顧客の不安や心配を払拭するトーク術……営業で使える!
お客さんを安心させるために
「お昼時に行列ができているラーメン屋さんを見つけると、つい自分も並んでしまう」
「高速道路で車を運転しているときに、前の2台が車線変更をすると、つい自分も前の車に合わせて車線変更をしてしまう」
行列ができているラーメン屋がおいしいかどうかは、本当は自分の舌で確かめてみないとわかりません。でもみんなが並んでいると「きっとおいしいに違いない」という心理が働きます。車線変更では、前の車はたいした理由もなく車線を変えただけかもしれません。けれども2台も続けて車線変更をすると、「何かあるのかも?」という心理が働くもの。
このように人は、他者の行動に合わせて自分の行動を決めてしまうという傾向があります。これを社会心理学者のロバート・B・チャルディーニは「社会的証明の原理」と呼んでいます。「社会的証明の原理」は、商品を買うときにも働きます。みんながその商品を購入していることがわかると、つい自分も買いたくなってしまうのです。
この「社会的証明の原理」を営業トークに活用しない手はありません。「みなさんもご購入されていらっしゃいますよ」という一言が、お客さんにとってはものすごく魅力的な言葉に聞こえるからです。そこで今回は、「社会的証明の原理」を活用したトーク術について解説したいと思います。
信頼性と類似性のある情報で、お客さんの心を動かす
チャルディーニによれば、人は自分の判断に確信が持てない場合に、自分と似ている人の行動を真似る傾向にあるといいます。たとえばあなたが普段メガネをかけているとして、メガネ店でお気に入りの商品を見つけたとします。でも「ちょっと自分には派手すぎるかも」という気がして、買うのをためらっています。いわばあなたはチャルディーニが言うところの「自分の判断に確信が持てない」状況にあるわけです。
ところが店員から「お客様のような年代の男性の方にも、今このメガネはとても人気なんですよ」と言われると、あなたはホッとします。「そうか、自分と同じような年代の人がかけているということは、自分がかけても大丈夫なんだな」と思うからです。チャルディーニが言うところの「自分と似ている人の行動を真似る」心理が働いたわけです。これを自分が営業マンの立場になったときに置き換えて考えてみましょう。
商談のときに、お客さんが商品を購入するべきかどうか迷っている様子が、ありありと伝わってきたとします。お客さんは「自分の判断に確信が持てない」状況にあります。
そこで営業マンに求められるのは、「あなたの判断は間違っていませんよ。なぜなら●●だからです」という信頼性の高い情報をお客さんに与えること。そうすることでお客さんに「自分の判断は間違っていないんだ」という確信を持ってもらうのです。しかも、その情報は信頼性が高いだけではなく、お客さんにとって類似性が高い情報であることも大切です。
「自分と同じような課題やニーズを持っている人が、この商品を購入しているんだな。だったら自分が買っても大丈夫だろう」という安心感をお客さんに持ってもらえる情報でなくてはいけないのです。
信頼性の高さと類似性の高さ。「社会的証明の原理」を活用してお客さんの心を動かしたいのなら、この2つを押さえておくことがポイントとなります。
事例は具体的にありありと語ろう
では、お客さんが商品を購入するべきかどうか迷っているときに、具体的にはどのような情報を示せば、お客さんの心を動かすことができるのでしょうか。法人営業の場合に有効なのが、他社事例を挙げることです。「実はこの商品、お客様と同じような組織規模の会社で、数多くご購入いただいておりまして……」と語ることで、お客さんの気持ちを購入へと誘うのです。
法人営業、個人営業ともに使えるのが、「使用者の声」です。「お客様と同じような悩みを抱えている方がこの商品を使用したところ、こんな成果がありました!」という具体例を紹介するのです。
そして3つめが「権威者の声」を活用すること。「▲▲大学との共同研究によって開発しました」とか「デザインが高い評価を受け●●賞を受賞しました」といったトークがこれにあたります。「権威者の声」を活用する場合、お客さんに類似性を感じてもらうことはできませんが、信頼性を高めることができます。
いずれのトークでも大切なのは、できるだけ具体的にありありと語ること。たとえば「使用者の声」を紹介するのなら、ほかのお客さんがその商品を「使用する前」と「使用中」、「使用後」でどのような変化が起きたか、その様子をストーリー化して語れるぐらいにはしておきたいもの。
商談の場面では、お客さんは商品購入の一歩手前まで来ているのに、確信が持てないために、なかなか決断できないというケースが少なくありません。そんなときこそ「社会的証明の原理」を活用して、お客さんの背中を一押ししてあげてください。
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