孫を中心とした協力関係
【図7】 親世帯のLDKに置かれた孫用の絵本
親世帯のLDKには、帰宅時の手洗い用の踏み台や、絵本、おもちゃなどが置かれていますが、移動しやすいように工夫されています。孫が帰宅時に着ていたもの、持っていたものは世帯間建具を開けて1階の子世帯玄関に置かれ、子世帯で片付けることになっています。
世帯間の行き来は共用のトイレを挟んで2階でも出来るようになっていますが、ここを使って移動するのは孫だけで、大人が使うことは稀です。しかしトイレ前には掃除機が置かれ、トイレと共に両世帯共用で使っています。
【左:図8】 親世帯のキッチンに置かれた孫の手洗い用の踏み台 【右:図9】 2階共用トイレ前の両世帯共用の掃除機
四世代同居のプランを分析する
最後に、このような四世代にわたる家族の暮らしを包む箱として、どのようなプランニングがされているのかを分析してみましょう。個室の数を数えてみると、親世帯が4人で個室が3つ、子世帯4人で個室が3つ、というように、親世帯と子世帯の個室の数が同じで、2×3LDKの構成になっています。両世帯の面積もほぼ同じになりますので、3階建てでは、どこかのフロアを両世帯で分け合うことになります。現状の使われ方では、1階を親世帯、3階を子世帯として、2階を南北に分けて両世帯の個室を2つずつとり、共用のトイレを世帯間に挟んでいます。両世帯ともにLDKと同一フロアに水回りと個室1つを加えて取っているのがポイントで、この個室の使用者にとってLDKのフロアだけで生活を完結できる最小限のセットが揃っています。これが親世帯では高齢となった祖母の生活に必要なものが同一フロアで揃うバリアフリーの生活を、子世帯では共働きの同時平行的な家事を可能にしています。3階は斜線制限の影響で2階より小さくなっており、 56平方メートル(17坪)ほどですが、このくらいの面積がLDKフロアに個室を取れる最小限の目安ではないかと思います。1階の親世帯との間に2階の個室のあるゾーンを挟むため、3階の子世帯はプライバシーが守られやすい構成です。3階LDKで1階玄関というのは、来訪者応対などの際に負担になりやすいのですが、共働きの場合は昼間の在宅機会が少なく問題にはならないようです。
2階の個室は現状両世帯2つずつですが、世帯間の区分位置を図の赤点線の位置に変えれば、どちらかの世帯が個室を3つ使い、4LDKと2LDKに分けることも可能な構成になっています。多世代が暮らす二世帯住宅では、世帯間の人数のバランスがライフステージにより変化し、空き部分を賃貸とする可能性も将来的に考えられますが、このときの必要な広さと部屋数は現在と同じとは限りません。世帯間の仕切り位置の自由度の高さによって、将来の対応が幅広いものになっています。
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以上、今回は4世代が暮らす二世帯住宅の実例をご紹介しました。分離した暮らしの中で、孫共育している様子がリアルに伝わったでしょうか。また、3階建て二世帯の建て方としては、参考になる部分が多いプランだったのではないかと思います。