起業するときに個人事業でいくのか、最初から会社を設立するか。必ず受ける質問のひとつです。また、まずは個人事業で起業して、ある時期がきたら法人化するという計画を立てる人もいます。そこで、必ず疑問に思うのは、利益がいくらくらい出たら法人化したほうが有利なのかということ。ウェブの記事を見ると、このことに対して、いろんな人がいろんな見解を書いています。そこで、起業コンサルタント(R)、税理士としての私なりの見解を書いてみます。
 

会社設立と個人事業の基本的な違い

会社設立と個人事業の基本的な違いを押さえよう

会社設立と個人事業の基本的な違いを押さえよう

まずは会社設立する場合と個人事業でいく場合との、基本的な違いを押さえておきましょう。表をご覧ください。個人事業でいく場合は、会社設立費用がかからない、会計や税務申告が簡単にできるなど、手間や費用を掛けずに起業できることがメリットです。

その一方で、社会的な信用がやや低い、節税策が限定されているというデメリットがある他に、所得税の累進課税制度により、稼げば稼ぐほど税率がどんどん上がっていってしまうという点が大きな特徴です。

税率と利益の関係

所得税は累進課税。稼げば稼ぐほど税率は上がっていく

所得税は累進課税。稼げば稼ぐほど税率は上がっていく

そこで、疑問となるのが、いくら以上の利益が出るようなら、法人化した方が税率的に有利になるかという点です。

所得税は、利益(所得)が上がれば上がるほど税率が上がる仕組みになっています。表をご覧ください。5%~45%まで段階的に上がっていますよね。それに加え、復興特別所得税が2.1%、住民税が10%、個人事業ではさらに業種によって事業税が3%~5%かかります。

一方では、現状の法人税などの実効税率は資本金1億円以下の中小法人では、所得400万円以下の部分で約21.4%、400万円超800万円以下の部分で約23.2%、800万円超で約36.0%です。

この両者を完全に税率だけで、単純比較すると、所得(利益)が330万円のラインを超えてくると、法人化したほうが有利ということになります。

※所得税の税率は平成27年1月から適用されるものを掲載

社会保険のこと

法人化すれば、社会保険料の負担も発生する

法人化すれば、社会保険料の負担も発生する

税率だけで見ると、意外と法人化した方が有利になるバーが低いと感じた方も多いかと思います。ただ、税率だけで比較できるほど、ことは単純ではありません。例えば、法人化すれば、義務となってくるのが、役員や従業員などの社会保険への加入。役員報酬や給料の約13~14%の会社負担が生じます。

これは事業として考えたときには、大変な負担増になります。特に、ある程度の従業員数になる場合は、法人化したときの社会保険料分のコスト増を意識しておいてください。なお、役員報酬については、設定金額によっては、かなり低めに抑えることも可能です。

その他の費用のこと

その他、法人化する際の会社設立費用として、例えば株式会社であれば、約25万円の設立費用の実費がかかります。また、法人化した場合は、税務申告が複雑になるため、個人事業のように、経理は自分でやって手軽に確定申告するといったことはできないでしょう。税理士に顧問に入ってもらうのは必須と考えたほうが良いです。このコストも考えておく必要があります。

総合的に考えるとどうなの?

ここまでお話しすると、税率だけの単純比較では判断できないということがお分かりいただけたかと思います。個人的な見解としては、利益500万円~700万円くらいであれば、法人化した方が有利となるケースが多いですが、要はケースバイケースなのです。素人判断せず、現状の利益の数字を把握したうえで、税理士に相談してみることをおすすめします。


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