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ジョッパーブーツとは?乗馬しなくても履きこなしたいメンズブーツ

今回はジョッパーブーツというメンズブーツをとりあげます。ジョッパー? ジョドパー…… など日本では色々と表記されるブーツですが、グルグル巻かれるストラップの存在感が何とも魅力的。履くときは「乗馬」をイメージさせるコーデで着こなしたいですね。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

ジョッパーブーツはシンプル、しかし曖昧模糊!

ジョッパーブーツとは?
アメリカントラッドの雄・ブルックスブラザーズがその商標権を有する“Peal & Co.”の名で、イギリスのアルフレッド・サージェントに作らせたスエードのジョッパーブーツです。端正な顔立ちながら悪路に強いダイナイトソールが付くので、お天気が悪くてもでもガンガン履ける重宝な一足です。
今回はくるぶし周りをグルッと覆うストラップが特徴の、ジョッパーブーツを採り上げます。このブーツ、チャッカブーツはビジネスでも使える? メンズシューズ履きこなし術のチャッカブーツ・ジョージブーツとは異なる意味で、名称の表記やスタイルの定義が曖昧模糊としているのが実情でして、まあ、まずはその辺りを整理しつつ話を進めてまいりましょうか。

ジョッパーブーツ(Jodhpur Boots)とは、ファッションの世界では、足首・くるぶし・かかとに交叉上に巻きつけたストラップを外くるぶしにあるバックルで固定させるショート丈のブーツのことを指します。この“Jodhpur”なる言葉ですが、インド北西部にある都市の名でして、上記のスペルはかつてそこを植民地支配していたイギリス人が、現地の方の発音を基にある意味勝手にあてはめたもの。なので、それを日本語に再変換すると、当然ながら今回用いる「ジョッパー」だけでなく「ジョドパー」「ジョドプァー」「ジョドファー」など、同じものを示していながらも表記は様々になってしまっています。

このブーツにその“Jodhpur”なる地名が付いた所以は、植民地支配時代にそこに駐留していたイギリスの陸軍武官が、現地の人々が愛用していた白の綿ズボンからヒントを得て騎馬部隊用に開発した乗馬用の長ズボン、そう、今日「ジョッパーズ(Jodhpurs)」と呼ばれる上腿部は太く下腿部が極端に細いトラウザーズの下に履くブーツとして登場したものだから、と言う説が有力です。ただこれも、騎馬部隊用ではなく彼らが休日に楽しむポロ競技用が起源だとか(ってそれって前回紹介したチャッカブーツじゃないのか?)、その他もろもろの説があるのですが、19世紀の末にこの“Jodhpur”なる地で生まれたものであることは共通で間違いないようです。乗馬用からカジュアルな装いへと守備範囲を広げたのは、1930年代あたりからだと思われます。

上の文で「ファッションの世界では」と書きましたが、起源である乗馬の世界では、今日「ジョッパーブーツ」と言えばむしろ、サイドゴアブーツ(Side Gore Boots)を指す場合が多いようです(サイドゴアブーツについては次回お話しする予定)。馬に乗る際「ジョッパーズの下に履く・履けるブーツ」である点では、確かに両者は共通ですので、どちらがより本格的とか本物とか言うものではないようです。ただ、全く異なるスタイルのブーツが同じ名称で呼ばれる錯綜状態であることは事実ですので、例えばいずれかをお買い求めの際などには、ちょっと注意を払ったほうが宜しいかと思います。
 
<目次>
 

ジョッパーブーツの特徴とは? 「どう巻くか?」が肝心!

ストラップ&バックル
ジョッパーブーツの最も目立つ個所、それがこのストラップです。これをどう巻くか、そしてどんなバックルでどう留めるかが、このブーツの顔立ちを決めます。もちろん足を密着させる本来の役割も忘れてはいけません。
ジョッパーブーツの特徴と申せば、何と言ってもくるぶし周りをグルッと覆うレザーストラップでしょう。この太さやこれを留めるバックルの色や形状が、靴の表情に大きな影響を与えるのは、以前お話ししたモンクストラップシューズと同じ。激しい乗馬運動では切れてしまう危険が遥かに高い一般的な靴紐の代わりに、ブーツを足首にしっかりホールドさせる、機能的に極めて重要な役割ももちろん担っています。

このレザーストラップですが、実は巻き方が色々と存在することはあまり知られていません。言葉で説明するのは難しいのですが、大別すると、以下の2通りに分けられます。
◎ 外巻き:ストラップが、外くるぶし→かかと→内くるぶし→甲→外くるぶしと回り、それが「内くるぶし→かかと→外くるぶしと回る別のストラップの先端に付いたバックル」と外くるぶしで固定されます。ストラップを後方に引っ張ってバックルに収めます。
◎ 内巻き:ストラップが、内くるぶし→かかと→外くるぶし→甲→内くるぶし→かかと→外くるぶしと回り、それが「外くるぶしに直接付けられたバックル」で固定されます。ストラップを前方に引っ張ってバックルに収めます。

たいていの場合は前者、つまり「外巻き」ですが、ジョン・ロブ・パリの既製靴や、最近ではスペインのカルミナのジョッパーブーツには「内巻き」が採用されています。個人的にはストラップの絶対数が少ない分、後者の方が僅かながら清楚な印象が濃い感がありますが、まあ、機能面では大して変わりません。お好きな方を選んでいただいて全く構いませんよ。
 

ジョッパーブーツの細かい個所にも確信犯の工夫!

くるぶしの下
くるぶしの下がどう縫われているか? これはジョッパーブーツ購入の際の文字通り隠れたお楽しみ! 脱ぎ履きしやすく強度もしっかり出て、しかも革にダメージを与えにくい工夫が様々見られます。
また、ジョッパーブーツのもう一つの特徴は、その使用特性上、脱げにくく小石や埃が入らないよう装用時に履き口が狭く閉じるよう設計されている点です。外くるぶし側・内くるぶし側共に、トップラインからくるぶしの下部あたりまではヴァンプ部とクウォーター部が直接縫い込まれず、重なった2枚の革をガバッと広げられるので、脱ぎ履きの際には本来さほど支障は出ない、はずです。が、ちょっと横着してストラップを十分開放しないままこのブーツを履こうとすると…… その下の部分、つまりくるぶしの下部からソールにかけて縫製されている部分の糸が、プツッと切れてしまうことが、間々あるのです。

足をブーツの中に入れようとする時の衝撃が、その部分に瞬間的に強くなってしまうゆえにその種のトラブルが起こるのですが、ファッションではなく本格的な乗馬用ジョッパーブーツを作り慣れているメーカーのものほど、実はこの部分が案外甘く縫われている、つまり糸が切れ易くできているんですよ。もちろんそれは欠陥でも何でもなくて、明らかな確信犯! 仮にそこが必要以上に固く縫われていると、その種の強い衝撃が加わった際に、糸ではなくアッパーの革の方に亀裂が生じ、ブーツとしての機能に致命的なダメージを与えてしまうからです。

糸は切れても縫い直しさえすれば復旧はほぼ可能ですが、革の亀裂は一度起こると修復不可能。枝葉は切り捨てても幹は守り抜く作戦なわけです。もちろん、なるべくこの部分の縫い糸が切れないように、各メーカーとも「縫いの形状」は様々な工夫が施されていまして、それがジョッパーブーツの個性を演出するのに、一役も二役も買っているのです。
 

「乗馬」をイメージできるものと合わせたコーデで!

スラントポケットジャケット&マッキントッシュと
乗馬出身のジョッパーブーツですから、スラントポケットが付いたジャケットや、マッキントッシュのベルテッドロングコートなど、「馬」絡みの服とは当然ながらよく似合います。
何せグルグル回るストラップとそれを押さえるバックルの印象が強烈なブーツですから、ステッチングやブローギング、それにつま先のメダリオンなどの他の装飾はかえって邪魔になってしまい、通常はプレーントウスタイルのシンプルなものがほとんどです。それゆえ一見手強そうに見えますが、慣れてしまえば服の合わせは殊のほか簡単! ブーツ自体の色や素材にもよりますが、基本的にはカジュアルシューズではありながら、上手に扱えばダークスーツの下にだって身に着けることができてしまいます。

中でもお勧めなのが、ストラップが馬具を想起させることもあり、やはり起源である「乗馬」がイメージできる服と一緒に合わせることでしょう。さすがにジョッパーズを普段使いされる方はいらっしゃらないでしょうが、例えばアメリカで一般的な労働者のみならずカウボーイにも愛用されたジーンズとは、馬の乗り方自体は大分異なるものの、似合わないはずないのです。またジャケットなどで、腰ポケットが斜めに付いている乗馬服起源の「スラントポケット」が付いたものとの相性も、悪くないに決まっています。

その他、乗馬時の雨を凌ぐ際に用いることが多かった、マッキントッシュに代表されるゴム引きのコートなどの下に履いても、互いにその存在感が引き立ってまいります。ただ、昨今の細身過ぎて着丈の短いもの(ピタピタだと通気性が余計に無くなってしまうこと、そろそろ気づいてほしいなぁ……)だと、全身のバランスがちょっと崩れてしまうかな? 流行と無縁のせいか今日ではほとんど売られていませんが、同じマッキントッシュでもウェストをベルトで締め上げることでAラインがフワッと出せる、膝下15cm位のロング丈のやつとかと合わせると、特に初冬の落ち着いたカジュアルとしては雰囲気満点です。

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