低温管理された石灰岩建築セラーでの追加長期熟成11~12年もの
省エネ、環境に配慮したライムストーンセラー
2024年3月26日、「Maker’s Mark Cellar Aged」(以下・MMセラーエイジドと表記)が発売された。遅い桜の開花となり、ちょうど満開を迎える。タイミングよく、春爛漫のなかでの逸品の味わいとなった。
では「MMセラーエイジド」(700ml・57%・¥16,000 税別希望小売価格)についてご説明しよう。「メーカーズマーク」の歩みについての詳細は『メーカーズマーク/プレミアムバーボンの証』を参照いただきたい。
創業者であるビル・サミュエルズ・シニアがレアな品種ながら極めて上質な小麦を原料に使用したように、3代にわたり進化をつづけている。ただし創業者が築き上げた芯の部分はブレることはない。
3代にわたる製品開発
Bill Samuels Sr./1959年「メーカーズマーク」開発、発売。・原料のひとつであるライ麦を小麦に変えて独自の香味を生みだす。
・最初の輸出先は日本であった。
・妻、マージーのブランディングも名高い(『マージーの愛/もうひとつのメーカーズ物語』)記事参照。
Bill Samuels Jr./2010年「メーカーズマーク46」開発、発売。
・最低6度の夏を越した「メーカーズマーク」の原酒熟成樽のなかに、インナースティーブと呼ばれるフレンチオークの側板を10枚沈め、冬の3カ月間、後熟させる特殊製法(『メーカーズマーク46のプレミアム感を満喫しよう』)記事参照
Rob Samuels/2024年「メーカーズマーク セラーエイジド2023」開発、発売
・「メーカーズマーク」としては初の超長期熟成ブランド。
・プライベートセレクション(樽買いプログラム)および「MM46」後熟のために2016年に建設したライムストーンセラーでの熟成。
・通常の6~8年熟成した原酒樽をそのままライムストーンセラーに移し、スタンダードブランドの熟成年数に近い追加熟成をおこなった合計11~12 年熟成させたものを厳選し、最良のブレンドをおこなう。
・今回の2023年バージョンのブレンド比率は、12年熟成87%、11年熟成13%。
ライムストーンセラーとは
緑が美しく風光明媚なメーカーズマーク蒸溜所の敷地内に1棟、ライムストーンセラーがある。ライムストーン(limestone)とは石灰岩。まさにブルーグラス・ステートと呼ばれるケンタッキー州を象徴する地質である。ケンタッキーはブルーグラス、緑豊かな牧草地が広がっている。地盤は石灰岩。その地下を流れる水は石灰岩よって濾過され、良質の清水となって湧きでる。これはバーボンウイスキーにとって重要なプロセスウォーター(仕込み水)でもある。さらにはブルーグラスにはカルシウムやその他ミネラルがたくさん含まれる。その牧草を食べて育つ馬は立派でしなやかな肢体に成長すると言われている(『第1回ブルーグラス・ステート/バーボンウイスキー・エッセイ・アメリカの歌が聞こえる』)記事参照。
だからサラブレッドの産地であり、名高いケンタッキーダービーが毎年5月に開催されている。
その石灰岩を使用して建設された貯蔵庫がライムストーンセラーである。この建物はアメリカの蒸溜業界でもまだ稀な、LEED(建築物や都市の環境レベルを評価)の認証を受けている。省エネや環境に配慮した建物ということになる。
・夏は猛暑で、冬は厳寒という寒暖差の激しいケンタッキーの気候は、長期熟成に適しているとはいえない。
・庫内温度を年間10度前後に低温管理したライムストーンセラーで、熟成スピードをコントロールし、ゆっくりとじっくりとした熟成環境が生まれる。
・これにより樽熟成によるタンニン(苦味)の析出を抑えることができ、まろやかさ華やかさが保たれる。
では次ページで味わいについて述べてみる。(次ページへ)
メーカーズマーク セラーエイジド2023