披露宴会場に集まる“人”と“ご祝儀”

ご祝儀を盗難されないためには?

ご祝儀を盗難されないためには?


結婚式のシーズンには、大安吉日や休日の披露宴会場は多くの人でごった返します。礼服やきれいに着飾った人々の中には、まさかドロボウがいるなどとは思わないもの。ところが、いかにもそれらしく振る舞う人の中に「ご祝儀ドロ」がいるのです。

もともと新郎新婦の親族や関係者の初顔合わせともいえる場所ですから、知らない顔があっても当たり前。逆に、その場にいれば関係者と思ってしまうのが人の常です。

受付でご祝儀を渡して記帳をすれば、出席者としてはあとは飲んで食べるだけ。ところが、受付の係はご祝儀をまとめて管理して、しっかりと採算合わせをしなくてはなりません。数十から多いところでは数百のご祝儀袋が集まるのですから、なかなかかさばるものです。

段取りに慣れた人なら、しっかりと事前に準備と打ち合わせをして、ご祝儀の管理はぬかりないでしょうが、両家とも初めての婚礼であったり、準備期間が短くあわただしいものであったりすると、何が何やらわからないうちに進んでしまいます。気がつくと、
「あれ? ご祝儀は誰が管理しているの?」
となってしまうのです。

 

ご祝儀盗難事件ケース1

結婚披露宴の受付を頼まれたK子さん(28歳)は、新郎側の受付の男性と一生懸命来客の受付をしていた。そろそろ客も九分通り席に着いた頃だ。会場の用意した大型の文箱にはたくさんのご祝儀が山積みになっている。しゃれた水引のものや凝った作りのものなどいろいろな種類があるものだ。
(全部でいくらになるのだろう)
とぼんやりと考えながら、フレンチのフルコースを思って空腹を覚えていた。

そこへ、黒の礼服に白いネクタイの中肉中背の男が現れた。新郎側の受付の○山さんに
「あ、お疲れさまです。あのう、新郎さんの控え室の方で呼ばれていますけど」
と、腰を折りながら小さな声でささやくようにした。
「あ、そうですか」
と○山さんは答えて、K子さんに
「ちょっと失礼します」
と声をかけて受付を離れた。男は当たり前のように、○山さんの代わりに受付に入った。

「あれ? 髪型が乱れていますよ。そんなに気にならないけど、ちょっと後ろのところ」
と男に声をかけられて、K子さんはうろたえた。美容院に早くから行ってセットしてきたのに乱れているなんて…。

「こちらは大丈夫ですから見てきたらどうです?」
と、男に言われたので、
「そうですか? じゃ、ちょっとすみません」
と、バッグを取り席を立った。

「すぐ戻りますので」
「どうぞ」
男は神妙に頭を下げた。

化粧室に行って鏡を見たがたいして乱れてもいない。しかし、ついでなので用を足して、コンパクトで化粧を直して受付に戻った。すると客が2組ほど待っていた。さきほどの男の姿は見えない。
(いけない)
と、足早に受付に入り、
「お待たせしました」
とにこやかに応対した。そこに〇山さんが戻ってきた。

「ヘンだなあ。何も用事はないと言われましたよ。さっきの人は他の家の人と間違えたのかなあ」
とK子さんに話しかけた。
「ああ、今日は大安だから多いですものね」
と話を合わせながら、受け付けたご祝儀袋を文箱に入れた。

「あっ!」
と、思わず息をのんで身体が硬直した。先ほどまで山のようになっていたご祝儀袋がない。漆塗りの文箱はスッカラカンだ。

「あのっ! ここにあったご祝儀は?」
と、○山さんを見ながら指で示したが、
「え? 僕は、今戻ってきたのですが」
たしかにそうだ。
「でも、さっきまであったのに」
あわてて受付台の下までのぞき込んだり、周囲を見回したが、見あたらない。

「どうしました?」
と○山さんが目を見開いて声をかけた。
「ご祝儀がなくなっている…」
両手で頬を押さえながら、K子さんはつぶやくように言った。

「さっきの男の人…」
すがるように○山さんを見た。
「どうしたんです? 説明してください」
と、目に緊張がよぎっている。

「盗まれたみたいです」
顔を寄せて手のひらで口を覆うようにしながらささやいた。

「ええっ?」
と○山さんも絶句した。
「どうしよう…」
「どうしようって…」

2人で顔を見合わせた。○山さんが
「警察だ。それより先に会場の責任者に言わないと」
と、会館のマネージャーの所に走って行った。

「当方では責任を負いかねます」
と、マネージャーは言った。
「しかし」
「でも」
と2人は目を見合わせたが、そこに

「そろそろ始まります」
と会場の係が告げに来た。新郎新婦とも満面の笑みで会場に入る様子を見ながら、2人は立ちつくしていた。

「おめでたい結婚の日にドロボウに遭うなんて!」
と、新郎の母親の刺すような視線ととげとげしい声にも、返す言葉はなかった。晴れの日にご祝儀をほとんど盗まれてしまい、受付の2人はなすすべもなく控え室でうなだれていた。

私服の刑事がやってきて、事情を聞かれた。
「ご祝儀ドロですね。よくあるんですよ」
とのことだった。男の風体を訊ねられたが、顔もはっきり思い出せない2人だった。
 

ご祝儀盗難事件ケース2

新郎新婦の友人男女5人で受付をしていたところに、黒服のマネージャーのような男が低姿勢でやってきた。

「ご苦労様です。ここらでいったん、ご祝儀を金庫の方にお預かりいたします」
と言い、大きな紙袋を持ってきたので、2つの文箱に積まれたご祝儀袋を手分けしてその袋に入れた。
「よろしくお願いします」
と、手渡した。

しばらくしてR子が
「ねえ、今の人って、ここの会場の人だよね」
とつぶやいた。
「え、そうでしょ?」
「だろう?」

と皆で目を見合わせた。

N雄が
「まさか…」
といって、通りかかった会場の係の人に
「すみません。ちょっと」
と話しかけた。係は緊張した顔で言った。

「こちらではご祝儀をお預かりするようなことはいたしておりません」
5人は、声を出すこともできなかった。

どちらのケースも、結婚披露宴会場受付で一瞬の隙に起こった盗難事件です。会場にとってはイメージダウンになるし、新郎新婦にとっても縁起でもないことなので、表沙汰になることは少ないようです。しかし、全国にたくさんある会場で、大安吉日ともなればどこででも発生しうる事件なのです。
 

被害を防ぐために

このような被害を防ぐには、
事前の打ち合わせが必要不可欠です。
受付の係を決めたら、全員で受付が始まる前に顔合わせをしましょう。貸金庫のある会場もありますが、原則として会場では通常、金銭の預かりなどはしません。
貸金庫を利用する際は、二人以上の複数で、タイミングをはかって確実にしましょう。

責任者を決めて保管を厳重にしましょう。鍵付のボストンバッグなどを用意して、
決して手元から離さないように細心の注意をします。
席を離れる時も必ず受付のメンバーで確認しあいましょう。

バッグに盗難防止の器具をつけておくのもよいでしょう。旅行用品店や防犯グッズ店で購入できます。
防犯ブザーを取り付けて、一方のひもを身につけるなどして奪われそうになると音が出るようにしておきましょう。
センサータイプのもので、一定の距離以上離れると音が鳴るアラームなどもおすすめです。

容疑者は礼服を着ていたり、いかにも会場のスタッフのような服装をしていたりして、紛れ込んでいることが多いようです。目立たず、中肉中背、顔や様子にも特徴があまりない人、記憶に残らないタイプが容疑者の特徴かもしれません。


ご祝儀をすっかりドロボウに持っていかれて、披露宴の費用を借金することになり、返済に苦しんだり、夫婦間がぎくしゃくして結局、離婚に至った夫婦もいるといいます。晴れの日を盗難騒ぎで台無しにしないためには、
事前の準備が大切なのです。

「ご祝儀ドロに気をつけて!」

※混雑した会場では、違う家の披露宴に出たまま最後までわからない場合もまれにあるようです。新郎新婦の顔もわからず出席するような場合は要注意です。同じ名前や似た名前の披露宴もありますから、ご祝儀の行き違いがあってはいけません。必ず招待状を持参して、しっかり確認するようにしましょう。

※なお「葬儀」の際にも、「香典ドロボウ」が出没することがあります。
「お金の集まる所にはドロボウが来る」と考えて、同様に注意するようにしましょう。
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