携帯電話はなくすものじゃない
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「なんか、紛失や盗難に備えて、遠隔操作でデータを削除することができる機種もあるらしいな。まあ、今後はもっとセキュリティ機能の高い携帯電話になっていくんだろうが。とりあえず、なくさなければ問題はないんじゃないか。お前、暗証番号でロックするって機能を使ってなかっただろう」
「あー、携帯電話に自分の暗証番号があることすら知りませんでした。だって、電話はかけて受けられたら、ついでにちょっとメールができればそれでいいんですけどね」
「だが、アドレス帳は重要なデータだろ」
「そうすねぇ。それにメールもヤバイのがあったりするしなー。あー、カメラで撮った写真もいっぱいあるし」
「個人情報は自分のだけじゃなくて、登録した人の分まで問題になってくるからな。自分の友だちや身内にも迷惑がかかるってことだ。今回、オレが電話を受けたように。それにオレもお前も男だったからまだよかったが、これが女性だったら、どうなるのかね。下手するととんでもないことになるよな」
「女だったらかなりヤバイっすよね。暗証番号で自分以外は使えないようにロックしておいたほうがいいですね。まあ、何より携帯はなくさないように気をつけなくちゃいけないってことで。それにしても先輩、『キャンディ』の女の子たちの間で先輩はヒーローってことになってますよ」
「お前、誰からそんなこと聞いたんだよ」
「へへ。こないだ誘っても先輩が来れなかった日に、あの『キャンディ』って店にちょっと行ったんです。そしたら例の喧嘩の話になって。先輩のこと、カッコいいって言ってましたよ。でも、嫁さんがいるっていったら残念がってました」
「なんだよー、何でそんな余計なことを言うんだよ」
「ダメですよ。先輩。奥さんがいるんだから」
「まあな。おまけにガラスのテーブル代を払わなくちゃならないからな。しばらく遊びはお預けだ」
「だから誘っても来なかったんですね」
「ちぇ。お前もちゃんと半分出せよな、テーブル代」
「もちろんですよ。オレのために先輩はやってくれたんですから。あ~あ、立ち回り、見たかったな~」
「何言ってんだよ。そんなことより、自分の携帯電話を見てろよ。今、どこにあるんだ?」
「え? ええ? あれ、さっきここに置いたつもりなのに。どこにやっちゃったんだろ。あれー?」
「ほれ見ろ。そんなことじゃダメだろ」
自分のジャケットのポケットから中川の携帯を取り出して、伊藤はニヤリと笑った。
- 携帯電話紛失!拾った相手が悪かった(上)
- 携帯電話紛失!拾った相手が悪かった(中)
- 携帯電話紛失!拾った相手が悪かった(下)
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