これが「大人のかき氷」だ
これが「大人のかき氷」
カウンター上に登場したのはなんとプレーンのかき氷。グラスもかき氷用のもので、「あなたいったい、わたしに何すんの」と聞きたくなったのだが、とにかく黙って手さばきを見守った。
グレナデンシロップをまず氷にぶっかけ、次にリンゴのブランデー、カルバドスブラーをかける。これにライムジュースが加わればカクテルのジャック・ローズじゃんか、と思っていたところに小豆が乗せられたのだ。「大人のかき氷」(¥1,500)ジャック・ローズ版である。
笑えたね。遊び心があっていい。不思議とこれがいけるのだ。スプーンがザクザクとすすむ。本来はカルバドスとグレナデンの甘酸っぱいコクが際立つのだが、かき氷だからサラッとしていて、小豆の金時風味が酸味を消し去り、またスプーンを誘う。抹茶リキュールとブランデーの「大人の宇治金時」もあるらしい。
これって口直しっていうか、日本酒やワインといった醸造酒を飲みながら食事した後、さあバーで愉しもうとなったときに飲み直しの一杯になる。もしくはカクテルを数杯飲んだ後にもいい。わたしは最初に挑戦したけどね。最初の一杯もなかなかいい。
最低でも8月中は「大人のかき氷」(いずれも¥1,500)をつづけるそうだ。
やがて素敵なゴッド・マザーとなる
宮崎優子氏
わたしのイメージからすると「大森のお嬢」だな。生まれ育った東京・大森を愛し、その大森で自分の好きな道をとことん歩んできた幸せなお嬢だ。でも、美空ひばりのように、誰もがお嬢になれる訳ではない。
人知れぬ苦労もあったろうし、そんな中でしっかりと研鑽を積み、ひとたびカウンターという舞台に立てばいつも一定の心持ちで柔らかく客を包み込む。その姿は見事だ。そして何よりも客の支えであろう。彼女の接客を、カクテルを、愛し見守るいい客がいるからこそお嬢がお嬢でいられるのだ。
宮崎お嬢は春のイベント、『大森さくらフェスティバル』の実行委員長を務めているほどだから店も地域密着型で、大森で暮している客が多い。客層は幅広く、常連は皆穏やかにグラスを傾けている。また、ひとりでやってくる若い女性客が多いのに驚く。お嬢が彼女らの姉であり、母である証しでもある。安心して寛げるのだ。
真の「母」となるのはこれからだろう。今後5年、10年とバーテンダーとして熟成しながら、「母」としての本領発揮の時代を迎えるのではなかろうか。そしてやがてゴッド・マザーと呼ばれるようになるだろう。
でも、一生お嬢としてカウンターの中にいてもらいたい。(次頁へつづく)