複数のストーリーを持った将来計画
残念ながら家族の変化は想定し切れない部分が多くあります。しかし変化させていくストーリーを複数考えておくことで、より多様な変化に対応できるようになります。この融合二世帯は、独立二世帯や共用二世帯に発展させていくこともリフォーム次第でできるように考えられています。お父様の空間はサブキッチンやトイレ、洗濯機置場を設けてあるので、ひと通りの生活ができ、ひとりでくつろぐ際にお茶を飲んだり、ちょっとした料理をつくることができます。この自立性の高さは、万が一介護が必要になり、訪問介護サービスをお願いする場合にも専用空間内だけで対応できるというメリットとなります。水回り設備を一式備えていますので、北側に外部への玄関ドアを設けるリフォームをすれば、独立した1住戸にも変更することが可能です。つまり、単身で独立二世帯としても住めるように考えられ、またこのスペースを貸すこともできるようになっています。
1階(1)の部分を外部への玄関ドアにリフォームすることで、青エリアは独立した住戸となり、賃貸ユースや子世帯子供が成長して利用することも可能に |
また全く別のストーリーとして、1階、2階に分かれて住む玄関共用の二世帯とするための備えもされています。2階のウォークインクロゼットには、将来キッチンを設置できるような配管準備がなされ、寝室と合わせて将来LDKにも可変できるように考えられています。これにより、玄関以外が1階・2階に分かれた共用二世帯も可能となります。その場合の2階のプランは例えば以下のようになるでしょう。
2階ピンク部分に「キッチン配管準備」あり。キッチンを追加すれば、上下階の共用二世帯に変更可能に。 |
このように、現在の生活スタイルに配慮するだけでなく様々なケースを想定した準備をすることで、実に幅広い将来対応を可能にすることができました。家族の変化は想定できない部分も多いので、このように複数のストーリーを持った将来計画を考えておくと、より安心できるでしょう。
今回の二世帯住宅は、お客様から「サブキッチン」や「配管準備」の要望が具体的に出た訳ではなく、設計者からの提案とともに検討されたプランでした。このように、住まい手がいつまでも快適な生活を送るためには、住まい手の現状や要望を反映するだけでは、良い住宅とはいえません。将来起こりうる変化にフレキシブルに対応できてこそ、良い住宅だと言えるのです。今回の実例は、そんな将来対応が、随所に練られていることが実感頂けたのではないでしょうか。
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