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雪国の暮らしと屋根の融雪

山形に引っ越してきて4度目の冬を迎えた。相変わらずシンシンと雪が降っている。道や屋根に降り積もる雪、軒先に下がるつらら。子どもは喜ぶ一方で、屋根の雪下ろしで毎年事故が起きている。

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

雪とつららと

つららもめずらしかったが、危険だという

つららもめずらしかったが、危険だという

東京から山形に引っ越すときに、近所のママ友に羨ましがられた。その人は「子どもに雪を見せてあげたい」という。

確かに子どもは雪が大好きだ。引っ越してきた当時小学生だった我が子も、初めての本格的な雪に大喜びだった。雪だるまはもちろん、大きなカマクラだって作れる。

つららもめずらしかった。下校途中に大きなつららの下がった軒先に近づいては手で折って、冷たいだろうにそれをそのまま家に持って帰ってきたこともしばしば。あとで聞いたら、それは本当はしてはいけないことで、地元では「つららには近づくな」と子どもに言って聞かせているらしい。つららが落下してケガをすることがあるそうだ。

趣きが異なる雪国の暮らし

雪が降る地域は気象条件は厳しいけれど、白一色になる風景はとても美しいと思う。雪が降ると、時間の流れも変わる。外に出るためにはまず雪かきをしなければならないし、滑らないように、事故が起きないようにと、人も車もゆっくり進む。せかせか分刻みの、都市部の暮らしとは趣が違う。

雪下ろしは重労働

高齢者世帯の雪下ろしは重労働だ

高齢者世帯の雪下ろしは重労働だ

もちろん、美しいだけではなく、大変なこともたくさんある。特に屋根の雪下ろしは毎年落下事故が発生する危険な作業だ。雪下ろしは高齢の核家族となると手に負えなくなる。

私の住むマンションの向かいの戸建て住宅でも、大雪の降った翌日、お年寄りが屋根に乗って雪下ろしをしていたが、ヒヤヒヤした。

これからは、できれば雪下ろしをしなくて済む方法を考えてから建物を建てたい。屋根の雪下ろしをしなくて済む方法は、いくつかある。

雪に耐える屋根にする

雪の荷重を計算し、雪を積んだままにしても家がつぶれないように頑丈に作っておく方法。屋根の形は雪が落ちないように、フラットやM字をしている。家を建てる時の初期投資がかかるけれども、その後のランニングコストはかからない。

融雪装置をつける

融雪装置の例

融雪装置の例

電気や温水、地下水などを通すパイプの入ったパネルを屋根面に設置して雪を溶かす。軒先にパネルを設置すれば、つららもできなくなる。融雪装置の設置代と、その後のランニングコストがかかる。

同じシステムで駐車場や玄関先にも融雪処理ができるものがある。毎日車で出勤する家庭なら、駐車場の雪かきも重労働なので、一緒に設置してしまうという考えもあるだろう。自分の家にはどの方法がよいのか、熱源は何がよいのか、各社の装置を比べておきたい。

自然に落とす

屋根の形に勾配をつけて自然に雪が落ちるようにしておく。隣家や道路に雪が落ちないように、自宅敷地内に雪が落ちるスペースが必要。初期投資もランニングコストもかからないけれども、敷地にゆとりがないとできない。

究極のエコ融雪

赤外線を反射させるシートの見本。お尻の下に敷くだけでも暖かい

赤外線を反射させるシートの見本。お尻の下に敷くだけでも暖かい

あとひとつ、面白いなと思った方法がある。赤外線を反射させる材質のシートを天井裏に敷き込むだけ、という方法。

雪国では薪ストーブの利用も進んでいるが、天井裏にそのシートを敷き込むことで、薪ストーブで暖まった室内の熱が外に逃げず、その熱で屋根の雪も溶けやすくなるという。既存住宅でも設置可能で、ランニングコストもかからない究極のエコ融雪だ。

 

雪の処理が必要な地域は広がっているかも?

人の力で雪下ろしをすることは、昔から行われてきたこととはいえ、事故が起きる可能性があり、負担も大きい。そのことを考えると、雪が多い地域で家を建てる時は、最初から人力に頼らずに屋根の雪を処理できる方法の導入を検討したほうがいいと思う。

今、毎年のように異常気象と言われ、東京でも大雪が降ることがある。そんな気象がこのまま続けば、屋根、駐車場または玄関前の融雪装置は、関東以南の広い地域でも必要とされる時が来るかもしれない。

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