水割り文化を創出し、時代を築いたオールド
サントリーウイスキーオールド
日本初の国産本格ウイスキー「白札」(現ホワイト『サントリーホワイトを飲もう/2019年発売90周年』)は1929年に誕生した。翌’30年に「赤札」(現レッド『サントリーレッド、元祖家飲みウイスキーのススメ』)。そして1937年に「角瓶」が誕生している。
「オールド」はその3年後、1940年に発売されるはずだったが、戦争の影響により世に出たのは1950年、10年後のことだった。終戦から5年が経ち、復興が実感できるようになった頃である。
とはいえ「角瓶」でさえ高価な時代であった。その上の「オールド」は手の届かないウイスキーであり、長く憧れの酒、出世してから飲む酒であった。このあたりの話は『銀座「絵里香」中村健二のジャパニーズ』の記事(2007年)をお読みいただきたい。
この「オールド」が爆発的な人気を誇ったのが1970年代から1980年代半ばにかけてのことである。日本は確実に豊かになっていた。高級志向が高まっていた。そして「オールド」は水で割っても崩れない高い品質から、水割というスタイルを定着させた。
それまではウイスキーと無縁だった寿司、天ぷらをはじめ割烹などでも「オールド」の水割が飲まれるようになる。食と見事に結びついたのだった。1980年には1,240万ケースという空前の販売数量を記録する。和風店はもとよりスナックをはじめ、ボトルキープ全盛の時代でもあったことも要因のひとつでもあった。
洗練されたシェリー樽熟成モルトの甘美さ
オールドお湯割
味わいを語る前に、わたしは「オールド」のスタイリングが好きだ。黒い丸っこいスタイルに、キャップ部分の朱色の封紙が効いている。黒漆と赤漆の和の世界観。ところが、ラベルのタイポグラフィーが見事で、日本を代表するウイスキーとしての品格がある。ラベルはいつ見ても惚れ惚れする。酒棚に置いておくと異彩を放ちながらも、安定感がある。
そしてあらためて、「角瓶」や「ローヤル」(『サントリーローヤル/甘く華やかなコク、不朽の名作』)など、ロングセラーをつづけるウイスキーのボトルデザインの素晴らしさを実感する。
さて飲み方。オン・ザ・ロックをおすすめするが、これからの季節はお湯割、ホットウイスキーで楽しむのがいちばんだ。
お湯割にしてもキーモルトである洗練されたシェリー樽熟成モルト由来の甘美さを堪能できる。そして微かな苦味がある。甘美さだけだと飲んでいてダレてくるのだが、ポリフェノールを多く溶出するシェリー樽特有のタンニン的な感覚、ほのかな苦味があるから飲み飽きない。
これを是非感じていただきたい。試したことがない方は、お湯割の美味しさを発見するはずだ。比率としては、濃いめを好む方は「オールド」1に対して、熱湯1.5くらいで味わってみていただきたい。ちょっと薄めがいい、という方は1:2をおすすめする。
寒さの厳しい冬の夜にふさわしい味わいである。(お湯割撮影/児玉晴希)
銀座「絵里香」中村健二のジャパニーズ
中村健二氏アンジェロ・ゾラ賞受賞/IBA世界大会
角瓶とともにおすすめの美味しいウイスキー
サントリーローヤル/甘く華やかなコク、不朽の名作
「ローヤル<卯歳>ボトル」陶製干支ボトル発売
サントリーリザーブ・ハイボールに香る白州モルト
サントリーレッド、元祖家飲みウイスキーのススメ
サントリーホワイトを飲もう/2019年発売90周年