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ウイスキー&バー/この店の、この一杯

この店の、この一杯。第49回 西宮バー『ザ・タイム』の波長(2ページ目)

穏やかな波長で客をしっかりと包み込むバーがある。西宮は甲陽線苦楽園口駅近くにある『ザ・タイム』は宇座忠男氏の淡々として温かみのある接客でゆるやかに酔いへと誘う。これぞベテランの妙味と納得させられる。

協力:サントリー
達磨 信

執筆者:達磨 信

ウイスキー&バーガイド

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宇座氏のカクテルで気に入っているのはサイドカー。フレンチブランデーの香味とオレンジの酸がほどよく効いた一杯は、朗らかなんだけど、どこか切ない味がある。苦楽園口という駅名にマッチした余韻がある。

ひまわりのような明るさを醸しながら、陽の持つはかなさが伝わってくる。オレンジの微妙な加減だと思うのだが、人生の辛酸を体験したベテランならではの味わいだ。若手にはこういう香味はつくり出せない、というより、味覚の針がそちらへ振れることはないといえる一杯だろう。

人と人の間に酒がある。

宇座氏の人柄もあってか、『ザ・タイム』に集う客は落ち着いた大人が多い。飲まれるウイスキーもオフィシャルのスタンダードな人気銘柄に集中しているようで、やはりシングルモルトの比率が高いようだ。

ボウモア、ザ・マッカラン、グレンモレンジがベスト3だ。
先述したように私の場合、宇座氏のようなバーテンダーに出会うと、ウイスキーがウイスキーであるならば銘柄にあまりこだわらなくなる。

深く熟成したまろやかなものであれば何でもいい。だから『ザ・タイム』で飲んだウイスキーが何だったのか、思い出そうとしても記憶がよみがえらない。よみがえるのは宇座氏とママの笑顔ばかりとなる。

こういう店は数少ない。ほとんどは、あの店ではあれをよく飲むとか、どこか匂いというか香りというものがあって、何となく自分のクセというのがわかる。でもここでは傾向といったものが出ないのだ。

やはりバーはバーテンダーの人柄によるところが大きい。カウンターに立つ人が流す波長によって酔い心地は決まってくる。とくに私の場合、宇座氏に酔っているのだ。
ここでは酒が主役ではない。人と人との間に酒がある。これが本来の姿だと思うのだが、どうだろう。

INDEX『おすすめのバー・西日本』もご覧いただきたい。


Bar THE TIME
兵庫県西宮市石刎町2-2
Tel.0798-70-1623
18:00~1:00 月休
チャージ¥500、ウイスキー¥900~、カクテル¥900~
地図:Yahoo!地図情報


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※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。
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