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靴の「底」について深く考えてみる ヒールその5(2ページ目)

「メンズシューズ基礎徹底講座」では、ヒールの意匠について様々な考察しております。今回はレザーのトップリフトに付く「ゴム」の形状について考えてみましょう。これ、紳士靴の場合は大まかには3種類に分けられます。シンプルに見せるかそれとも機能最重視で行くかは、靴自体の性格で決められることが多いようです。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

双方位防御態勢!

アローヘッド(シェブロン)

こちらは「アローヘッド」とか「シェブロン」と呼ばれる形状です。レザーソール仕様のトリッカーズのトップリフトには、これが付くのがお約束です。見た目はちょっとゴツいですが、内くるぶし側のかかとの滑りが結構防げるので、もっと普及すべき意匠ではあります

健常な足の持ち主の場合は日常的な歩行の際、大抵の場合かかとの外くるぶし側後端から着地してゆくので、ゴムで補強するのも原則そちら側のみであっても大した問題は発生しません。しかし多少荒れた路面を歩くような場合は、読者の皆さんもご経験があるかと思いますが、通常とは異なる足運びが求められる場合も多く、内くるぶし側の補強もあった方が何かと助かりますよね。これを考慮したゴム形状が、上のようなV字状のものです。

人気のあるところでは、トリッカーズ(Tricker’s)のカントリーシューズでソールがオールレザーの場合、ヒールのトップリフトは大抵この仕様です。弓矢の先端のようにも見えるためか「アローヘッド(Arrowhead)」とか、形状が紋章や軍や警察の階級章に似ているからなのか「シェブロン(Chevron・ただし本来のものとは山の上下方向が逆)」などの愛称も用いられるようです。

実用性に非常に富んだ意匠なので、ビジネスシューズの仕様としてももっと広まってもいいような気がしますが……。とは言え、前回ご紹介したジョン・ロブ(パリ)のトップリフトは、この仕様と自らのロゴとを上手く掛け合わせたものとも言えますね。

流石にこれは最強ですが……

メタル製のもの

ジェイエムウエストンの一部の靴には、トップリフトにゴムではなくてメタルの補強が入ります。耐久性はダントツ! ただし、慣れないとザラツキや重さが気になり、大理石の道では「釘」と同様に滑りやすいのが悔しい。やはり土の道で履いてあげたい仕様です

耐久性を最優先に考えると、この部分にゴムではなくて金属を用いるという選択肢も、当然出てまいります。例えばフランスのメーカー・ジェイエムウエストン(J.M.WESTON)ものですと、一般的なラインはシンプルなものを用いていますが、トリプルソール付きのフルブローグやノルウィージャン製法のUチップのようなカントリーユースを起源とするものについては、ここに未だに敢えて金属を使っています。いずれのつま先の最先端もこれと似た金属チップで補強されているので、前後方向の防御は完璧!

とは言え金属ですので、土の道であるならば兎も角として、一般的な舗装された道での歩行には「重さ」が結構こたえてしまうのも事実です。そして慣れないと「滑り」のリスクも伴い、ちょっとした坂道でもスリップしないよう難儀することもあります。まあ、もともとこれらは体格の良い方がガンガン野山で酷使するのを想定した靴ですので、その種の活用が出来ずに文句を付けるのは、全くのお門違いとも言えます。

【関連サイト・メンズシューズ基礎徹底講座・靴の「底」について深く考えてみる】
その1
その2
その3
その4
その5
その6
その7
その8
その9
ヒール その1
ヒール その2
ヒール その3
ヒール その4

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