営業のノウハウ/営業の商談・ヒアリング

交渉の達人になる「PPR」とは?

交渉の達人になる「PPR」とはどういう意味なのでしょうか? 交渉って、相手のあることだから、どう転んでしまうか不安。そんな事前の不安を払拭すべく、しっかり準備しましょう。こちらの主張の骨子であるPPRを固めておくことが、肝心です。

西野 浩輝

執筆者:西野 浩輝

営業ノウハウガイド

<目次>

交渉の達人になる「PPR」

交渉の達人になる「PPR」とは?

契約は取れたのに利益は少ない!?

「本末転倒」って言葉がありますよね。 『広辞苑』で意味を調べてみると、「根本的な事柄とささいな事柄とを取り違えること」と書かれています。これって胸が痛い言葉です。だって、私たちはしょっちゅう「本末転倒」をやってしまっていますからね。
 

「今○○をお買いあげいただくと、一緒に△△もついてきます」なんてセールストークに乗せられて商品を購入してみたものの、「よく考えてみたら、△△なんていらなかったよ」とかね。
 

実は交渉下手な営業マンも、商談の交渉の場面で「本末転倒」をやっていることが少なくありません。なんとか契約を結びたいものだから、「あれもやります」「これもできます」とお客さんにいろいろな条件を提示したり、お客さんからの条件を飲んだりします。
 

後で冷静になったときに、その条件ではまったく自社の利益にならないことがわかって、深く後悔するというわけです。契約を結べたのはいいけれど、それが儲けにつながらないのなら、やっぱり「本末転倒」です。交渉は成功とはいえません。
 

では、「本末転倒」にならず、本来の目的を達成できる商談にするためにはどうすればいいのでしょうか。それは、お客さんと交渉をするときに、まず「今回の商談のゴールはここだ!」というぶれない目的(Purpose)をしっかり持っておくこと。
 

次にお客さんへの提案(Proposal)は、その目的を実現するために行うこと。さらにその提案を受け入れた方がいい理由(Reason)を、お客さんにきちんと説明すること。この3つが大切だと、私は考えています。 これを私は、Purpose(目的)、Proposal(提案)、Reason(理由)のPPRと呼んでいます。
 

以前の記事「勝海舟から学ぶ営業に役立つ交渉術」では、交渉の達人である勝海舟がPPRをしっかりと押さえて、西郷隆盛との交渉に成功したという話をしました。営業マンのあなたも、PPRをマスターすれば、勝海舟並みの交渉の達人になるのも夢ではありません。
 

Purpose:目的は複数用意しよう

何事においても、目的(Purpose)を持つことが大切であるのは、みなさんすぐに納得していただけると思います。
 

「英語の勉強をする」というのでも、「TOEICで700点以上取る」といった具体的な目的があるからがんばれるわけで、目的がないとやる気が起きないし、なにをどこまでがんばっていいかもわかりませんからね。
 

商談での交渉も同じ。商談前に、今回の交渉で実現したい目的をあらかじめ設定しておくことがまず大事です。その際目的は、例えば

A.自社の利益を確実に確保する
B.長期的な継続受注を実現する
C.売上を拡大する

というように、複数設定しておくことをオススメします。目的は複数あった方が、交渉の状況に合わせて、「目的Bは無理そうだけど、目的AとCだけはなんとしても死守しよう」といったように、フレキシブルに対応することができるからです。
 

Proposal:提案は、目的からずれてないかを確認

自分が設定した目的を実現するために行うのが提案(Proposal)です。「自社の利益を確実に確保する」という目的を設定したのに、「他社には負けない価格にしますから、どうか買ってください」という提案では、目的を達成できる提案とはいえません。
 

だからお客さんとの交渉の間は、何度も頭の中で「今回の交渉の目的はなにか」を確認しておく必要があります。そして提案をする前にも「この提案は、本当に目的を実現できる提案だろうか」ということを、頭の中で確認しておかなくてはいけません。 この確認ができていれば、本末転倒の提案をするという失敗をしなくてもすむはずです。
 

提案も目的と同じように、あらかじめ複数用意しておくことをオススメします。お客さんがA案を受け入れてくれなかったらB案、B案がダメだったらC案と、いろいろな代替案を出すことができるからです。
 

案が1つしかないと、「なんとかこれでお願いします」とお客さんに頼み込むかたちになってしまいます。これでは「お客さんへのお願い」になってしまい、「交渉」ではなくなってしまいます。
 

とはいえ、どんなに優秀な営業マンでも、複数の提案を急にその場で思いつけるものでもありません。目的の設定と同じように、提案も商談前にあらかじめ案を練っておいた方がよいでしょう。
 

Reason:MET理論で理由を説明

お客さんに提案をしたら、その提案を受け入れた方がいい理由(Reason)をきちんと説明できないと、お客さんは納得してくれません。理由を話すときには、Merit(メリット)、Emotion(感情)、Threat(脅し)のMET理論で、お客さんを説得すると効果的です。


Merit   :お客さんに商品を買った方がいいメリットを伝えること
Emotion :お客さんに譲歩してもらうように感情に訴えかけること
Threat  :今この商品を買わないと損をすると、お客さんを少し脅すこと


このMET理論の具体的なテクニックは、「必勝!交渉術 有利に進めるコツはMET」で解説していますので、そちらを参考にしてください。
 

続けるうちに交渉力が高まる

PPRを意識しながら交渉するとなると、商談中の営業マンの頭の中は、「本来の目的は何だったけ」とか「目的を切り替えた方がいいかな」とか、「この提案は目的とずれてないかな」というふうにめまぐるしく動き回り、フル稼動状態になります。最初のうちは、ヘトヘトになるかもしれません。
 

けれどもこれを続けるうちに、やがて無理なく目的→提案→理由をしっかりと押さえた交渉ができるようになります。もう「本末転倒」な判断をすることもなくなるはず。あなたもPPRで交渉の達人を目指してくださいね。
 

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