スコットランドのリキュール

ラスティ・ネール

ラスティ・ネール

ウイスキー・ベースのカクテル、つづいてはラスティ・ネール。スコッチウイスキーとドランブイというリキュールだけの極めて潔いレシピのカクテルだ。

Rusty Nail
スコッチウイスキー 40ml
ドランブイ 20ml
ビルド/氷を入れたロックグラスに注ぎ、軽くステアする

ラスティ・ネールとは“錆びた釘”のことで、隠語で“古めかしい飲み物”という意味もあるようだ。1950年代にニューヨークの名高いレストラン『21クラブ』で誕生したとの説があるが、定かではない。
たしかになんだか懐かしいような古くさいような独特の甘くスパイシーな味わいがある。これはドランブイというスコットランド特産のウイスキー・ベースのリキュールが醸し出すものだ。
オリジナルのブレンデッドウイスキーにさまざまなハーブと蜂蜜やシロップを加えてつくられるリキュールで、その原型は1745~1746年のスコットランド対イングランド(政府軍)の戦いといってよい王位継承戦争(ジャコバイトの乱)に端を発したものだ。
簡単に説明すると、名誉革命で王位を失い国外追放されたジェームズII世の孫のチャールズ王子(容姿端麗だったことからボニー・プリンス・チャーリーの愛称)が、フランス亡命中の父の反対を無視してスコットランドへ渡る。チャーリーは自分を支持するスコットランドはハイランドのクラン(氏族)たちとともに蜂起したが、結局は政府軍に敗れ、長い逃亡の末、からくもフランスへ戻った。逃亡を助けたのがスカイ島のマッキンノン家で、そのときにチャーリーがよく口にしていたブランデーベースのリキュールがマッキンノン家に伝わる。1893年になってそのスカイ島のブロード・フォード・ホテルでベースをウイスキーに替えて誕生したのがドランブイである。
誕生時に皆がゲール語で口々に「An dram(飲む)buidheach(満足な)」(満足いく酒)と讃えたことから、それを合成しDRAMBUIEとなった。

稲富博士のスコッチノート

ドランブイ

ドランブイ

このドランブイについてはスコッチのバランタインのホームページ内で連載されている『稲富博士のスコッチノート』(第61章)に詳しい。というか、ドランブイについてここまで書き上げたものは他にないのではなかろうか。
稲富孝一氏は現在日本においてのウイスキー研究の最高権威者であり、わたしが最も信頼している方だ。サントリーの元チーフブレンダーであり、シングルモルト山崎の開発に携わり、また日本のブレンデッドの名品、響を誕生させた方でもある。現在はグラスゴー大学で研究をつづけていらっしゃる。稲富氏ならではのしっかりとした取材をもとにして書かれている。ぜひご一読いただきたい。

さて、ドランブイの風味を活かしたいのならばできるだけ柔らかいブレンデッド・スコッチを使うか、ウイスキーとドランブイを同量にするか、これはお好みだ。ただ最近はボウモアとかハイランドパークといったシングルモルトウイスキーでつくったりする場合もあり、ウイスキーの個性をしっかりと感じさせるスタイルも出はじめ、ラスティ・ネールの味わいの世界もふくらんできている。
では次回はドランブイを使ったセント・セントアンドリュース、スコッチ・キルトについて語る。

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