、長年培われてきた“FUJI FILM”というブランドの信頼がありますから、このブランドを利用して、新規事業で一気に顧客の信頼を獲得するブランドエクステンションを採用することは一見賢い選択のようにも思われます。
ただ、ブランドというのは顧客の中のその企業に対するイメージですから、統一性が取れていなければ、ブランドに対して混乱を来す原因になります。たとえば、高級を売りにしているブランドが同じブランドの下で非常に低価格の商品を販売するようになれば、それまで“高級”というイメージを持っていた顧客のブランド観が崩壊し、その企業がどのような企業かがわからなくなってくるということです。
今回のFUJI FILMのブランドエクステンションも顧客がこれまで持っていたブランドイメージに混乱を来す可能性もはらんでいます。「なぜフィルムメーカーが化粧品を出すのか?」という疑問や、「化学製品を製造するメーカーが作る化粧品が肌にとっていいのか?」という疑問を持つ消費者も多いと予測されます。
私自身は商品自体が他社製品と差別化された素晴らしいものなのですから、新たなコーポレートブランドを立ち上げて化粧品事業を展開した方が長い目で見て正解だったような気がしていますが、既存のコーポレートブランドを活用すると決めたからには、フィルムと人の肌には多くの共通点があり、フィルムで培った技術が美容に応用できることをいかに消費者に理解してもらうかが成功への鍵になりそうです。
化粧品業界は特にブランドには敏感な消費者が多いので、ターゲットとする顧客層で「どこの化粧品を使ってる?」という会話があった時に、自信を持って「FUJI FILM!」と言ってもらえるようにブランド戦略を組み立てていく必要があるでしょう。
【今回のよくわかるマーケティングのポイント】
- プロモーションには多くのターゲット顧客が目にするメディアを使用し、注目を引く著名人を起用すると効果が高くなる。
- 自社の強みが何なのかを把握して、その強みが現在の主力事業以外にも活用できないかを検討することによって、比較的に成功確率の高い新事業での新製品を市場に投入することができる。
- 新製品の投入に当たって、ブランドが確立されている企業は、そのブランドを使用することによって、より早く顧客の信頼を得ることができる。
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