ひまわりのような明るさを醸しながら、陽の持つはかなさが伝わってくる。オレンジの微妙な加減だと思うのだが、人生の辛酸を体験したベテランならではの味わいだ。若手にはこういう香味はつくり出せない、というより、味覚の針がそちらへ振れることはないといえる一杯だろう。
人と人の間に酒がある。
宇座氏の人柄もあってか、『ザ・タイム』に集う客は落ち着いた大人が多い。飲まれるウイスキーもオフィシャルのスタンダードな人気銘柄に集中しているようで、やはりシングルモルトの比率が高いようだ。ボウモア、ザ・マッカラン、グレンモレンジがベスト3だ。
先述したように私の場合、宇座氏のようなバーテンダーに出会うと、ウイスキーがウイスキーであるならば銘柄にあまりこだわらなくなる。
深く熟成したまろやかなものであれば何でもいい。だから『ザ・タイム』で飲んだウイスキーが何だったのか、思い出そうとしても記憶がよみがえらない。よみがえるのは宇座氏とママの笑顔ばかりとなる。
こういう店は数少ない。ほとんどは、あの店ではあれをよく飲むとか、どこか匂いというか香りというものがあって、何となく自分のクセというのがわかる。でもここでは傾向といったものが出ないのだ。
やはりバーはバーテンダーの人柄によるところが大きい。カウンターに立つ人が流す波長によって酔い心地は決まってくる。とくに私の場合、宇座氏に酔っているのだ。
ここでは酒が主役ではない。人と人との間に酒がある。これが本来の姿だと思うのだが、どうだろう。
INDEX『おすすめのバー・西日本』もご覧いただきたい。
Bar THE TIME
兵庫県西宮市石刎町2-2
Tel.0798-70-1623
18:00~1:00 月休
チャージ¥500、ウイスキー¥900~、カクテル¥900~
地図:Yahoo!地図情報