訪問介護を受け入れやすい二世帯住宅とは?
今回の調査では、介護サービスの利用と二世帯住宅のつくりによって、どのような違いがあるか調べてみました。この場合「つくりの違い」とは、おもに「建物の分離度」を指しています。これを中心に見ていきましょう。まず、デイサービスセンターなどに出かけて介護サービスを受ける「通所介護」は、「建物の分離度」に関係なく、どの二世帯住宅でも利用されていました。ところが、ホームヘルパーが自宅に来て介護サービスを受ける「訪問介護」の場合は、「建物の分離度」によって、利用度に違いが見られます。
介護サービス別に細かく見ていくと、訪問介護を最も多く利用しているのは、玄関・浴室ともに世帯別となっていて、かつ内部で行き来ができる「独立型(内部行き来)」の二世帯住宅です。やはり、ホームヘルパーの応対などがしやすい割に、自分の生活ペースを崩さなくてもよいという側面があるからでしょう。全体に「建物の分離度」が低くなるにつれ、訪問介護を利用する割合が小さくなるのですが、特に、玄関や浴室は1つを二世帯で共用し、メインのキッチンは1つで、いずれかの世帯にサブキッチンがある「融合型」の二世帯住宅では8%と、他に比べて非常に低い数値となりました。
これは、「融合型」の二世帯住宅では、ニ世帯間で共用する空間が多くを占めるため、訪問したホームヘルパーと同居している子世帯家族が家の中で鉢合わせする可能性が高く、家に居づらくなるなどの理由から、同居家族が訪問介護を受け入れづらいためだと推察されます。
なお、前述したように、「独立型」には、内部で行き来できるタイプと、外部から行き来するタイプがありますが、食事のサポートなどの介護についても、建物のタイプによってしやすさが違います。外部からしか他世帯に行き来ができないタイプでは、雨のときに親世帯へ食事を運ぶとしても、傘をさして玄関ドアの鍵を締め、雨に濡れないようにしないといけません。内部で行き来できるタイプであれば、雨が降っていてもこういった手間を省くことができるわけです。
このように、二世帯住宅のつくりによっては、親の老後の世話や介護のしやすさに差が生じるので、二世帯住宅を建てる際には将来の在宅介護のしやすさを視野に入れてプランニングすることも重要なポイントとなります。
介護が必要になってからの同居では遅い?
今回の調査では、グラフや数値としてご紹介した内容以外にも、介護を経験した子世帯の方々からたくさんの意見をいただきました。主だったご意見をまとめてみると、
- 二世帯住宅は、親の老後に様子や気配が分かり、安心できる
- 外部の介護サービスを上手に活用することで、子世帯の介護負担を軽減させる
二世帯同居により、親世帯の様子や気配を感じ取り、見守ると同時に、自分たちの暮らしも上手にやりくりしている子世帯の姿が浮かび上がってきました。そして、こういった気配りや対応により、「親の老後の世話」との上手な付き合い方ができるようになるということです。
さらに注目すべきは、調査時に得られた「介護が必要になってから初めて同居するのはなかなか難しい。親が元気なうちから同居することで、互いのことがよく分かり、親の老後の世話とうまく向き合えた」という意見です。これらは、経験者が伝える貴重なアドバイスだといえるでしょう。
将来、年老いた親と離れて暮らすのは不安だが、介護が必要になった際に一手に引き受けるのもまた難しい…と考える子世帯にとってみると、「親が元気なうちからニ世帯同居をし、実際に介護が必要になった時には、外部の介護サービスを上手に活用する」というのが、親子ともに長く安心して暮らせるコツかもしれません。
同調査では、二世帯住宅の子育て協力の実態など、二世帯同居が孫に与える影響についても調べています。これについては、次回の記事でご紹介したいと思います。
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