夕食は一緒でも洗濯は別々のことも
同居生活を一緒に、という志向の強まりは夕食の場所が一緒になっていくことに表れてきています。夕食・朝食の場所が親世帯と一緒か別々かの調査結果(図4)では、親世帯が両親揃っている息子夫婦同居の場合では夕食・朝食共に別々の場所で、という回答が7割を超えていますが、娘夫婦同居の場合は専業主婦の場合でも約5割、共働きの場合では4割に減り、代わって夕食を一緒にするケースが増えてきます。娘夫婦同居では朝食別・夕食一緒といったパターンが珍しくなく、約2割を占めています。洗濯についての別々か一緒かを調査すると、よく似た傾向が表れますが(図5)、注目されるのは洗濯の方が「基本的に別々」の比率が高いことで、夕食が一緒でも洗濯は別々にしている人がいる、ということです。このように、何か一緒にしていても全てが一緒、というわけではなく、一緒と別々の区分けがあるということは、融合志向のある二世帯住宅を造る際の注視すべきポイントの一つでしょう。
融合するほど大切な個人の居場所
こうした融合志向の二世帯同居では、自分ひとりで気ままに過ごせる場所としての「居場所」が重要な意味を持ちます。世帯間、家族間の協力が進むほど、自分ひとりの空間が必要になるようです。調査結果は、家族それぞれに「専用の居場所」があるかどうかを尋ねたもので(図6)、ここで居場所とは「自分ひとりでTVを見たり好きなことをして気ままに過ごせる場所」としています。「居場所があり活用している」「ないが必要」の合計を居場所が必要な人としますと、分離同居で6-7割、融合同居で約8割は「居場所が必要」としていることになります。その中で子世帯妻は「ないが必要」が比較的多く、居場所が必要と感じながら現状は持てていない現実が浮き彫りとなっています。
このような居場所でしていることは親世帯はTV、子世帯ではパソコンや仕事が多く、趣味の場所としての回答も共通して多く見られます。家の設計レベルの話で考えると、TVが置けて、机があり、適切な収納があることが居場所の条件といえるでしょう(図7)。二世帯共同のリビングでは、自分の好きなようにTVを見たり、趣味のものを置いておく、ということができにくいので、融合同居の方が居場所の重要性が増すのだと考えられます。
これまでの二世帯住宅はべったり同居に対してキッチンを2つ設けることによる「家事分離」が最も大きなメリットとして認識されてきました。住まいは完全に分離し、その中で両世帯が協力して暮らす、というのが二世帯同居の望まれるパターンであり、完全分離の独立二世帯で、内部で行き来できるものが二世帯住宅としての標準形であったと思います。
しかし「孫共育」に加え「家事融合」といったように生活の融合が進めば、住まいにおいても共同部分が多くなり、コンパクトであっても二世帯住宅が可能になります。それはかつての「べったり同居」住宅に戻ることではありません。共用部分が増えるほど、ひとりひとりの居場所が重要になり、夕食が一緒でも洗濯機は別など、一緒と別々のバランスを考えた二世帯住宅造りのノウハウが要求される時代になりました。「分離同居」に対応した完全分離二世帯とは違ったこのような「融合同居」に向けた二世帯住宅は、これからの二世帯の新しいジャンルになるのではないかと思います。