建物は東京都区内に建つ3階建てで、駅からも近い便利なロケーションにあります。1階に親世帯LD、3階に子世帯LDがあり、2階には両世帯の個室群があります。玄関は世帯別で1階の玄関ポーチに2つ並んでおり、玄関ホール同士は建具を開ければ行き来できる内部行き来型の独立二世帯です。
四世代同居を始めた経緯
以前の家は普通の単世帯住宅でしたが、祖母は一人になった時点で息子の結婚前から同居しており、以前の家でも三世代5人で暮らしていました。息子が独立して東京を離れ、結婚して東京に戻ってきたのを機に、ちょうど初孫が生まれるタイミングと同時に築25年の木造住宅を2002年に二世帯住宅に建替えました。 従前から三世代同居を経験していた子世帯の夫にとって、長男としていつかは親と同居すると自然に考えていたようです。以前の家は雨漏りなどで傷みがひどく、広い割にはデッドスペースが多く使いにくかったのと、何よりも阪神大震災の直後から神戸で勤務していた父にとっては地震が不安でした。そこで、阪神大震災での耐震性に実績のある3階建てのヘーベルハウス、ということになりました。親世帯の中だけでも三世代が暮らす
建て替え案は3度目の家造りとなる親世帯の母の提案で、これまでの同居の経験から、生活が完全に分けられる玄関が2つある独立二世帯とすることが基本方針でした。親世帯は1階で基本的な生活空間がまとまるように考えられており、1階のLDKが両世帯で集まるときのスペースにもなっています。1階の廊下はカーペット敷きとなっており、幅も広く手すりが設置され、現在90代となった祖母に配慮したプランになっています。親世帯夫婦の寝室、娘の個室は共に2階の南半分に設けられ、それぞれ居場所として住まい手の個性がよく表れ、プライバシーの守られた空間になっています。
【図2】親世帯のLDK キッチンのカウンターは朝食やおやつを食べるテーブルとしても使われる
【左:図3】親世帯の寝室:母のベッドサイドにはTVや化粧鏡があり、ベッドに座ってお化粧が出来るようになっている 【右:図4】娘の部屋:趣味のドライフラワーで飾られた窓辺
プライバシーに配慮された子世帯
子世帯は3階にLDKと浴室、洗面所や洗濯機があり、さらに個室の1つが同じ3階にとられており、ここが家族が川の字で寝る寝室になっています。このため、食事、こどもの入浴と寝かしつけがすべて3階だけで完結しており、忙しい共働き世帯には使いやすい間取りになっています。夫婦のどちらかが子供と共に寝て、どちらかが夜の洗濯や家事を行う、という分担がなされ、家事の合間の時間が一人でパソコンにむかうことができる時間となっています。周囲は2階建てが中心で屋根越しに遠くまで望め、ほぼ一日中日当たりが得られるため、夜窓際に干しておけば日の出と共に陽が当たり、洗濯物はよく乾くそうです。
子世帯の玄関は1階ですが、昼間不在の共働き世帯では、来訪者の応対をする機会は少なく、以前の住まいでは日常的に3階まで階段を上り下りしていたので高低差は気にならない、とのことでした。階段は親世帯と兼用ではなく、子世帯専用のもので、1→2階への階段は2つあることになります。この階段はただの通路ではなく、ギャラリーのようにいろいろなものを飾る空間になっており、昇り降りの際に目を楽しませてくれます。
【左:図5】子世帯のLDK 家事、孫の遊び、孫が寝た後の自分の時間を過ごす場所としてのPCデスクが置かれている 【右:図6】子世帯の階段室 1階から3階に至る間様々なものがギャラリーのように飾られ飽きることがない
では、次ページでは両世帯の協力関係と間取りの分析について書きます。