ダマスクローズの栽培に適した条件とバラの谷の特徴
バラの谷は、バルカン山脈とスレドナ・ゴラ山脈にはさまれたエリアにあります。
バラの谷では、大きな山脈が北風や南風を止めるため、植物が生育しやすく、酸性度が低く水はけの良い土壌があり、昼は暖かく夜は涼しくなるなど、ダマスクローズの栽培に適した条件が整っているのです。
咲き始めたダマスクローズは日が高くのぼると香りが揮発してしまうため、収穫は朝4時半頃からはじめ、収穫された花は次々と蒸留していきます。
ダマスクローズを収穫できる期間は、1年に20日間程度(5月下旬~6月上旬)しかないのです。 収穫時期のバラの谷は、朝は晴れ、夕方頃から雨がまとまって降るというような天候で、この雨が香り高いダマスクローズを育てる大切な条件となっています。
ダマスクローズ
それゆえ収穫にはかなりの人手が必要です。例えば、アルテヤファミリーでは、65ヘクタールのバラ畑の収穫に20日間で500~600人の人を雇ったそうです。前日の夕方にバラの状況をみて、翌朝、何人の人手が必要か算出し、翌朝の4時頃、バスを出し、町で必要な人員を集め、畑での収穫作業が開始されるのです。
ローズオイルやローズウォーターは水蒸気蒸留法で抽出
水蒸気蒸留中の窯の中の様子です
古来に使われていたような蒸留窯は現在使用されておらず、蒸留所はプロセスが自動化され温度等が厳密に管理されています。また、ローズウォーターは、ローズオイルを得るときの副産物、とアロマテラピーの授業で習われた方も多いかと思いますが、今回、お話を伺ったブルガリアの企業では、ローズオイルを抽出する場合と、ローズウォーターを抽出する場合とで、蒸留時間を変え、入れる水の量を調節し、より質の高い製品作りに取り組んでおられました。
例えば、アルテヤ社では、10トンタンクに800kgのローズを入れ、水蒸気蒸留法で温度を厳密に管理されながら約3時間かけて250gのローズオイルが抽出されています。ローズウォーターのみを主に抽出する場合には、約4.5時間かけて蒸留が行われます。
では、次のページでは、ローズオイルの抽出量と環境の関係について お話ししたいと思います。