何気ないけど、熟慮されるべきエリア!

前回からまたまた時間が経ってしまいましたが、目下「メンズシューズ基礎徹底講座」では紳士靴に付くヒールについて様々な考察をしております。前回は「高さ」について考えましたが、この領域に関しての紳士靴と婦人靴のバリエーションの差、更には意識の差が激しいことに初めて気付かれ方も、結構いるのでは? 流行や靴の種類が変わっても、紳士靴の場合にはヒールの高さが必要十分な1インチ(約2.54cm)近辺に納まってしまうのは、履く本人は無意識ながらも、男性が靴では装飾性以上に機能性を重視している証拠なのかもしれません。
紳士靴の一般的なトップリフト

紳士靴のヒールのトップリフトで圧倒的多数を誇るのが、この形状です。今日の使用環境に求められるものを、必要十分に満たしているからでしょう。近年はここをちょっと小さ目になるようにヒール全体を纏める傾向にあるようです

今回はヒールと地面との接点である「トップリフト(トップピース)」の形状について考えてみましょう。体重がダイレクトに乗り掛かる靴の構造上極めて肝心なエリアであり、一見目立たないながらも文字通り作り手やメーカーの「バランス感覚」が正直に表れてしまうのがここ。かつての誂え靴の美意識に近付けたいとの思いからか、特にドレスシューズの領域では既製靴でもこの部分を従来より小さ目に仕上げる紳士靴が近年は目立つものの、本来ならば用途や求められる機能によって大きさや形が変化するのが合理なパーツでもあります。

とは言え紳士靴の場合、大抵のものには上の写真のような「外くるぶし側と内くるぶし側でほぼ対称のU字型をなし、前部に軽く『刳り』の入っているもの」が付いているはずです。この形が
・体重を全面でしっかり受け止め、効率良く分散させる。
・足の第一のアーチ(いわゆる「土踏まず」)と第三のアーチ(外くるぶし側のアーチ)を軽く下支えする。
・歩行時の「蹴り出し」を邪魔しない。
など、機能的に万能だからだと思われます。要は一番安定性と使い勝手に優れ、汎用性が高い訳です。
主に日本の高級紳士靴に見られる仕上げ

銀座ヨシノヤの九分仕立て紳士靴等に見られる、内くるぶし側の前端を軽く面取りした意匠です。ボトムズの裾を引っかき傷から守る一工夫で、仕上げの最後の最後にまで気を抜かない日本の職人さんの心意気を感じさせてくれます

こちらの写真のようにこの形状をベースに内くるぶし側の先端を僅かに面取りしているものも、特に国産の手の込んだものに多く見受けられます。ここの「角」をそのままにして置くと、歩きグセによっては穿いているボトムズの裾部をそこに引っかけてしまい、傷つけたり破いたりする場合も少なからずあるので、面取りによってそのリスクを極小化している訳です。海外のものでは誂え靴であっても殆ど見ない意匠ですが、この種の「最後のひと手間」を惜しまないのがやっぱり日本の作り手の得意技!


で、この形でないものは?? 代表例は次のページで!