コーチング/人材育成・組織作り

叱っても絆が深まる、ガツンと言う技術(2ページ目)

上司にとって「聴く」ことが重要視される一方、今も「上司は鬼となれ!」と厳しさを求める声も聞かれます。さて、上司はどうすればいいのでしょう? たとえ叱っても絆が深まるためのポイントを探ります。

宇都出 雅巳

執筆者:宇都出 雅巳

コーチング・マネジメントガイド


怒りを収めるために、叱っていませんか?

部下の力を信じつつ、自分のこだわりは捨て続ける
「部下のため」と上司は思っていても、それが単なる上司のこだわりになってしまい、部下が反発することもあります。

そうならないために、思い出してもらいたいのが、コーチングの基本的な考えの一つ、「主題はクライアントから」(The agenda comes from the client)です。上司が部下をコーチングする状況で考えると、「主題は部下から」、わかりやすく言い換えれば、上司の主題ではなく部下の主題を取り扱うということです。

上司の怒りを収める、上司の目標を達成するといった上司の主題のもとでは、部下はその会話に乗ってきません。自分自身の成長や自分の悔しさをバネにするといった部下自身の主題になって初めて、部下はその会話に心を開いて参加しようとするのです。

上司は誰の主題を話しているのかに注意しながら、部下とのコーチングをすることが必要です。最初は部下の主題を話していても、いつのまにか上司自身の主題の話になったりすることはよくあります。たとえば、部下の話を聞いているうちに、「こいつはこの能力を伸ばすべきだ」と上司が思ってしまい、部下はあまり興味がないのに、その能力を伸ばすにはどうしたらいいかという話ばかりに終始してしまうといった場合です。

上司は部下のために「叱る」ことも時には必要ですが、それが自分の主題になっていないかどうか、叱ったあとの部下の反応に対して好奇心を持ち、絶えずチェックすることが必要です。

徹底的に部下の可能性を信じよう

部下に対してどうかかわったらいいのか悩んだときに、自分自身に問いかけてもらいたのは、何のために部下にかかわろうとしているのか? 何を信じて部下にかかわっているのか? ということ。

コーチングは部下をうまくコントロールするために生まれた手法ではありません。人がもともと本来持っている力を十分に発揮し、よりよく生きるために生まれた手法です。そして、コーチングの基本となっている考えは「クライアントはもともと完全な存在であり、自ら答えを見つける力を持っている」(The client is naturally creative, resourceful and the whole)。これを信じて相手にかかわることによって、相手は勇気付けられるとともに、好奇心を持って質問したり、あえて厳しい言葉を投げることもできるのです。

もし、部下が自分自身が持っている力を信じていなかったり、仕事や人生を諦めているようであれば、部下を叱りましょう。部下本人より相手の力を信じ、たとえ部下自身が諦めていても、上司であるあなたは諦めずに部下を励まし続けましょう。

「こう叱れば、部下のやる気がでる」といったスキルやノウハウはありません。なぜなら、部下はモノではなく人だからです。部下のためを思い、部下の力を信じるところから、必要なことは質問でも、叱ることでもやってみるのです。結果として、二人の絆が深まり、部下の力を引き出しているでしょう。

【参考書籍】
■『Co-Active Coaching』(Laura Whitworth ,Karen Kimsey-House, Henry Kimsey-House, Phillip Sandahl Davies-Black Publishing)

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