コーチングスキルとはリーダーによるコミュニケーションアドバイス

コーチングスキル力を身につけて部下を育てる

100以上あるコーチングスキル。活用するときは目的を意識することが大切

 
 
コーチングスキルは新たに発明されたものではなく、うまくメンバーの力を引き出し、後進を育てている人たちのコミュニケーションを観察し、その特徴を体系化したものです。

コーチングスキルは100以上あると言われていますが、そのすべてが次の3つの目的を意識して適用されます。
 
  1. 相手の自律性を促す
  2. 相手の力を発揮させる
  3. 相手の成長を促進する

普段、何気なく行っているコミュニケーションもこの3つの視点で見直すと、メンバーやチームをうまく活かせるマネジメントスキルに進化させることができます。

今回は、ビジネスシーンを牽引するマネジャーや、リーダー層に役立つと思われる代表的なスキルを目的別に紹介します。
     

1.安心感を築くスキル「ペーシング」

リーダーはメンバーに行動を促し続ける必要があります。そのとき、メンバーが抵抗感を持つかそれともスムーズに行動に移るかは、リーダーとの間にある安心感が大きく影響します。人は生き残るために常に目の前の人を敵か味方かを判断し、敵に対しては防衛体制を築き、味方とはいち早く協力関係を築こうとします。

このとき、防衛を解き、相手との間に安心感を醸成するのに有効なのが「ペーシング」です。ペーシングとは、簡単にいうと相手に合わせることです。呼吸のリズムやスピード、使う言葉、話の内容、声のトーン、姿勢や表情などを相手に合わすことを指します。人は相手と違うということに危機感を抱き、同じであるということに安心感を覚えるのです。

経験も多くスピードを重視する上司は、部下の話の途中で「でもね」「だけど」と口を挟みがち。しかし、その瞬間、相手のさらなる反論の誘発や沈黙を招いています。

たとえば、部下が「最近疲れている」と言ったとき、あなたはどんな風に声をかけますか? 「そんなこと言わずに、頑張れよ」と励ましたり、「じゃあ、休暇を利用してリフレッシュしろよ」と解決策をすぐに提示するのは、実はあまり得策ではありません。このようなとき、まずは「そうか、疲れているんだね」と声をかけましょう。励ましたり、解決策を提示するのはそれからでも遅くはありません。むしろ、自分の想いや状態を受け止めてもらったという相手の安心感を醸成したあとのほうが、励ましやアドバイスが部下に届きやすくなるのです。

ペーシングの具体例としては
  • 相手が使った言葉を自分も使う
  • 相手の言ったことを繰り返す
  • うなずきや相づちを適度に挟む
  • 相手と視線を合わせて話す
  • 相手の話を聞くときには相手に注意を完全に向ける(パソコンをたたきながら、書類を見ながら聞くのはNG)
などがあります
 

2.アイディアや行動を引き出すスキル「傾聴」

聞くことは相手の話を促す上でもっとも大事なスキル

聞くことは相手の話を促す上でもっとも大事なスキル

 
 
あなたは普段、部下の話をどのように聞いているでしょうか? 人は1分間におよそ100~175語を話すことができます。一方、1分間に聞くことができる単語数は600~800語と言われています。つまり、聞くために頭をフル回転させる必要はないので、次第に集中力を失って他のことに気をとられてしまいます。

無意識に聞いているときにおかしがちな態度で、次のことが多く見られます。
  • 相手が話しているときに、次に自分が話すことについて考えている
  • 相手の話に対する回答や質問、提案やアドバイスを考えている
  • 結論を急ぎ、話の展開やおちを先読みする
  • 沈黙を待てずに、相手をせかす
コーチ型アプローチでは、次のポイントを念頭に意識的に聞くことで相手のパフォーマンスを上げる聞き方を目指します。
 

聞かれることによる安心感を醸成する

人は話を聞いてもらえないと不安になり、それが続くと孤立し行動が止まってしまいます。逆に聞いてもらっているという安心感は、自由な思考や自発的な行動につながります。話の途中で口を挾まず結論を先取りせずに最後まで聞くことは、効果的な動機づけとなり相手の自発性や行動を引き出します。
 

相手のアイディアや経験、情報を引き出す

誰かに話をしているうちに、話し始めには思いもつかなかった解決策やアイディアを思いついたという経験はないでしょうか。人は話をするとき、実は自分でも自分の話を聞いています。この作業により、自分の考えていることやアイディアに気づくことができるのです。そのような気づきやひらめきを引き出すような聞き方をリーダーができれば、部下の能力はいかんなく発揮されます。
 

言葉以外のメッセージを受け取る

部下が言葉では「がんばります」「うまくいっています」と言っていても、声のトーンが低かったり、表情が暗いときなどは要注意です。そこで「不安なことはない?」「何か力になれることはある?」と、話をさらに引き出すことで部下の行動が起こりやすくなります。
 

3.視点を変えるスキル「質問」

私たちは普段、自分が知りたいことや確認したいことを聞くために質問を使います。コーチ型アプローチでは、相手に考えさせ気づきや発見を促し、結果として行動を引き出すことを目的に質問をします。そのため、目的を持って、質問を使い分けます。

コーチ型アプローチにおける質問の目的と質問には、次のような特徴があります。
  • 視点を変える 「あなたが相手だったらどう感じますか?」
  • 選択肢を広げる 「他にはどんな対策がとれるでしょうか?」
  • 気づきを促す 「今回の失敗をどのように次に活かしますか?」
質問には大きく分けて、クローズドクエスチョンとオープンクエスチョンの2つの種類があります。

クローズドクエスチョンは、答えをYES/NOで要求する質問です。たとえば、「対策はもう打ちましたか?」のように、答えを早く出せたり事実を明確にできるなどのメリットがある一方、思考に広がりはなく、相手が責められていると感じる場合もあります。

オープンクエスチョンは自由に答えられる質問です。例えば、「どんな風に対策を打ちますか?」というように、相手に考えさせたり気づきを促進するなどのメリットがある一方、時間がかかる場合があります。

どちらが良い悪いということではなく、目的に応じて使い分けます。ところで、あなたは普段どちらの質問を多く使っているでしょうか。確認や情報収集のために質問をしていると、クローズドクエスチョンが多くなりがちです。その場合、オープンクエスチョンを意識的に増やすことで、相手から情報やアイディア、選択肢を引き出すことができます。
 

4.前進させるスキル「リクエスト」「提案」

リクエストと提案を活用し、相手を前進させることも重要

リクエストと提案を活用し、相手を前進させることも重要

コーチ型アプローチに対して、受け止める、相手に合わせる、待つといったどちらかというと受け身な印象を持つ方がいますが、それは違います。相手の自発的な行動を促すのがコーチ型リーダーの役割とはいえ、すべてを相手に任せるわけではありません。リーダー側にアイディアがあるときや必要と感じるときには、提案やリクエストを通して相手に働きかけます。

しかし、コーチ型アプローチにおける提案やリクエストは、指示命令型アプローチにおけるものとは違い、やはり相手の自律性を尊重することに大きな特徴があります。

コーチ型提案の特徴には、次のような特徴があります。
  • 上司側の都合ではなく、相手の成長や成功のために行う(目的は相手に新しい視点を提供し、相手の行動をサポートすること)
  • 押しつけない(提案する前に提案が必要か、提案してもいいかの許可を取る)
  • 提案内容を採用するかどうかの選択は相手に委ねる(自分で選ぶことで責任とやる気が生まれます)
コーチ型リクエストの特徴には、次のような特徴があります。
  • 上司側の都合やニーズの実現のためではなく、相手の成長のためにする(人は自分の思考や行動に枠を設けてしまいがち。リクエストはその枠の外に相手を連れ出し、新しい可能性を引き出します)
  • リクエスト内容が拒絶されたり、断られることもあるという前提を持つ(押しつけてもよい結果は生まれません。この前提がないとリクエストではなく、指示になります)
 

5.成長を促すスキル「アクノレッジメント(承認)」

アクノレッジメント(承認)とは、相手に現れている変化や違い、成長や成果にいち早く気づき、それを言語化して相手にはっきり伝えることです。アクノレッジメントを通して得る自己成長の認知は、次の行動やチャレンジに向けてのモチベーションとなります。

アクノレッジメントは、褒めることや賞賛とはイコールではありません。褒め言葉や賞賛も相手のモチベーションを高める効果がありますが、相手に対する評価が加わるため、人によっては受け取りにくかったり、それがないとやる気がでないというような「アメとムチ」構造の「アメ」になってしまいます。一方、アクノレッジメントは変化や成果を事実として伝えます。

褒め言葉や賞賛の例には
「話し方がわかりやすくなって、前よりいいよ」
「君は勉強家だね」
「君ってすごいね」
などがあります。

アクノレッジメントの例には
「結論から話すようになったね」
「マーケティングの勉強も始めたんだね」
「この1年、目標を達成し続けているね」
などがあります。

最も効果的なアクノレッジメントは、相手が自分自身ではまだ気づいていないようなことを先に察知して伝えることです。この場合、自分のことをしっかりと見てくれていることが伝わり、上司への信頼も生まれます。

実はアクノレッジメントの語源には、そこにいることに気づいていることを示すという存在承認の意味もあり、「自分の存在は認められている」という感覚は職場における安心感や信頼関係にもつながり、結果として行動やチャレンジへの原動力となります。

職場におけるアクノレッジメント(存在承認型)の例としては
 
  • 挨拶する
  • 名前を呼ぶ
  • 仕事を任せる
  • 労う、感謝する
  • 約束の時間を守る
  • ちょっとした変化に気づく(髪を切ったね、新しいスーツだねなど)
  • メールや質問にすぐ答える
  • 相手が前に言ったことを覚えている
  • 意見を求める、相談する

などがあります。
以上、代表的なスキルを紹介しましたが、すべてのスキルを一気に取り入れなくてはいけないということではありません。大切なのは、まずは目の前の相手に興味を持ち、「この人の成長や成功のために、今最も必要な関わり方はどのようなものだろう」という視点を持つことです。

具体的な関わり方が思いつかない場合は、これまであなたを成長させてくれたり、前進させてくれた先生や上司の関わり方を思い出し、参考にしてみてください。


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