二世帯住宅の増減は把握できない
東日本大震災があり、増加した二世帯住宅、というテーマ設定の取材で私のところに来られる方が多くなり、二世帯住宅が注目されているのは有難いことです。しかし、そもそも、二世帯住宅の着工統計のようなものはありませんので、リアルタイムで正確な増減をつかむことはできません。しかし、二世帯住宅が話題に上る機会は明らかに増えましたし、各社から商品としても発売されましたので、確かに増えていると推測はできます。
国勢調査等では生計を一体としている「世帯」単位で集計しますので、複数の世帯が同じ家に居る二世帯同居のような形態は、親世帯子世帯別々に扱われ、その相互関係を扱う統計は少ないのです。
国の統計で最も二世帯同居数の調査に近いのが、「誕生して34年、二世帯住宅の歴史」でも紹介した、平成18年度の内閣府の「国民生活選好度調査」です。80歳以下の既婚者に限定した回答で、親と生計が別の「独立同居」は敷地内の別棟のケースを含めても6.2%であり、まだまだ一体同居の方が数が多いことがわかります。この調査は毎回テーマが変わり、本質問はその後されていないため、変化がわからないのが残念なところです。
親世帯との住まい方(2007)
H18年度国民生活選好度調査 内閣府(2007.1調査)全国、既婚者のみ。最も近い親世帯との関係 「親世帯がいない」24.0%を除いてグラフ作成
一体同居:生活を共にしている
独立同居:生活は別(二世帯住宅や敷地内別居など)
原データで、親が複数居る場合は近い方の親としている
他に、親子の居住距離を調べたデータとして、「住生活総合調査」(国土交通省)があり、5年おきの調査で毎回継続性のある質問になっています。直近の2008年の調査から、「親との現在の住まい方」という質問が加わり、これが同居比率変化の公的なデータになると思います。
単身者が全体の18%含まれており、60歳以上の回答者が全体の43%と多いためか、「親はいない」ものが国民生活選好度調査の24%と比べ、約4割と多くなっていますが、親が居る約6割の世帯(世帯主であれば単身者も含まれます)では、その22.8%(同一敷地内の隣居まで含めれば27.3%)が同居となります。
親との現在の住まい方(2008)
全国、「住生活総合調査」国土交通省;2008 から「親がいない」39.6%と「不明」4.4%を除き、下記の分類に区分して比率を算出
同居:生計一体の同居、二世帯同居の両方を含む
隣居:同一敷地内、または同一住棟の別の住宅に住んでいる
近居:徒歩5分程度+車で15分未満の場所に住んでいる の計
遠居:近居より遠いもの全ての計
原データで、親が複数居る場合は近い方の親としている
この中には同居スタイルとして生計が一体の同居と二世帯同居の両方が含まれ、住宅としてもキッチン1つのものとキッチン2つの二世帯住宅の両方が含まれます。つまり、これは「親子同居かどうか」の居住距離の統計で、「生計が一体か別か」といった同居スタイルや「二世帯住宅かどうか」といった家のつくり方の調査ではないことに注意が必要です。
また、5年間隔なので、次回調査が2013年、集計結果発表は2014年と予測され、事実が把握されるのはかなり先になります。
このように、二世帯住宅の数は正確に把握されておらず、2つの調査を総合してみると、3割前後の親子同居者が居ることが推測できますが、次第に生活が一体の同居が減り、生活の分かれた二世帯住宅や近居が増えている過程の中で、親子同居の増減や何が大震災の影響なのかは現状わからない、というのが正直なところです。
二世帯住宅を建てたい、と思っても、建替えるとなればそれ相応の準備が必要ですので、それほどすぐに結果が現れるものでもないと思われ、大震災前後で同居に関する意識がどう変わったのかを見ていくことの方が重要であると思っています。