フランスのチーズ
「1つの村に1つのチーズ」といわれるフランスには、500種近いチーズがあるといわれます。気候風土の違いがバラエティ豊かなチーズを育んできました。フランスのチーズの品質を保証するものに、AOC(アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ/原産地統制名称制度)があります。製造方法やエリアを厳密に定め、その土地オリジナルであることを示すもので、チーズのほかにワインなどにも与えられています。ただ、チーズの表記に関しては、今後はAOP(アペラシン・ドリジーヌ・プロテジェ/保護指定原産地表示)に統一され、AOCはなくなります。AOPは2008年にできたEU共通の制度で、英語ではPOD(Protective Denomination of Origin)。すでに46種中45種のAOCチーズがAOPとして認められています。数え切れないほどあるフランスチーズのなかから、とくに有名なものをざっと紹介していきましょう。
■カマンベール
まず、フランスを代表する、そしていまや世界中で人気のカマンベールはノルマンディー地方が本家。カマンベール村の農婦マリー・アレルが1791年に考案したのもので、「カマンベール・ド・ノルマンディ」が正式名。フランスをはじめ、世界各地で作られている他のカマンベールとは区別されています。熟成が進むにつれてクリーミーな食感になりますが、それほど軟らかくない状態を好む地元の人も多いようです。
■シェーヴル
フランス西部のロワール地方といえば、ヤギのミルクを使ったチーズ、シェーヴルの名産地。ピラミッドの頂点を切り取ったような形の「ヴァランセ」をはじめ、有名チーズが目白押しです。そのまま食べるのはもちろんく、パンにのせて焼いてからサラダに添える「シェーヴルサラダ」など料理にも使われます。
■エポワス・ド・ブルゴーニュ
ブルゴーニュ地方生まれの「エポワス・ド・ブルゴーニュ」は、表面を塩水とブランデーで洗いながら作るウォッシュタイプチーズの代表格。16世紀に修道士たちが地元のブランデーでチーズを洗うことを思いついたというのは、ワイン名産地ならではのエピソードですね。シャンパーヌ地方では、シャンパンとも相性抜群の白カビタイプのチーズ「シャウルス」が有名です。
■コンテ
東部のフランシュ・コンテ地方も名だたるチーズの輩出エリア。ジュラ山地では800年以上前から酪農家たちの共同運営による「フリュイティエール」という独自のシステムでチーズ作りをしており、「コンテ」と呼ばれる大型チーズはフランス人のあいだで最も人気のあるチーズのひとつです。
■ボーフォール
アルプスの山々をのぞむローヌ・アルプ地方でも冬の保存食として古くからチーズ作りが盛んでした。かつてこの地の農民が、税金逃れのために役人が来たあと2回目に絞った乳で作ったという「ルブロション・ド・サヴォワ」、チーズのプリンスとの異名も持つハードタイプの「ボーフォール」などがよく知られています。
■ロックフォール
日本では世界3大ブルーチーズとしてもおなじみの「ロックフォール」はフランス南部のミディ・ピレネー地方のチーズ。なんでも2,000年ほど前に羊飼いの少年が昼食用のチーズを洞窟に置き忘れたことから偶然生まれたのだとか。ソーテルヌなど甘口のデザートワインとの相性が抜群です。
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