出荷量は昨年よりも多く、大騒ぎすることはない
角瓶 700ml/40%/¥1,414 |
角瓶は2007年くらいから角ハイボール人気がじわじわとはじまり、販売数量が2008年約170万ケース(1ケース/700ml×12本換算)だったものが、2009年はさらに30%以上伸びた。今年度も前年比2割~3割増の出荷計画を立てていたが嬉しい誤算で、角ハイ・ブームの勢いはつづき、1月~6月期の売り上げが前年同期比7割増を記録する。
そこで今年度は当初の予定通り昨年比の3割増し、300万ケースくらいを市場にうまく、安定供給できるよう調整しようというものだ。つまり過剰反応して、やたら買い占めたりしなければ飲めなくなるなんてことはない。昔からの角瓶ファン、そしてオールアバウトの読者の皆さんはいままで同様、落ちついて、ゆったりと飲んでいただきたい。
角瓶が角瓶でありつづけるために
知り合いが、「サントリーは80万樽もの貯蔵量があるのだから、調整しなくったって、角瓶くらいつくれるだろう。山崎12年とか響17年とか長期熟成ものが売れ過ぎたならわかるが」と言う。たしかに。だが、そうではないのだ。原酒はあるが、角瓶の香味品質バランス、ブレンド・スペックを崩してまでつくりつづけることはしない、ということだ。
サントリーのブレンダー陣は世界的にみてもとても優秀である。さまざまな個性あふれる貯蔵原酒を駆使すれば角瓶を見事につくりつづけるだろう。だがそれが、いずれは原酒ストックのバランスを崩すことになる。
ブレンダーは10年、20年先を見据えている。個性豊かな原酒がバランスよくストックされているかどうか、それがとても重要だ。偏ってはいけない。長い年月、樽熟成して生まれるウイスキー。いろいろなタイプの香味原酒が過不足なく貯蔵されていなくては未来はないし、安定供給できない。
工業製品ではない。足りないから、ハイつくりましょう、で、すぐには生まれないのだ。ましてや調味料を使って味わいを整えることなどしない。
未来のウイスキー製品、未来の飲み手のために貯蔵原酒のバランスを保つ。そして70年以上のロングセラーをつづける角瓶が角瓶でありつづけるために、スペックを守りつづける。
売れるなら、とにかくつくれ、という世の中にあって、出荷調整は潔く、英断である。だがブレンダーたちは、「当然の判断」と涼しい顔で言うかもしれない。角瓶物語はより高まりながらつづく。
関連記事
秋の味覚、秋刀魚のようなウイスキー自宅に常備したいブレンデッド
春だ!角だ!最強ハイボールタワーだ!
ウイスキーってなんだ?[入門篇]