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靴の「底」について深く考えてみる ヒールその3(2ページ目)

前回からまたまた遠のいてしまいましたが、目下ヒールのことをあれこれと考察している「メンズシューズ基礎徹底講座」。今回はトップリフトの形についての考察です。紳士靴はこの部分もほぼ似たようなものに集約されるのですが、中には用途目的に応じた変化球も存在します。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

医学的見地で作られたトーマスヒール!

トーマスヒールの一種と言えるフットバランスヒール

オールデンのモディファイドラストのヒールとしてお馴染みのフットバランスヒールは、所謂「トーマスヒール」の一種と申せます。この形状、イギリスのお医者さんが考案したものですが、今やアメリカの靴で圧倒的に多く見るような……

紳士靴のトップリフトで前ページのような形状ではないものと言えば、アメリカ靴特にオールデン(Alden)が大好きな方ならピンと来るのでは? そう、ここのモディファイドラストを採用した靴に付けられているフットバランスヒールです。これは靴医学の世界では「トーマスヒール(Thomas Heel)」と呼ばれているものの一種で、その名は19世紀末にこのような形状を考案したイギリスの外科医に因んでいます。

足の第一のアーチ=土踏まずのサポートをより確実に行うべく、通常のものに比べて内くるぶし側を意図的に前方に張り出させているのが最大の特徴! もともとは足が成長途中にある幼児や足に障害を持つ人の為に考案されたものなので、張り出す長さも状況や症状により変化させるのが本来の用い方。ですので、状況によっては通常の形状のものの方が快適に履けるケースも多々あるのですが、前述したフットバランスヒールはそれほど激しい張り出しにはなっていないので、我が国では純粋に医学的と言うよりはファッション的な要素も加味された意匠として受け入れられているようです。

『刳り』の入らないものは乗馬由来!

いわゆる「ライディングヒール」のトップリフト

前部に刳りを入れずに直線的に仕上げたヒールは、今日ではむしろ婦人靴のヒールで暫し見掛けます。もともとは乗馬の際に足を鐙に固定し易くするための意匠で、今日では婦人靴にしか付けられていない装飾的なヒールの起源を思い出させてくれます

また、ごく一部の紳士靴、特にブーツ系のものに見られるのが、この写真のように前部に「刳り」が入らずスパッと直線裁ちされているトップリフトです。馬に乗る際に用いる「鐙(あぶみ)」に足を固定し易くし、グラ付きを防ぐための一工夫がどうやらこの意匠の起源のようで、実際に乗馬ブーツの世界では、ブリティッシュであれウェスタンであれ今日でもこれが標準仕様! 因みにこの種のブーツは、歩行以上に鐙への固定重視の為、ヒールの高さも4~5cmと今日の紳士靴としては例外的に高目に設定する傾向にあるのも特徴です。

この形状、紳士靴でこそ現在はかなり限定されたものになってしまいまいましたが、婦人靴のトップリフトでは結構な割合で見ることができます。今日の婦人靴に見られる数多くのヒールのほぼ全てが実は紳士靴起源であること、そしてかつては紳士靴のヒールの進化と乗馬には極めて密接な関連が有ったことを考慮すると、これは別段不思議なことではないのかもしれません。なお、最近ではゴムやポリウレタンを原料とした、ソールと一体成型されたヒールのトップリフトでもこの形状が結構見受けられますが、それはあくまで成型上の制約のためであり、上記とは異なる理由ですのでご理解いただければと思います。


【関連サイト・メンズシューズ基礎徹底講座・靴の「底」について深く考えてみる】

その1
その2
その3
その4
その5
その6
その7
その8
その9
ヒール その1
ヒール その2

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