法人企業と個人企業の違いとは?
個人企業と法人企業の違いとは!メリットとデメリット
例えば、事業を行う上で借り入れをする場合、個人事業の場合は、事業主本人の借り入れです。仮に事業に失敗して返済できなくなったら、事業主個人の財産を売ってでも返さなくてはなりません。一方、法人の場合は個人とは別の法人格のため、あくまで法人の借り入れとなり、法人の財産の範囲内で返済します。経営者個人の財産から返済する必要はありません(ただし、経営者本人が借り入れに対して個人保証をしていた場合を除きます)。
個人事業主と比較した法人事業者のメリット
法人にすれば多くのメリットを享受できる
法人は社会的な信用度が高く、個人に比べて取引相手からの信頼も得やすいといえます。個人の場合、法人と比べて社会的な信用度が低く、特に大手企業などとの取引では、法人でない限り取引口座を開いてもらえない、といった場合があります。
■金融機関からの融資を受けやすい
個人事業の場合、金融機関から借り入れをしようとしても第三者保証人を要求されるなど、なかなか融資を受けることが難しいのが現状です。それに比べ、法人には広く融資の門戸が開かれています。法人の場合は資本金という一定の資力が登記簿謄本上で確認できたり、事業とプライベートの資産の区別も明確。個人に比べれば厳格な経理処理が求められるので、金融機関から見た時の一般的な信用度は高くなります。
■経営者に給与を支払える
個人事業主は自分に給料を払うことはできませんが、法人は経営者に役員報酬を支払い経費にすることができるため節税になります。役員報酬を支払った場合、経営者の所得税や住民税の計算上、給与所得控除というみなしの必要経費も差し引くことができ、そこでも節税が可能になります。
■家族に給与を支払うことができる
法人の場合、家族を役員として事業の手伝いをしてもらい、役員報酬を支払うことが可能です。これにより所得分散をして経営者の所得税、住民税を節税することができます。個人事業主の場合でも、家族に対して一定の給料を支払うことは可能ですが、青色申告をして事前に税務署に届け出る必要があるなど、多くの制約があります。
■経営者の生命保険料を会社の経費にできる
個人事業主が生命保険に加入した場合、一般、介護、個人年金の各生命保険料控除を受けることができますが、限度額が低く、節税効果は限られています。法人の場合、法人が契約者、経営者が被保険者、法人が保険金受取人という体制で一定種類の生命保険に加入すれば、法人が支払った保険料のうち一定割合を会社の経費にできます。基本的に個人事業主の生命保険料控除のような上限金額もありません。
■役員社宅を借りることができる
法人の場合、役員の居住用自宅を会社名義で借りることによって家賃の約5割程度を社宅賃料として経費にすることが可能です。個人事業の場合、このようなことはできません。
■優秀な人材を集めやすい
個人事業に比べれば、法人の方が人材採用の際に有利です。個人事業への就職というとイメージが悪いので、なかなか優秀な人材を集めることが難しいですが、法人であればこの点が払拭されます。
■赤字の繰越控除ができる
個人事業の場合、青色申告であれば赤字は3年間繰り越し可能なだけ(欠損金の繰越控除)ですが、法人の場合、赤字は9年間繰り越すことが可能です。もし大幅な赤字を計上するような場面があったとき、税務的に法人の方が圧倒的に有利です。
■個人財産を守ることができる
もし事業に失敗した場合、個人事業の場合は個人の財産を売却してでも債務を返済する必要があります。これに対し、法人であれば債務の支払義務があるのは法人資産の範囲内で、個人財産にまで支払義務が及ぶことはありません。
法人事業者のデメリット
法人にするとお金と手間が増えるのがデメリット
個人事業の場合、定款作成も登記も不要。費用もあまりかからずに事業を始めることができます。法人の場合は定款作成、定款認証、設立登記などが必要です。費用はおおよそ25万~30万円ほどかかります。
■会計処理・税務処理が難しい
個人事業の場合、毎年3月15日までに所得税の確定申告をしなければなりません。ただ、個人事業の確定申告であれば、自分で本を買ってきてパソコンの会計ソフトを使えば何とかで自分で処理できるレベルです。法人の場合、個人事業に比べれば厳密な会計処理が必要で、法人の決算、税務申告は難解なので、税理士など税務会計のプロでないとまず無理。法人の場合、会計事務所のサポートが必須になり、その分コストがかかります。
■社会保険料コストがかかる
法人の場合、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の強制適用事業所になり、社会保険に必ず加入する必要があります。健康保険料、厚生年金保険料は約半分が会社負担、約半分が役員従業員の個人負担です。このように社会保険料負担は法人のデメリットではありますが、個人の国民年金とに比べると厚生年金は将来の保障も手厚く、コストに見合った保障を手にできると考えればメリットという面もあるでしょう。
■交際費に税務上の制限がある
法人の場合、期末資本金と年間の交際費の金額により損金不算入(税金の計算上、経費に入れることができない)になる場合があります。個人事業は業務遂行上必要なものについてはそのまま必要経費として計上することが可能で、法人のような制限はありません。
個人事業主のメリット
■簡単にはじめられる個人事業主として事業を行うメリットは、運営の手間とコストがかからず、すぐにはじめられること。定款作成も登記も不要で、税務署に開業届などを提出すれば、すぐに事業をはじめられます。
■経理・税務の負担が軽い
経理・税務などの運営も簡単で、コストがかからないのもメリットです。本と会計ソフトを買ってきて、1年に1回、確定申告の時期に頑張れば税理士に依頼しなくても税務申告をこなすことができるでしょう。
法人設立か、個人事業主かを迷ったら……
以上のように法人設立と個人事業とでは、それぞれメリット、デメリットがあります。世間でよくいわれる判断基準としては、- 個人事業者で2年間消費税の免税を最大限受けてから法人化し、さらに2年間免税を受ければ4年間の免税が可能になり節税できる
- 所得○○万円が損益分岐点で、それ以上だと法人設立した方が節税になる(参考『利益がいくら出たら法人化したほうがいいの!? 』)
というものです。ガイド自身も個人事業が良いか、法人設立が良いかについての判断基準を聞かれることが多いですが、その時いつもお伝えするのは、「節税だけではなく、総合的な判断が必要ですよ」ということ。事業は多少の税金の損得だけの問題ではないのです。
世間からの信用も必要で、ある程度の規模で事業を行いたい場合は、節税のメリットを享受するよりも、法人設立して事業そのものを大きく伸ばした方が良いでしょう。初期は機動性を重視して個人事業主として開業し、のちに事業が大きくなってきたら法人化する=いわゆる法人成りを考える可能性もあるでしょう。
起業への覚悟や意気込みが現れるところでもあります。ガイドも相談者から事情を聞いて、最終的に法人設立することをお薦めするケースが多いです。
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