クラフトバーボン思想が蘇らせたライウイスキー
ノブ クリーク ライ
バーボン販売数量世界No.1を誇るジムビームをつくりつづけるビーム家6代目、ブッカー・ノー(1929~2004)がクラフトバーボンというカテゴリーを創出した。この背景については2月にアップした記事『クラフトバーボンには名匠の思想や信念が宿っている』を参照していただきたいのだが、もともとは原点回帰の思想である。
ライウイスキーはアメリカンウイスキーの原点といえる。17世紀末、ヨーロッパからアメリカに渡った移民たちが最初につくったウイスキーはライ麦を主原料にしたライウイスキーであったといわれている。
18世紀末からケンタッキー州でトウモロコシを主原料にしたバーボンウイスキーがつくられはじめたが、バーボンが広く流通しはじめたのは南北戦争(1861~65)以降のことである。19世紀はもちろん、20世紀に入って禁酒法(1920~33)施行前まではライウイスキーのほうがシェアは高かったのである。
禁酒法撤廃後にライは衰え、とくに1960年代になるとライ製造から撤退するメーカーが相次いだ。そんななか、ビーム家はジムビームを世界の名酒へと成長させながらバーボンの品質追求をつづけるとともに、ライ製造もつづけた。
イギリスのウイスキー評論家、故マイケル・ジャクソンは生前、世界的なバーボンを生むビーム家がライウイスキーをつくりつづけていることを称賛していた。彼はスパイシーでハーブ的な香味のこのアメリカンウイスキーの衰退を惜しんでいたのだった。
この6月2日に日本新発売となる「ノブ クリーク ライ」は、現ビーム家7代目のフレッド・ノーが父ブッカーのクラフトの思想を受け継ぎ、ライ興隆の時代の懐古を込めて、力強さのあるライウイスキーを復活させたものだ。
力強くリッチで、スパイシーな魅力
現在アメリカではライウイスキーへの人気が高まりつつある。7代目フレッドが生み出したライの香味はクラフトバーボンの「ノブ クリーク」が抱くコクのある、力強くリッチな香味特性を踏襲しながらも、ライウイスキー特有の爽やかなスパイシーさを見事なまでに感じさせる。日本でもライウイスキーファンを獲得しそうな、そんな予感のする魅力的な味わいである。
ホワイトオーク樽熟成ならではのバニラの甘さや樽香を感じさせながら、ライ麦由来のスパイシーさが心地よい。クラフトらしいコクに潜むハーブ的な感覚はケンタッキーのブルーグラスをそよぐ爽やかな風を想起させる。
絶対味わっていただきたいウイスキーである。とても穏やかなこころへと誘ってくれる風味である。
尚、「ノブ クリーク」に関しては『ノブ クリーク/世界が認めるプレミアムバーボン』の記事を参照いただきたい。
テイスティング・ノートを記す前にライウイスキーの定義を簡単にお伝えする。
原料の51%以上がライ麦。溜出時アルコール分が160プルーフ(80%)以下になるように蒸溜。内側を焦がした新樽に125プルーフ(62.5%)以下で詰めて熟成。2年以上熟成したものをストレートライウイスキーと呼ぶ。では「ノブ クリーク ライ」のテイスティング・ノートをお伝えする。
KNOB CREEK RYE
750ml/50%/¥4,600(税別)
色 明るい琥珀色
香り ハーブ・ライ麦
味わい スパイシー・バニラ・オーク
フィニッシュ 温かみありスムーズ・穏やかなスパイシーさ
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